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11話(お義姉様の婚約破棄が決まりました)
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数日後。
侯爵家の応接室で、わたくしは背筋を伸ばし、父である侯爵の前に座った。
いつもなら苦手なはずの父との会話、しかし今日は、逃げるわけにはいかない。
「舞踏会で、何があった」
いつもの苦手な低い声。
わたくしは一旦、息を吐いて、すべてを話し始めた。
リチャード様が正式な舞踏会で別の令嬢を堂々とエスコートしていたこと。
それにより、どれだけ自分が惨めな思いをしたかを、そしてそれをエクセラル子爵家のロイド様が救ってくれたこと。
そしてその際に耳にした、リチャード様の資金難の噂。
語り終えると、室内に少しの沈黙が落ちた。
父は指先で机を軽く叩き、話し始めた。
「なるほどな。それほど不誠実な男だったとはな」
父の声には怒りが滲んでいた。
「お父様、お願いがございます」
わたくしは真っ直ぐに顔を上げ、父を見た。
「この婚約、破棄していただけませんか。あのような方と未来を共にするつもりはございません」
父はわたくしの瞳をじっと見つめ、やがて微笑んだ。
「わかった。お前が迷わずそう言えるなら、それが全てだ」
胸の奥に溜まっていた重たいものが、すっと流れ落ちた。
「断りは私から正式に入れよう。お前が顔を出す必要はもうない」
「ありがとうございます、お父様」
わたくしは父に、深く頭を下げた。
「それと、舞踏会で助けてくださったロイド殿には、改めてお礼をしなさい。当家としてのな」
「はい。後日改めて、お礼かたがたご挨拶に伺わせていただきますわ」
ーーーー
数日後。
わたくしはエクセラル子爵邸を訪れていた。
落ち着いた雰囲気の応接室で、ロイド様は優しい笑みを浮かべ、迎えて下さった。
「本日はようこそおいでくださいました」
「先日の舞踏会では、本当にありがとうございました」
わたくしは丁寧に頭を下げた。
「おかげさまで、父の了承を得て婚約は正式に破棄となりました」
ロイド様は少しだけ目を細めた。
「それは、良い決断だったと思います」
「はい。これでようやく、新しい自分の人生が始められます」
たわいのない会話の中に、私自身、以前とは違う晴れやかさを感じた。
もうわたくしは、前だけを向いて歩んで行こう。過去は決して振り返らずに。
ーーーー
一方その頃。
私は、ロッキーニ氏の事務所の前に立っていた。
重厚な扉を前に、緊張を隠せない。
(もう迷わない)
ノックをすると、すぐに通された。
「お待ちしておりました、アナスタシア様」
こちらを見て、微笑むロッキーニ氏に、私は頭を下げた。
「先日、保留にしていただいていた件ですが、正式にお受けいたします」
言葉にした瞬間、不思議なほど心が軽くなった。
「挿絵作家として、本格的に仕事を続けていきたいと思います」
先生は満足そうに頷いてくださった。
「あなたなら、きっと素晴らしい作品を生み出されるでしょう」
私は少し照れながら微笑んだ。
(クリスティーヌ・ド・ピザン先生。私は、貴女のように強く生きたい)
自分の力で人々に夢や、感動を届けたい。自分の描く絵で多くの人を励ましたい。
だけど、気になることはある。それでも。
(アラン様が子供を望んでいないなら、私は自分の描いた絵で多くの子供たちに夢を与えよう)
そう心に決めた。
(だって、そうよね。そばにいられるだけでいいなんて言っておきながら子供を望むこと自体、おかしなことだわ)
私はまた、新しい目的ができたことを喜ぶべきだわ。
王女殿下の噂が耳に入らないわけではない。
けれどもう、心を乱さないと決めた。
誰が何を言おうと、私は、私の道を歩く。
侯爵家の応接室で、わたくしは背筋を伸ばし、父である侯爵の前に座った。
いつもなら苦手なはずの父との会話、しかし今日は、逃げるわけにはいかない。
「舞踏会で、何があった」
いつもの苦手な低い声。
わたくしは一旦、息を吐いて、すべてを話し始めた。
リチャード様が正式な舞踏会で別の令嬢を堂々とエスコートしていたこと。
それにより、どれだけ自分が惨めな思いをしたかを、そしてそれをエクセラル子爵家のロイド様が救ってくれたこと。
そしてその際に耳にした、リチャード様の資金難の噂。
語り終えると、室内に少しの沈黙が落ちた。
父は指先で机を軽く叩き、話し始めた。
「なるほどな。それほど不誠実な男だったとはな」
父の声には怒りが滲んでいた。
「お父様、お願いがございます」
わたくしは真っ直ぐに顔を上げ、父を見た。
「この婚約、破棄していただけませんか。あのような方と未来を共にするつもりはございません」
父はわたくしの瞳をじっと見つめ、やがて微笑んだ。
「わかった。お前が迷わずそう言えるなら、それが全てだ」
胸の奥に溜まっていた重たいものが、すっと流れ落ちた。
「断りは私から正式に入れよう。お前が顔を出す必要はもうない」
「ありがとうございます、お父様」
わたくしは父に、深く頭を下げた。
「それと、舞踏会で助けてくださったロイド殿には、改めてお礼をしなさい。当家としてのな」
「はい。後日改めて、お礼かたがたご挨拶に伺わせていただきますわ」
ーーーー
数日後。
わたくしはエクセラル子爵邸を訪れていた。
落ち着いた雰囲気の応接室で、ロイド様は優しい笑みを浮かべ、迎えて下さった。
「本日はようこそおいでくださいました」
「先日の舞踏会では、本当にありがとうございました」
わたくしは丁寧に頭を下げた。
「おかげさまで、父の了承を得て婚約は正式に破棄となりました」
ロイド様は少しだけ目を細めた。
「それは、良い決断だったと思います」
「はい。これでようやく、新しい自分の人生が始められます」
たわいのない会話の中に、私自身、以前とは違う晴れやかさを感じた。
もうわたくしは、前だけを向いて歩んで行こう。過去は決して振り返らずに。
ーーーー
一方その頃。
私は、ロッキーニ氏の事務所の前に立っていた。
重厚な扉を前に、緊張を隠せない。
(もう迷わない)
ノックをすると、すぐに通された。
「お待ちしておりました、アナスタシア様」
こちらを見て、微笑むロッキーニ氏に、私は頭を下げた。
「先日、保留にしていただいていた件ですが、正式にお受けいたします」
言葉にした瞬間、不思議なほど心が軽くなった。
「挿絵作家として、本格的に仕事を続けていきたいと思います」
先生は満足そうに頷いてくださった。
「あなたなら、きっと素晴らしい作品を生み出されるでしょう」
私は少し照れながら微笑んだ。
(クリスティーヌ・ド・ピザン先生。私は、貴女のように強く生きたい)
自分の力で人々に夢や、感動を届けたい。自分の描く絵で多くの人を励ましたい。
だけど、気になることはある。それでも。
(アラン様が子供を望んでいないなら、私は自分の描いた絵で多くの子供たちに夢を与えよう)
そう心に決めた。
(だって、そうよね。そばにいられるだけでいいなんて言っておきながら子供を望むこと自体、おかしなことだわ)
私はまた、新しい目的ができたことを喜ぶべきだわ。
王女殿下の噂が耳に入らないわけではない。
けれどもう、心を乱さないと決めた。
誰が何を言おうと、私は、私の道を歩く。
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