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2話(夫と義姉の視線)
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お義姉様、大丈夫かしら。ああ見えて思い詰めるところがあるから心配なのですが、アラン様に相談したくても、いつお会いできるか分からないし、それに、余計なお世話だと言われてしまうかもしれないわ。
ええ、そうよね。男性の不貞については、私のバイブルでもあるクリスティーヌ・ド・ピザン先生の『婦人の街』にも書かれていますもの。
騒ぎ立てずに嵐が過ぎ去るのを待つ方が賢明だと。
そんなことを思いながら気づけば教会の前にたどり着いていた。
「おはようございます」
「おう、アナスタシア嬢。こんな頻繁に教会へ来ていてご主人は大丈夫なのか?」
同じお仕事をしている修道士のジョンソン様が心配してくれる。彼は伯爵家の次男の方だ。
「はい。問題ありません。今日も王宮で、泊まりのお仕事と伺っていますので。では始めましょう」
そう言って私はいつもの写本や、挿絵の仕事に取り掛かる。
元々このお仕事は結婚する前から続けていることだった。
昔読んだクリスティーヌ・ド・ピザン先生の『婦人の街』に感銘を受けて、私も同じように教会でこのお仕事をさせてもらっている。
女性が職業を持つことに世間の目が厳しい時代だから、教会での仕事は変な噂を立てられる心配もなく安心して働けた。
それに私自身、この写本と挿絵を描くお仕事が楽しくて、いつも気づけばあっという間に時間が過ぎていた。
何より思った以上にお給金がいい。いえ、建前的には礼金です。
表向きは奉仕活動のように思われているが、実際には貴族たちが結構な値段で買い取ってくれる。それを教会を通して礼金という名目で頂くのです。
写本と言うと、ただ聖書の写しと思われがちですが、実際には驚くほど幅広いジャンルの本があります。それらは、貴族や裕福な商人たちにかなりの需要があるのです。
最近の私には挿絵作家としての依頼も多く、教会側からも割と重宝がられています。
「アナスタシア様。そろそろ辺りも暗くなり始めました。今日はこの辺になさったらいかがですか」
「あ、シスター、ありがとうございます。では今日はこれで失礼いたします。また明日も宜しくお願いいたします」
「こちらこそ。最近は急ぎの仕事も多いようで大変ですね。あまり無理はなさらないでください」
「ご心配ありがとうございます」
こうして今日も私はいつものようにお屋敷に帰るのでした。
お屋敷に着くと使用人のアンナが気まずそうな顔をして伝えにきた。
「旦那様のご予定が急に変更になり、先程こちらにお戻りになりました。ただ今、イライザ様とご一緒にお食事を取られているところです」
それを聞き、内心焦りながらも平静を装った。
「そうですか、では先にご挨拶だけでもしてきますね」
そう言って食堂に入った瞬間、旦那様とお義姉様が揃って私に視線を向けた。
「あら、遅かったのね。わたくしたちはそろそろお夕食が終わるところよ。あなたも着替えてさっさとお食べなさいな」
「申し訳ありませんでした。いつもより遅くなってしまいました。すぐに着替えて参ります」
すると旦那様は、いつもの冷たい視線を私に向けた。
「別に急ぐ必要はない。私はもう済んだから一人でゆっくり食べるといい」
そう言って、席を立たれた。
私は返す言葉もなく、ただ旦那様の後ろ姿を見送った。
「全く、あなたもついてないわね。弟が久しぶりに帰ったというのに屋敷にいないんですものね」
「いえ、そんなことはありません。かえって私がいない方が旦那様は楽しくお食事ができますから」
これは私の本心からの言葉だった。それでもお義姉様は呆れたお顔をなさっている。
「本当にあなたたち、こんなんで夫婦といえるのかしらね」
そう言ってお義姉様も席を立たれた。
後に残された私は、お腹も空いていたので着替えもせずにそのまま一人でお夕食をいただいた。
『あー美味しかったわ』と呟いてから私室に行った。
きっと旦那様もお疲れでしょうからこのまま声はかけない方が良いわよね。と、一人納得をしてその日はそれで休むことにした。
翌朝目覚めるとやはり、旦那様は朝早くに王宮に行かれたという。
『まあ、久しぶりにお顔を見られてよかったわ。何よりお元気そうで安心したわ。それにしても相変わらず凛々しいお顔だったわね』
そうひとり言を言いながら私も教会へ行く準備をした。
そういえばお義姉様も元気そうなのでリチャード様のことは大丈夫そうでよかったわ。
こうして私は心置きなく、いつものように教会へと向かった。
ええ、そうよね。男性の不貞については、私のバイブルでもあるクリスティーヌ・ド・ピザン先生の『婦人の街』にも書かれていますもの。
騒ぎ立てずに嵐が過ぎ去るのを待つ方が賢明だと。
そんなことを思いながら気づけば教会の前にたどり着いていた。
「おはようございます」
「おう、アナスタシア嬢。こんな頻繁に教会へ来ていてご主人は大丈夫なのか?」
同じお仕事をしている修道士のジョンソン様が心配してくれる。彼は伯爵家の次男の方だ。
「はい。問題ありません。今日も王宮で、泊まりのお仕事と伺っていますので。では始めましょう」
そう言って私はいつもの写本や、挿絵の仕事に取り掛かる。
元々このお仕事は結婚する前から続けていることだった。
昔読んだクリスティーヌ・ド・ピザン先生の『婦人の街』に感銘を受けて、私も同じように教会でこのお仕事をさせてもらっている。
女性が職業を持つことに世間の目が厳しい時代だから、教会での仕事は変な噂を立てられる心配もなく安心して働けた。
それに私自身、この写本と挿絵を描くお仕事が楽しくて、いつも気づけばあっという間に時間が過ぎていた。
何より思った以上にお給金がいい。いえ、建前的には礼金です。
表向きは奉仕活動のように思われているが、実際には貴族たちが結構な値段で買い取ってくれる。それを教会を通して礼金という名目で頂くのです。
写本と言うと、ただ聖書の写しと思われがちですが、実際には驚くほど幅広いジャンルの本があります。それらは、貴族や裕福な商人たちにかなりの需要があるのです。
最近の私には挿絵作家としての依頼も多く、教会側からも割と重宝がられています。
「アナスタシア様。そろそろ辺りも暗くなり始めました。今日はこの辺になさったらいかがですか」
「あ、シスター、ありがとうございます。では今日はこれで失礼いたします。また明日も宜しくお願いいたします」
「こちらこそ。最近は急ぎの仕事も多いようで大変ですね。あまり無理はなさらないでください」
「ご心配ありがとうございます」
こうして今日も私はいつものようにお屋敷に帰るのでした。
お屋敷に着くと使用人のアンナが気まずそうな顔をして伝えにきた。
「旦那様のご予定が急に変更になり、先程こちらにお戻りになりました。ただ今、イライザ様とご一緒にお食事を取られているところです」
それを聞き、内心焦りながらも平静を装った。
「そうですか、では先にご挨拶だけでもしてきますね」
そう言って食堂に入った瞬間、旦那様とお義姉様が揃って私に視線を向けた。
「あら、遅かったのね。わたくしたちはそろそろお夕食が終わるところよ。あなたも着替えてさっさとお食べなさいな」
「申し訳ありませんでした。いつもより遅くなってしまいました。すぐに着替えて参ります」
すると旦那様は、いつもの冷たい視線を私に向けた。
「別に急ぐ必要はない。私はもう済んだから一人でゆっくり食べるといい」
そう言って、席を立たれた。
私は返す言葉もなく、ただ旦那様の後ろ姿を見送った。
「全く、あなたもついてないわね。弟が久しぶりに帰ったというのに屋敷にいないんですものね」
「いえ、そんなことはありません。かえって私がいない方が旦那様は楽しくお食事ができますから」
これは私の本心からの言葉だった。それでもお義姉様は呆れたお顔をなさっている。
「本当にあなたたち、こんなんで夫婦といえるのかしらね」
そう言ってお義姉様も席を立たれた。
後に残された私は、お腹も空いていたので着替えもせずにそのまま一人でお夕食をいただいた。
『あー美味しかったわ』と呟いてから私室に行った。
きっと旦那様もお疲れでしょうからこのまま声はかけない方が良いわよね。と、一人納得をしてその日はそれで休むことにした。
翌朝目覚めるとやはり、旦那様は朝早くに王宮に行かれたという。
『まあ、久しぶりにお顔を見られてよかったわ。何よりお元気そうで安心したわ。それにしても相変わらず凛々しいお顔だったわね』
そうひとり言を言いながら私も教会へ行く準備をした。
そういえばお義姉様も元気そうなのでリチャード様のことは大丈夫そうでよかったわ。
こうして私は心置きなく、いつものように教会へと向かった。
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