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32話(注目の舞踏会)
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王宮を後にしてから、わたくしは次回の舞踏会に間に合わせるため、薄いゴムシートをたくさん確保するようにカンパニーの方にお願いをした。そしてその社交界で、給仕の方のスムーズな給仕ぶりと、このゴムシートを目にした他の貴族たちの反応を見たかった。
殿下が仰った通り、確かに貴族たちが使っている食器類も高価なはずだから、一度購入すればかなり長く使用できるこのゴムシートを使い、食器を割る回数を減らすことができた方がメリットがある。
わたくしは気合を入れてひとりごとを言った。
「さあ、今度も頑張るわよ!」
それから少ししてから、たくさんのゴムシートが届いた。わたくしは殿下に許可を取っていたので、それを馬車に積んでカンパニーの職人とともに王宮の給仕室へと向かった。そして給仕の方から銀製のトレーを受け取り、連れてきた職人に一枚一枚貼ってもらった。
それから待つこと一時間。全てのトレーに貼り終えたゴムシートの付いたトレーを、給仕の方々に使ってもらった。すると皆さんが、口々に喜びの声を上げてくれた。
「おお、これは良い。背の高いフルートグラスもこれなら安心してスムーズに運べるぞ」
そして他の給仕の方たちも、口を揃えて同じような反応を示してくれた。すると、ちょうどそこへ殿下が顔を出された。当然、ここにいる皆さん全員が緊張してしまった。わたくしはチラリと殿下を見た。
「こちらは殿下がいらっしゃるところではありません。皆さん緊張しているではありませんか」
「いや、どんな出来栄えかと気になったものでな。すまん」
わたくしは給仕の方に話しかけた。
「先程の感想を、是非、殿下にもお聞かせください」
すると、皆さん口々に先程の会話を伝えてくれた。それを聞かれた殿下は、とても満足そうに頷いている。
「それは良かった」
とても嬉しそうにしていたので、そんな様子を見ていたわたくしは思わずひとりごとが出てしまった。
『殿下ってこんな表情もなさるのね。なんだか可愛らしいわ』
その後、殿下はわたくしをお誘いくださった。
「せっかく来たのだから、少しお茶でも付き合ってくれないか」
わたくしは素直に従った。
「では少しだけ」
後をついて行くと、そこにはいつから用意されていたのかと思ってしまうほど、色とりどりの美味しそうなお菓子が並んでいた。
「今日はご苦労であったな。それでだが、今度の社交界では私が君のエスコートをしよう」
それを聞いたわたくしは不思議な顔をした。
「なぜ、殿下がわたくしを?」
「多くの貴族たちに宣伝しようと思っているのだろう? だったら今回の商品は、この私から頼まれたと言った方が効果があると思わないか?」
「確かに、そうしていただけるなら大変ありがたいです」
「なら決まりだな」
何故か殿下は上機嫌で微笑んでいる。
そうしてわたくしは、次回の舞踏会に向けて万全の準備をした。
舞踏会当日、なぜか当たり前のようにわたくしを待っている従兄のお兄様が声をかけてくる。
「ステーシア、今日も素晴らしく綺麗だ」
「ありがとうございます、お兄様」
「では、今日も私がエスコートをしよう」
わたくしはお兄様を振り返った。
「申し訳ございません。本日のエスコートは王宮までとさせていただきます」
「なぜだ?」
不思議そうに尋ねられた。
「今日は殿下が例の滑り止めのついたトレーの宣伝を兼ねて、わたくしのエスコートを買って出てくださったのです」
するとお兄様は不機嫌そうに呟いた。
「何も殿下自ら表に出なくても……」
すると後ろから伯父様が声をかけた。
「ジャン、大人気ないぞ。仕事なのだから仕方あるまい」
そう言って、助け船を出してくださった。
そうしてわたくしたちは王宮へと向かうと、馬車乗り場には、既に殿下が待っていてくださり、お兄様に話しかけた。
「ここからは私が変わろう」
そして、殿下はわたくしの手を取った。するとお兄様は不服そうに、それでも一礼をした。
「殿下、よろしくお願いします」
後ろで見ていた伯父様は、それを苦笑いしながら見送ってくださった。
その後、殿下とともに会場に入ると、皆様からの注目を一身に浴びた。
何やら周りからは『何であの方が殿下とご一緒なのかしら』とか
『殿下も殿下ですわ』などなど、あまり歓迎されてない会話が耳に入る。
だけど一部の紳士たちからは『何とお似合いなのだ』という声も僅かだが聞こえた。それを気づかぬふりをして、わたくしたちは給仕に飲み物を頼むと、すぐに二人分の飲み物を持ってきてくれた。すると殿下は大袈裟に声を上げた。
「このトレーの使い心地はどうだ?」
給仕の方に問われると、給仕の方はまるで台詞を言うように答えた。
「大変使いやすく、安心して皆様にお出しできます。これを導入された殿下には皆、感謝いたしております」
まるで《殿下の回し者?》と思ってしまうほど完璧だった。すると周囲の貴族たちが集まり出した。
「殿下が導入したとはどういうことだ」
すかさず、わたくしが説明をさせていただいた。
「こちらの商品は天然のゴムから出来ておりまして、それを高い技術によって薄く伸ばしてから、トレーに貼り付けています」
そう言って、近くの給仕の方からトレーを受け取り、皆さんにお見せした。
「このシートには吸着性と弾力性があり、フルートグラスのような比較的不安定なグラスも安心して運べるのです」
すると周囲の貴族たちは皆、感心している。
「確かにこれなら落として割る確率もかなり低くなるな」
そこでわたくしは皆に声をかけた。
「もし必要な方がいらっしゃるなら、是非わたくしがご紹介させていただきますわ」
すると、我先にと声をかけられた。わたくしは簡単にメモを取りながら皆さんにお願いをした。
「後ほど商会の者を向かわせますので、ご注文はその時にお願いします」
ひと通り、目的を果たしたわたくしは殿下に会釈をした。
「本日はありがとうございました。お陰で大変助かりました」
すると殿下は上機嫌なお顔をされていた。
「君の役に立てて嬉しいよ。それでは、後はこの舞踏会を楽しむとしよう」
そう仰ってから、わたくしの手を取り急にダンスを踊り出した。
わたくしはダンスについていくのに必死だったので気づけなかったが、あとからお兄様に『かなり目立っていたぞ』と聞かされた。
そういえば今日の社交界にはいつも嫌味を言っくる殿下の姪のルミーナ様がいらしていなかったわね。とふと気になったがその時はすぐに忘れてしまった。
この時のわたくしは、後々そのルミーナ様が次の新商品に繋がることとは夢にも思いもせずにいた。
殿下が仰った通り、確かに貴族たちが使っている食器類も高価なはずだから、一度購入すればかなり長く使用できるこのゴムシートを使い、食器を割る回数を減らすことができた方がメリットがある。
わたくしは気合を入れてひとりごとを言った。
「さあ、今度も頑張るわよ!」
それから少ししてから、たくさんのゴムシートが届いた。わたくしは殿下に許可を取っていたので、それを馬車に積んでカンパニーの職人とともに王宮の給仕室へと向かった。そして給仕の方から銀製のトレーを受け取り、連れてきた職人に一枚一枚貼ってもらった。
それから待つこと一時間。全てのトレーに貼り終えたゴムシートの付いたトレーを、給仕の方々に使ってもらった。すると皆さんが、口々に喜びの声を上げてくれた。
「おお、これは良い。背の高いフルートグラスもこれなら安心してスムーズに運べるぞ」
そして他の給仕の方たちも、口を揃えて同じような反応を示してくれた。すると、ちょうどそこへ殿下が顔を出された。当然、ここにいる皆さん全員が緊張してしまった。わたくしはチラリと殿下を見た。
「こちらは殿下がいらっしゃるところではありません。皆さん緊張しているではありませんか」
「いや、どんな出来栄えかと気になったものでな。すまん」
わたくしは給仕の方に話しかけた。
「先程の感想を、是非、殿下にもお聞かせください」
すると、皆さん口々に先程の会話を伝えてくれた。それを聞かれた殿下は、とても満足そうに頷いている。
「それは良かった」
とても嬉しそうにしていたので、そんな様子を見ていたわたくしは思わずひとりごとが出てしまった。
『殿下ってこんな表情もなさるのね。なんだか可愛らしいわ』
その後、殿下はわたくしをお誘いくださった。
「せっかく来たのだから、少しお茶でも付き合ってくれないか」
わたくしは素直に従った。
「では少しだけ」
後をついて行くと、そこにはいつから用意されていたのかと思ってしまうほど、色とりどりの美味しそうなお菓子が並んでいた。
「今日はご苦労であったな。それでだが、今度の社交界では私が君のエスコートをしよう」
それを聞いたわたくしは不思議な顔をした。
「なぜ、殿下がわたくしを?」
「多くの貴族たちに宣伝しようと思っているのだろう? だったら今回の商品は、この私から頼まれたと言った方が効果があると思わないか?」
「確かに、そうしていただけるなら大変ありがたいです」
「なら決まりだな」
何故か殿下は上機嫌で微笑んでいる。
そうしてわたくしは、次回の舞踏会に向けて万全の準備をした。
舞踏会当日、なぜか当たり前のようにわたくしを待っている従兄のお兄様が声をかけてくる。
「ステーシア、今日も素晴らしく綺麗だ」
「ありがとうございます、お兄様」
「では、今日も私がエスコートをしよう」
わたくしはお兄様を振り返った。
「申し訳ございません。本日のエスコートは王宮までとさせていただきます」
「なぜだ?」
不思議そうに尋ねられた。
「今日は殿下が例の滑り止めのついたトレーの宣伝を兼ねて、わたくしのエスコートを買って出てくださったのです」
するとお兄様は不機嫌そうに呟いた。
「何も殿下自ら表に出なくても……」
すると後ろから伯父様が声をかけた。
「ジャン、大人気ないぞ。仕事なのだから仕方あるまい」
そう言って、助け船を出してくださった。
そうしてわたくしたちは王宮へと向かうと、馬車乗り場には、既に殿下が待っていてくださり、お兄様に話しかけた。
「ここからは私が変わろう」
そして、殿下はわたくしの手を取った。するとお兄様は不服そうに、それでも一礼をした。
「殿下、よろしくお願いします」
後ろで見ていた伯父様は、それを苦笑いしながら見送ってくださった。
その後、殿下とともに会場に入ると、皆様からの注目を一身に浴びた。
何やら周りからは『何であの方が殿下とご一緒なのかしら』とか
『殿下も殿下ですわ』などなど、あまり歓迎されてない会話が耳に入る。
だけど一部の紳士たちからは『何とお似合いなのだ』という声も僅かだが聞こえた。それを気づかぬふりをして、わたくしたちは給仕に飲み物を頼むと、すぐに二人分の飲み物を持ってきてくれた。すると殿下は大袈裟に声を上げた。
「このトレーの使い心地はどうだ?」
給仕の方に問われると、給仕の方はまるで台詞を言うように答えた。
「大変使いやすく、安心して皆様にお出しできます。これを導入された殿下には皆、感謝いたしております」
まるで《殿下の回し者?》と思ってしまうほど完璧だった。すると周囲の貴族たちが集まり出した。
「殿下が導入したとはどういうことだ」
すかさず、わたくしが説明をさせていただいた。
「こちらの商品は天然のゴムから出来ておりまして、それを高い技術によって薄く伸ばしてから、トレーに貼り付けています」
そう言って、近くの給仕の方からトレーを受け取り、皆さんにお見せした。
「このシートには吸着性と弾力性があり、フルートグラスのような比較的不安定なグラスも安心して運べるのです」
すると周囲の貴族たちは皆、感心している。
「確かにこれなら落として割る確率もかなり低くなるな」
そこでわたくしは皆に声をかけた。
「もし必要な方がいらっしゃるなら、是非わたくしがご紹介させていただきますわ」
すると、我先にと声をかけられた。わたくしは簡単にメモを取りながら皆さんにお願いをした。
「後ほど商会の者を向かわせますので、ご注文はその時にお願いします」
ひと通り、目的を果たしたわたくしは殿下に会釈をした。
「本日はありがとうございました。お陰で大変助かりました」
すると殿下は上機嫌なお顔をされていた。
「君の役に立てて嬉しいよ。それでは、後はこの舞踏会を楽しむとしよう」
そう仰ってから、わたくしの手を取り急にダンスを踊り出した。
わたくしはダンスについていくのに必死だったので気づけなかったが、あとからお兄様に『かなり目立っていたぞ』と聞かされた。
そういえば今日の社交界にはいつも嫌味を言っくる殿下の姪のルミーナ様がいらしていなかったわね。とふと気になったがその時はすぐに忘れてしまった。
この時のわたくしは、後々そのルミーナ様が次の新商品に繋がることとは夢にも思いもせずにいた。
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