《完結》財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり

ヴァンドール

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18話(王妃様からのお話)

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 王宮から帰ってきてから数日後、わたくしは私室で久しぶりに読書をしていた。

 今後の為にも此方の世界、この国の常識を学んでおかなければと思ったからだ。
 そして読み進めているうちに大事なところに印をつけたかったが、貴重な本に書き込みをするわけにもいかず、代わりに栞(しおり)を挟んでおいた。しかし数が多く『こんな時、付箋があれば便利なのに』と思っていた。

 そして『そうだ、無いなら作ればいいのだわ』と思い、そういえば先日使ったアラビアゴムは接着剤の役割も果たすことを思い出していた。だが、アラビアゴムは乾くとパリパリになってしまう。だったら保湿剤であるグリセリンと混ぜ合わせれば、わたくしが前の世界で愛用していた付箋に近い物ができるのではないのかしら? と思った。
 グリセリンはこちらでも普通に売っている物だし、あとは混合比率だけだわ。

 そしてわたくしは早速作ることにした。試行錯誤しながら混合比率を割り出し、なんとか納得するものが出来た。
 自分専用に使っていたが、ある日、剥がした瞬間その部分が黒くなっていた。『あー、これはカビだわ』と思い、さらに混合液に防カビ剤として加える物をと考えた。
 こちらですぐに手に入るならエタノールかホウ酸だ。とりあえず両方で試してみたら、ホウ酸の方が持続性があることが分かったのでホウ酸で作ることにした。
 こうしてわたくしは大事なところに付箋を貼り付け、読書をしながら此方の世界の常識や現状を把握していった。

 王宮から帰って来てから一月ほどしてから、またしても呼び出しがあった。わたくしは読みかけの本を持って王宮へと向かった。

『どうせ待たされるのなら、その間読書でもしながら待てばいいわ』
 と思っていた。そして案の定、わたくしは今、王宮の一室で声が掛かるのを読書をしながら待っている。すると突然扉が開き、王弟殿下がやって来て、わたくしの真向かいに座った。

「待たせてしまい、すまない。突然王妃様に来客があったので、もう暫くここで待っていて欲しい」

 すまなそうに言われた。

「どうぞお気遣いなく。読書をしながら待たせて頂きますので」
 
「その本に沢山小さな紙が挟まっているのは何なのだ?」

「これは付箋と言って、大事なところに目印として貼り付けておくものです」
 
「そんなことをしたら剥がす時に本が破れてしまうのではないのか?」
 
「いいえ、こちらは紙を傷つけることなく何度でも貼り替えが出来るのです」

 そう答えながら、目の前で剥がしてからまたすぐに貼るところをお見せした。

「ほー、不思議な物だな。これは便利だ」

 わたくしは、書類にサインをして欲しいところや、見落として欲しくないところなどにも貼って目印にすることもできます、と説明をした。

「確かにそのような使い方ができるなら、私も是非欲しい」
 
「今度まとめてお作りして届けさせます」
 
「まだ商品化はしてないのか?」
 
「はい、今のところそれほど需要があるとも思えませんので」
 
「いいや、これは絶対欲しがる者が多くいるはずだ。なんなら私が作っただけ買い取ってもいいぞ」
 
「本当にそうでしょうか?」
 
「たとえばだな、役所関係や、教会で写本をする時など、途中で作業を中断した時の目印にも使える。それに研究者が論文を書いて、特に大事なところにも貼り付けられるじゃないか」

 などなど、殿下は次々と色々な案を出してくれた。

「では早速商品化のこと、考えさせて頂きます」

 そうこうしているうちに侍従の方に呼ばれて席を立つと、何故か殿下も一緒についてこられた。
 そして王妃様の元へ着いた。

「ごめんなさい、こんなに待たせてしまって」

「いえ、読書をしながら殿下に色々とアドバイスをいただいていたところなので、お気になさらないでください」

 すると殿下が先程のわたくしとのやり取りを王妃様に全て説明された。それを聞き終えた王妃様は興味を示された。

「是非、わたくしの分も用意してくださらないかしら?」

 勿論、それを了承してから、王妃様がわたくしを呼ばれた本題に入られた。

 王妃様は先日のトリートメントを隣国のお兄様とお義姉様に頼まれていて、隣国やお兄様の妃である王妃様の祖国へも輸出して欲しいとのことだった。
 それはわたくしにとっては願ってもないことだが、生産量を考えるとすぐにとは返事が出来ない。

「王妃様、大変有り難いお話なのですが、今のままでは生産が追いつきません。なので一旦このお話は持ち帰り、相談させて頂いてもよろしいでしょうか?」

「それは勿論構わないけれど、もし生産場所を拡大するなり、新しく作るなら資金提供はこちらで考えてもいいわ」

 わたくしは少し口角を上げた。

「では早速このお話、進めさせて頂きます。その節は宜しくお願いいたします」

 しっかりと念を押させてもらい、その場を後にしようとした。

「それから先程の付箋とやらの件もお願いね」 

 逆に念を押された。

「勿論、王妃様の分は別にご用意させていただきます」

 今度こそその場を後にした。
 退出するわたくしのあとを殿下もついて来られ、いつものように馬車まで送って下さった。

「ではまた近々会おう」

 わたくしも前回同様返した。

「本日はありがとうございました」

 そう言って王宮を後にした。わたくしは『また近々殿下と?』と不思議に思いながら馬車に揺られながら王宮を後にした。
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