《完結》財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり

ヴァンドール

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26話(殿下の想い)

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 その後、無事に帰国したわたくしたちは陛下と王妃様に全てのご報告を申し上げた。
 殿下は、わたくしのしたことを事細かに説明しながら終始褒め称えた。わたくしは照れながら殿下を見た。

「殿下、少し大袈裟すぎます」
 
「大袈裟なものか、流暢な発音でおまけに侍女にまであちらの言葉で説明をさせて完璧だったぞ」
 
「そこは一生懸命勉強してくれたアンを褒めてくださいまし」

 すると殿下は慌てて言う。

「勿論そのつもりだ。あと、君がその場で思いついた棚の件だって大したものだったぞ」
 
「棚の件とは何のことだ?」

 陛下に殿下が、これまた丁寧に説明し始めた。
 そして説明が終わると陛下は感心なさった。

「それはすごい。なかなか思いつくものではないぞ」

 そして感心なさった陛下と王妃様は笑顔で褒めてくださった。

「本当にこの度はよくやってくれた。それなりの褒美をとらそう」

 何か好きな物を考えておくようにと言って下さった。

「身に余るお言葉、ありがとうございます」

 そう申し上げてから、少々疲れも残っていたので、本日はこれでその場を後にすることにした。
 そして殿下はいつものように馬車まで送ってくださった。

「また改めて会おう。長旅だったからな、疲れも残っているだろうから暫くはゆっくりするといい」

「殿下こそお疲れではありませんか? ゆっくりなさってください」

 そう申し上げてから王宮を後にした。

 侯爵邸に戻ったわたくしは皆さんから労いの言葉をいただき、少し私室で休ませてもらうことにした。
 そんなわたくしの後ろを従兄のお兄様が追ってきて色々と質問してきたが、伯父様と伯母様に止められた。

「ジャン、ステーシアは疲れているのだから話なら後になさい」

 わたくしは思わず笑ってしました。

「お兄様、ではお食事の時にでも」

 そして階段を上がった。私室に入るとアンがお茶の用意をしてくれていた。

「アンも疲れているのだから今日はもういいわ。ゆっくり休んで。
 王宮ではアンがあちらの言葉で商品の紹介をしてくれたこと皆、褒めていたわよ」
 
「私はお嬢様に教えていただいた通り説明したまでです。それに疲れはしましたが、なかなか出来ない体験でとても楽しかったです」
 
「確かにそうね、疲れはしたけどわたくしにとっても充実した日々だったわ」
 
 夜になりお夕食の時間がきて下に降りると、待っていたかのようにお兄様が階下に立っていたのには思わず笑みが出てしまった。

「お兄様、待っていてくださったのですか?」
 
「随分と暫くだからな」

 そうして皆さんで楽しい食事をしながら、あちらの国での話に花が咲き、それは夜遅くまで続いた。食事が終わり最後にわたくしは皆に宣言するように言った。

「さあ、明日からまたバリバリ仕事をするわよ」

 するとまたしても皆でわたくしのことを不思議そうに見ながら言う。

「本当にあのステーシアなのかしら」

 思わずわたくしは笑顔で返した。

「はい、間違いなくわたくしはステーシアです」

 
(王宮にて)

 こちらに戻って来てからステーシア嬢の今回の功績を陛下と王妃様に伝えてから、彼女を馬車寄せまで送った後、お二人の元へと戻り、あちらの国での歓迎ぶりをさらに伝えた。

「なんだか今回の旅は仕事とはいえ、随分と楽しそうだったとみえるな」
 
「彼女が普通の令嬢とは違い、探究心が旺盛なので、話をしていて飽きないのですよ」
 
「ただそれだけかしら? ウェスタント公爵がそれほど女性を褒める姿を初めて見ました」

 王妃様にも言われてしまった。

「もしかしてステーシア嬢のことを特別な存在だと思われているのではなくて?」

 私は返す言葉がなかった。すると今度は兄でもある陛下に聞かれた。

「だが、ステーシア嬢はそちのことをどう思っているのだ?」

 相手の気持ちなど知る由もない、寧ろそれを知りたいのは私自身だ。

「さあ? 聞いたこともありませんので」

 そして王妃様はそんなやり取りを少し呆れたように聞いていた。

「ウェスタント公爵ともあろうお方が女性のことで悩むだなんて想像も出来ませんでしたわ」 

 そう言って、笑っていらした。
 確かに今までの自分は女性に対して面倒な存在としか思っていなかったので、今回のような感情は初めて感じたものだった。
 そんな私に王妃様は 笑顔で言う。

「ウェスタント公爵にもやっと春が訪れたみたいね」
 すると今度は陛下が痛いところを突いてきた。

「もしや、まだ相手にもされてないのか?」

 手厳しいことを言われた。図星だった私はただ黙ってしまった。確かに彼女を見ていると、あまり男性には興味があるようには感じられない。だが、あの従兄とはどうなのだ? と、ふと社交界でのあの日の二人を思い出し、少し気になっていた。
 するとまた王妃様が尋ねてきた。

「公爵でもやきもちを妬かれることはあるのですか?」

「それは勿論、私だって人の子ですから」
 
 そんな私を陛下はからかうように言われた。

「では、健闘を祈る」

 そう言って、王妃様と微笑んでいた。
 私はそんなお二人の気持ちに応えることは出来るのだろうか? と考えながら取り敢えず出来る限りのことはやってみよう。後悔だけはしないようにと気合いを入れた。だが陛下の言う通り
『彼女は、私のことなど眼中に無さそうだし、尤もそれ以前に人を好きになったことはあるのか?』
 あの彼女を見ていると仕事以外に興味が無さそうに感じる。
 私は大きな溜息をつきながら
『どうやら先はまだまだ長そうだな』と呟いていた。
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