財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり

ヴァンドール

文字の大きさ
25 / 47

25話(素直になれなくて)

しおりを挟む
 あの後、香苗を送りながら
「今日は何か仕組んだんじゃないのか?」
 と問い質すと
「流石は一馬さん、鋭い!」
 と言われた。だから私は
「やはりそんなことだろうと思ったよ」
 と返した。そして
「何が目的だ?」
 と問うと 
「決まっているじゃない、美優ちゃんに私は一馬さんのことが好きだと教えたかったの」
 と言われた。だから私は
「そんな回りくどい真似することないだろう」
 と言い返した。すると香苗は
「だって美優ちゃんが一馬さんを見る目は、以前とは明らかに違うんだもの」
 と言った。それが本当ならどんなに嬉しいことかと思いながら
「そんなことあるわけないだろう!」
 と言うと
「私には分かるの、女同士だからなおさらね」
 と言われた。そして
「一馬さんはどうなの?    私のことはどう思っているのかしら?」
 と聞かれ、どう答えたものかと考えたが、やはりここは正直に伝えなくてはと思い
「ごめん、香苗のことは友達以上には思えない」
 と答えた。
 すると彼女は
「まあ、分かっていたとはいえ、こうもはっきり言われると結構堪えるわね」
 と返された私は
「すまない」
 と一言だけ口にした。すると彼女に
「謝らないで、さらに傷つくじゃない」
 と言われてしまった。
 そして彼女は美優のことを以前とは外見は同じでも中身はまるで別人のようだと言った。それは自分も感じていたことだから
「そうだな」
 と同調した。すると香苗は
「一馬さんも美優ちゃんを見る目が前とは違うっなって感じる」 
 と言ってから
「一馬さんは今の美優ちゃんだからこそ好きになったのよね?」
 と言われ、私は言葉を発せず、ただ小さく頷いた。すると香苗は
「美優ちゃんという存在が無くても私のことは友達以上には思えないということかしら?」
 と聞かれたので
「初めからそれは変わらない」
 と答えた。
 すると
「だったら諦めもつくわ。それだったらもう私がこの国にいる理由もなくなってしまったわね」
 と言ってから
「私はそろそろ両親のいる国にでも帰ろうかしら」
 と言った。
 私はもう謝ることはしなかった。
 その後、香苗は一人でこの国を後にした。
 私はしばらく美優への連絡はしなかった。なんとなくそうすることが、香苗へのせめてもの償いのような気がしたからだ。もちろん、美優のことが気にならないと言ったら嘘になるのだが。


 あの後、お兄様たちと別れてからしばらく何の連絡もなかった。 
 私は、大和さんから香苗さんが一人で自国に帰ったと聞かされた。
 多分、自分の気持ちが通じないと分かったからだと大和さんは言った。それを聞いた私は
「何故そんなこと大和さんに分かるんですか?」
 と聞くと
「本人が帰国する前に連絡してきて、一馬さんのことは諦めたと言っていたからな」
 と教えてくれた。
 それを聞いた私は正直ホッとしていた。そして、そんな私を見て大和さんは
「やはり香苗さんが言っていた通りなのかな」
 と言われてしまった。私は思わず
「どうしてそんなことを言うのですか?」
 と聞くと
「だって美優、ホッとした表情しているよ」
 と言ってから
「一馬さんのことが好きなのか?」
 と聞かれた。私は何て答えたらいいのか分からず黙ってしまった。すると
「香苗さんが言っていたことは本当だったんだな」
 とポツリと言われてしまった。
 そんな大和さんに掛ける言葉が見つからず、また黙ったままやり過ごしてしまった。すると大和さんは
「それが答えなんだな」
 と一人納得していた。そしてそれ以上は何も言わずに去っていった。後に残った私は
『ごめんなさい』
 と心の中で謝ることしかできなかった。
 そして大和さんとは気まずい雰囲気になってしまったので、その後は避けるように過ごしていたがある日、ばったり会ってしまった。
「久しぶり、元気そうだな」
 と声をかけられて、私はまたも、返す言葉が見つからずにいると
「美優、僕らは幼馴染みなんだから、こらからはせめて普通の友達として接して欲しい」
 と言ってくれた。私は謝るのは何か違う気がしたので
「分かりました。ではそうさせていただきます」
 と返した。すると
「少し硬いけどそれでいいよ」
 と言ってから
「一馬さんとは会っているのか?」
 と聞かれたので、正直に
「あの日以来一度も会っていません」
 と返した。すると
「え? 本当にあの日以来会ってないのか?」
 と聞かれたので
「だからそう言ってるでしょ」
 と少しキツイ言い方をしてしまった。すると
「そうなのか」
 と言って、何か考えながら
「じゃあまたな」
 と言ってどこかへ行ってしまった。
 そして、それから少ししてからお兄様から連絡があった。 
 もしかしたら大和さんが何か言ってくれたのかもしれないと思った。だから、なおさら素直になれなかった。
 ずいぶんと久しぶりの連絡だったのにお兄様はいつも変わらない感じで
「美優、食事でも行かないか?」
 と軽く声を掛けてきた。それがなんだか妙に腹立たしく感じてしまい
「今、色々忙しいので」
 と断ってしまった。そんな私にお兄様は
「分かった、では美優の都合のいい時に連絡してくれ」
 と言って電話は切れてしまった。私は後悔しながら、またも素直になれない自分が嫌で『どうして私はいつもこうなの?』と呟いていた。そしていつの間にか涙が頬を伝わっていた。これではまるで、あの日と一緒だわ。本当に私はなんの進歩もないのねと自分で自分が嫌になっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。 さらに、偽聖女と決めつけられる始末。 しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!? 他サイトにも重複掲載中です。

処理中です...