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16話(それぞれの想い)
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大和さんが男子寮へと帰った後、私はこれから始まる授業について学ばなくてはと思い、スマホで色々と調べることにした。
この大学に合格したのは、前のこの身体の持ち主であるのだから、彼女に恥をかかせないようしっかりと勉強しなくてはと自分に気合いを入れた。尤も、勉強しようと本を開くと何故か大抵のことは理解できる。やはりこれは彼女の記憶がそうさせているのかもしれない。でもそれに甘んじず、もっと私なりに向上しなくてはと気合いを入れ直した。
こちらでの寮生活にも慣れ、勉強もそれなりにこなしながら充実した毎日を送ってはいたが、何か物足りない。それが何かは分からなかったがある日それに気づいてしまった。
休みの日になると大和さんは私を外出へと誘ってくれた。一緒に買い物をしたり食事にも誘って下さるが、それと同じことをしてくれるお兄様に対しての気持ちの違い。
間違いなくお兄様といると時間が経つのも早く感じ、もっと一緒にいたいと思う。
大和さんと過ごす時間は楽しく感じても、それはただ友達と過ごす感覚と同じだった。
お兄様といると心がときめくのを感じる。兄妹なのだからそんな想いを持ってはいけないと分かっていても、本来私はこの身体の持ち主の美優さんではない。
だからといってそんなこと、お兄様は知る由もない。こちらの世界にいる以上、お兄様と一緒になることは物理的に無理だとわかっていても想う気持ちは止められない。だから暫く会うのはよそう、会えば会うほど辛くなるだけなのだから。
「一馬さん、どうしたの? ぼーとして」
「ごめん、何だか最近妹の美優の様子がおかしいんだ。いつもだったら誘えばすぐに来るのに、このところ三回続けて断られてしまって」
「美優ちゃんだって年頃なんだから、デートとかあるんじゃないの? 心配しすぎよ」
取引先の娘である香苗に言われてしまった。確かにそうなのだが、記憶も完全に戻ったわけではないし、心配するなと言う方が無理な話だ。『また明日にでも連絡してみるか』と心の中で思った。
大和に尋ねても『別にいつもと同じですが』と言うだけだし。まったく奴はちゃんと美優を見ているのか? と何故か凄く腹立たしく思った。
不思議と自分が前よりも美優のことを考えている時間が多い気がする。
頭の中で自分の気持ちを考えてみた。美優が高熱を出してやっと目覚めたと思ったら、記憶を無くしてしまっていたと聞かされてから、初めてこちらで会った時に、まるで別人のようになっていて『これが本当にあの美優なのか?』と思ったほどだった。正直どう接していいのかさえ分からなかった。でも何故か自分が美優を守らなければと感じてしまった。
そして今まで経験したことのない感情に支配された気がした。心の底では妹なんだと自分に言い聞かせても、どうすることも出来ない感情に押しつぶされそうだった。
子供の頃からずっと一緒でそんな感情なんてなかったはずなのに。やはり血の繋がりが無いせいなのだろうか? そんなこと感じたことなんて無かったのに。
あれほど強く男になんて一生頼らないタイプの妹だと思っていた。だが、こちらに来た美優と会って話した時に常に側にいて見守ってやらなければといつのまにか思っていた。
私が8歳のとき、私の両親は自動車事故で二人一緒に亡くなった。
父は、今の育ての父の会社で専務を務めていた。育ての両親が本来、大切な取引先を接待する予定だったが、別の海外クライアントが急遽来日したため、そちらを優先せざるを得なくなったという。
それで代わりに、父が母と一緒に取引先を接待することになり、会社の保養地がある軽井沢へ向かう途中で、車が事故を起こし、二人とも即死したと聞いた。
そしてそれに責任を感じた今の両親が私を養子として引き取り、後継ぎにするべくそれなりの英才教育を施したということだった。
私は実子の美優がいるのだから後継ぎの件は辞退を申し出たが、育ての両親は義理堅くガンとして譲らない。しかし私はいずれ時がきたら美優に譲り、私は美優の補佐としてやっていくつもりだった。なんといっても美優は頭も切れるし決断力もある、経営者としての器を十分に全て兼ね備えていた。
そう、あの日までは。
それでも今の美優でも誰かが側で補佐を務めれば賢い子だ、十分にやっていけるはずだ。
美優には幼馴染の大和がいる。彼はやはりうちと同じ三大財閥の神宮寺家の一人息子だ。
彼は幼い頃から美優の側にいて美優に好意を抱いている。そんな二人がもし結婚でもすることになったら、その時は美優は美優で朝倉財閥を継いだまま大和の妻としてもやっていけばいいと思っていた。なのに最近の自分ときたら大和に嫉妬心さえ抱いてしまう。
こんな感情は今までは無かったはずなのに。
私はこれからどうしたらいいのか? どうしたいのか? きっとその答えは自分の中では出ている。ただ、今まで美優とは兄妹として接して来た。美優の気持ちを考えるとこのままが一番いいことは分かっている。
だが、私はこれからも今までのように美優の兄として接していけるのか自信がない。
もし私の気持ちを知ったら美優はどう思うだろうか? 前の美優と今の美優は別人のようだ。だからもしかしたらと期待をしてしまうのはやはり間違いなのだろうか? 私がもし美優に本心を伝えてしまったら私は全てを失ってしまうかもしれない。それでもどうしても自分の気持ちを伝えたい。それで全てを失ったとしてもきっと後悔はしないだろう。そしてその時、私が美優の側を離れることになってもその時は大和が側にいるはずだ。美優が困るようなことにはならない。だからどうしても本心を伝えたい。
こんな状況の中、自分の気持ちに気づいてしまった今だからこそ美優を一人の女性として好きになってしまったことを伝えたい。
そうでもしなければこのまま美優と大和の幸せな姿を側で見続けることになる、それは余りにも辛過ぎる。今の自分にはそれに堪えられる自信がない。
そんなことを考えながらただ時間だけが過ぎていく。
『美優、どうして私のことを避けているんだ?』
思わず呟いていた。
この大学に合格したのは、前のこの身体の持ち主であるのだから、彼女に恥をかかせないようしっかりと勉強しなくてはと自分に気合いを入れた。尤も、勉強しようと本を開くと何故か大抵のことは理解できる。やはりこれは彼女の記憶がそうさせているのかもしれない。でもそれに甘んじず、もっと私なりに向上しなくてはと気合いを入れ直した。
こちらでの寮生活にも慣れ、勉強もそれなりにこなしながら充実した毎日を送ってはいたが、何か物足りない。それが何かは分からなかったがある日それに気づいてしまった。
休みの日になると大和さんは私を外出へと誘ってくれた。一緒に買い物をしたり食事にも誘って下さるが、それと同じことをしてくれるお兄様に対しての気持ちの違い。
間違いなくお兄様といると時間が経つのも早く感じ、もっと一緒にいたいと思う。
大和さんと過ごす時間は楽しく感じても、それはただ友達と過ごす感覚と同じだった。
お兄様といると心がときめくのを感じる。兄妹なのだからそんな想いを持ってはいけないと分かっていても、本来私はこの身体の持ち主の美優さんではない。
だからといってそんなこと、お兄様は知る由もない。こちらの世界にいる以上、お兄様と一緒になることは物理的に無理だとわかっていても想う気持ちは止められない。だから暫く会うのはよそう、会えば会うほど辛くなるだけなのだから。
「一馬さん、どうしたの? ぼーとして」
「ごめん、何だか最近妹の美優の様子がおかしいんだ。いつもだったら誘えばすぐに来るのに、このところ三回続けて断られてしまって」
「美優ちゃんだって年頃なんだから、デートとかあるんじゃないの? 心配しすぎよ」
取引先の娘である香苗に言われてしまった。確かにそうなのだが、記憶も完全に戻ったわけではないし、心配するなと言う方が無理な話だ。『また明日にでも連絡してみるか』と心の中で思った。
大和に尋ねても『別にいつもと同じですが』と言うだけだし。まったく奴はちゃんと美優を見ているのか? と何故か凄く腹立たしく思った。
不思議と自分が前よりも美優のことを考えている時間が多い気がする。
頭の中で自分の気持ちを考えてみた。美優が高熱を出してやっと目覚めたと思ったら、記憶を無くしてしまっていたと聞かされてから、初めてこちらで会った時に、まるで別人のようになっていて『これが本当にあの美優なのか?』と思ったほどだった。正直どう接していいのかさえ分からなかった。でも何故か自分が美優を守らなければと感じてしまった。
そして今まで経験したことのない感情に支配された気がした。心の底では妹なんだと自分に言い聞かせても、どうすることも出来ない感情に押しつぶされそうだった。
子供の頃からずっと一緒でそんな感情なんてなかったはずなのに。やはり血の繋がりが無いせいなのだろうか? そんなこと感じたことなんて無かったのに。
あれほど強く男になんて一生頼らないタイプの妹だと思っていた。だが、こちらに来た美優と会って話した時に常に側にいて見守ってやらなければといつのまにか思っていた。
私が8歳のとき、私の両親は自動車事故で二人一緒に亡くなった。
父は、今の育ての父の会社で専務を務めていた。育ての両親が本来、大切な取引先を接待する予定だったが、別の海外クライアントが急遽来日したため、そちらを優先せざるを得なくなったという。
それで代わりに、父が母と一緒に取引先を接待することになり、会社の保養地がある軽井沢へ向かう途中で、車が事故を起こし、二人とも即死したと聞いた。
そしてそれに責任を感じた今の両親が私を養子として引き取り、後継ぎにするべくそれなりの英才教育を施したということだった。
私は実子の美優がいるのだから後継ぎの件は辞退を申し出たが、育ての両親は義理堅くガンとして譲らない。しかし私はいずれ時がきたら美優に譲り、私は美優の補佐としてやっていくつもりだった。なんといっても美優は頭も切れるし決断力もある、経営者としての器を十分に全て兼ね備えていた。
そう、あの日までは。
それでも今の美優でも誰かが側で補佐を務めれば賢い子だ、十分にやっていけるはずだ。
美優には幼馴染の大和がいる。彼はやはりうちと同じ三大財閥の神宮寺家の一人息子だ。
彼は幼い頃から美優の側にいて美優に好意を抱いている。そんな二人がもし結婚でもすることになったら、その時は美優は美優で朝倉財閥を継いだまま大和の妻としてもやっていけばいいと思っていた。なのに最近の自分ときたら大和に嫉妬心さえ抱いてしまう。
こんな感情は今までは無かったはずなのに。
私はこれからどうしたらいいのか? どうしたいのか? きっとその答えは自分の中では出ている。ただ、今まで美優とは兄妹として接して来た。美優の気持ちを考えるとこのままが一番いいことは分かっている。
だが、私はこれからも今までのように美優の兄として接していけるのか自信がない。
もし私の気持ちを知ったら美優はどう思うだろうか? 前の美優と今の美優は別人のようだ。だからもしかしたらと期待をしてしまうのはやはり間違いなのだろうか? 私がもし美優に本心を伝えてしまったら私は全てを失ってしまうかもしれない。それでもどうしても自分の気持ちを伝えたい。それで全てを失ったとしてもきっと後悔はしないだろう。そしてその時、私が美優の側を離れることになってもその時は大和が側にいるはずだ。美優が困るようなことにはならない。だからどうしても本心を伝えたい。
こんな状況の中、自分の気持ちに気づいてしまった今だからこそ美優を一人の女性として好きになってしまったことを伝えたい。
そうでもしなければこのまま美優と大和の幸せな姿を側で見続けることになる、それは余りにも辛過ぎる。今の自分にはそれに堪えられる自信がない。
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思わず呟いていた。
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