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42話(焦燥)
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わたくしは取り敢えず殿下の元に行き、きちんと謝らなければと思い急いでいた。
王宮に着き、殿下にお目通りを願い出た。それなのに、殿下は外出中とのこと。思わず『なんて大人気ないことをするのかしら』と腹が立ったが、表には出さなかった。
「では、わたくしが訪ねて来たことだけでもお伝えください」
いつも取り継いでくださる方に言い残し、王宮を後にした。
わたくしは、ふと何故わたくしは殿下とお付き合いしているわけでもないのに、このようなことで謝らなければならないのかしら? と思ったが、まあ、マーク氏と次回お会いする時は殿下に知らせますという約束は違えてしまったので、その部分で言えばやはりわたくしがいけないのかしら、と納得した。
それでもやはり、どう考えてもわたくしは殿下のお気持ちを直接伝えられたわけでもないし、ましてやわたくしが殿下をお慕いしていると告げたわけでもない。
納得したつもりが、やはり何処か引っかかる。その上、謝りに来たわたくしに見え見えの居留守まで使って『やはり納得出来ない』と心で叫んだ。
そんな気持ちを引きずりながら侯爵邸に帰った。
「随分と早かったな。何かあったのか?」
お兄様に聞かれたので今日の出来事を話そうと思った。
「思いがけないことが起こりましたので」
「思いがけないこととは?」
「偶然、殿下も参加なさっていたのですが、わたくしがマーク氏にエスコートされているのをご覧になって、約束を違えたと怒っておいでで、すぐに帰られてしまわれたのです」
「は? それではまるで恋人同士みたいではないか」
「そうなりますよね? 普通は。でもそうではないのに、そんな約束をしてしまったことがいけなかったのです」
「よく意味がわかないのだが」
そう言われてもわたくし自身わからないのだから答えようがない。少々わたくしも面倒だったので
「わたくしもよくわかりません」
と答えた。そして着替えるため私室に行こうとするとお兄様は変なことを聞く。
「マーク氏とは仕事上の付き合いなのだよな?」
「は? 勿論、それ以上でもそれ以下でもありませんが」
「何故お兄様はそんなこと聞かれるのですか?」
「いや、少し気になっただけだ」
わたくしは心の中で『皆どうしてこうも面倒なことを聞かれるのかしら』と溜息をついた。そして精神的な疲れを感じたわたくしは、少し横になって休むことにした。
お夕食の時間になり、アンに起こされたわたくしは階下に降りて、伯父様と伯母様、お兄様の四人で食事をしていると、伯母様が興味津々と尋ねてこられた。
「今日の舞踏会はどうだったのかしら? かなり目立ったのではなくて」
わたくしは今日一日のことを包み隠さずに話した。すると伯父様が笑いながら仰った。
「殿下も困ったお人だ」
そう言って微笑んでいる。伯母様も隣で相槌を打っている。そして、何故かお兄様は少しムッとしている。わたくしは訳が分からずただ黙々と食事をした。
すると伯父様が突然声をかけられた。
「ステーシアさえよかったら、気晴らしに隣国に仕事がてら行ってみたらどうだ?」
「どんなお仕事でしょうか?」
「ステーシアの考えた商品を沢山仕入れてくれた友人がいるのだが、それらを隣国に新しく店を構えて、売りたいそうだ。その相談で明日カンパニーでその友人と会うことになっておるのじゃ」
「だったら父上、私も同行しましょう。隣国なら言葉がわかる者がいた方が何かと便利ですから」
「いいえ、わたくし一人でも大丈夫です。わたくしが行きます」
「別にステーシアと私の二人で行っても構わないではないのか?」
すると伯父様が仰った。
「確かに最初は猫の手も借りたいだろうから、二人で行って来なさい」
こうしてわたくしたちは隣国へと行くことに決まった。隣国へ行く前にマーク氏にデザイン画の依頼を受けたが、わたくしは先日の殿下の件でモヤモヤしていた。だからこれ以上面倒なことは避けたかったので、今はとても忙しく時間がないと断りを入れた。
こうしてわたくしとお兄様は隣国へと向かったのだった。この後、殿下が侯爵邸を訪ねて来るとは思いもせずに。
ーーーー
先日の舞踏会は、姪のルミーナのエスコートを頼まれて参加したのはいいのだが、まさかそこにステーシア嬢があのアレン・マークと一緒に参加しているとは思いもしなかった。
私は二人を見た瞬間、頭に血が上ってしまい彼女を睨みつけて『これはどういうことかな?』と責めてしまった。
彼女は私に謝っていたが、あの時の自分はただ腹立たしく、自分の感情が抑えられそうもなかったので、その場を後にした。
あのまま留まっていたら何を口走ってしまうか分からなかったので、それがあの時は最善だと思った。そして去って行きながら、いつもにも増して輝いて見えた彼女が尚更面白くなかった。
王宮に帰り頭を冷やしていたら、彼女が訪ねて来たと聞き、すぐに会いたい自分と腹立たしく怒っている自分がいて、私は居留守という選択をしてしまった。
彼女が帰った後、自分はなんと大人気ないことをしてしまったのだろうと後悔したが、遅すぎた。
これでは会うきっかけが作れないではないかと思ったが、もうどうすることも出来ない。
今度は自分が謝る番なのかもしれないと思ったが、流石にすぐには無理だった。気持ちの整理がまだつかない。
その上、見え見えの居留守まで使ってしまい、何だかバツが悪いというのもあった。
そんなことを色々考えていたら本当に謝る機会を無くしてしまった。そんな中、ただ時間だけが空しく過ぎていった。
王宮に着き、殿下にお目通りを願い出た。それなのに、殿下は外出中とのこと。思わず『なんて大人気ないことをするのかしら』と腹が立ったが、表には出さなかった。
「では、わたくしが訪ねて来たことだけでもお伝えください」
いつも取り継いでくださる方に言い残し、王宮を後にした。
わたくしは、ふと何故わたくしは殿下とお付き合いしているわけでもないのに、このようなことで謝らなければならないのかしら? と思ったが、まあ、マーク氏と次回お会いする時は殿下に知らせますという約束は違えてしまったので、その部分で言えばやはりわたくしがいけないのかしら、と納得した。
それでもやはり、どう考えてもわたくしは殿下のお気持ちを直接伝えられたわけでもないし、ましてやわたくしが殿下をお慕いしていると告げたわけでもない。
納得したつもりが、やはり何処か引っかかる。その上、謝りに来たわたくしに見え見えの居留守まで使って『やはり納得出来ない』と心で叫んだ。
そんな気持ちを引きずりながら侯爵邸に帰った。
「随分と早かったな。何かあったのか?」
お兄様に聞かれたので今日の出来事を話そうと思った。
「思いがけないことが起こりましたので」
「思いがけないこととは?」
「偶然、殿下も参加なさっていたのですが、わたくしがマーク氏にエスコートされているのをご覧になって、約束を違えたと怒っておいでで、すぐに帰られてしまわれたのです」
「は? それではまるで恋人同士みたいではないか」
「そうなりますよね? 普通は。でもそうではないのに、そんな約束をしてしまったことがいけなかったのです」
「よく意味がわかないのだが」
そう言われてもわたくし自身わからないのだから答えようがない。少々わたくしも面倒だったので
「わたくしもよくわかりません」
と答えた。そして着替えるため私室に行こうとするとお兄様は変なことを聞く。
「マーク氏とは仕事上の付き合いなのだよな?」
「は? 勿論、それ以上でもそれ以下でもありませんが」
「何故お兄様はそんなこと聞かれるのですか?」
「いや、少し気になっただけだ」
わたくしは心の中で『皆どうしてこうも面倒なことを聞かれるのかしら』と溜息をついた。そして精神的な疲れを感じたわたくしは、少し横になって休むことにした。
お夕食の時間になり、アンに起こされたわたくしは階下に降りて、伯父様と伯母様、お兄様の四人で食事をしていると、伯母様が興味津々と尋ねてこられた。
「今日の舞踏会はどうだったのかしら? かなり目立ったのではなくて」
わたくしは今日一日のことを包み隠さずに話した。すると伯父様が笑いながら仰った。
「殿下も困ったお人だ」
そう言って微笑んでいる。伯母様も隣で相槌を打っている。そして、何故かお兄様は少しムッとしている。わたくしは訳が分からずただ黙々と食事をした。
すると伯父様が突然声をかけられた。
「ステーシアさえよかったら、気晴らしに隣国に仕事がてら行ってみたらどうだ?」
「どんなお仕事でしょうか?」
「ステーシアの考えた商品を沢山仕入れてくれた友人がいるのだが、それらを隣国に新しく店を構えて、売りたいそうだ。その相談で明日カンパニーでその友人と会うことになっておるのじゃ」
「だったら父上、私も同行しましょう。隣国なら言葉がわかる者がいた方が何かと便利ですから」
「いいえ、わたくし一人でも大丈夫です。わたくしが行きます」
「別にステーシアと私の二人で行っても構わないではないのか?」
すると伯父様が仰った。
「確かに最初は猫の手も借りたいだろうから、二人で行って来なさい」
こうしてわたくしたちは隣国へと行くことに決まった。隣国へ行く前にマーク氏にデザイン画の依頼を受けたが、わたくしは先日の殿下の件でモヤモヤしていた。だからこれ以上面倒なことは避けたかったので、今はとても忙しく時間がないと断りを入れた。
こうしてわたくしとお兄様は隣国へと向かったのだった。この後、殿下が侯爵邸を訪ねて来るとは思いもせずに。
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先日の舞踏会は、姪のルミーナのエスコートを頼まれて参加したのはいいのだが、まさかそこにステーシア嬢があのアレン・マークと一緒に参加しているとは思いもしなかった。
私は二人を見た瞬間、頭に血が上ってしまい彼女を睨みつけて『これはどういうことかな?』と責めてしまった。
彼女は私に謝っていたが、あの時の自分はただ腹立たしく、自分の感情が抑えられそうもなかったので、その場を後にした。
あのまま留まっていたら何を口走ってしまうか分からなかったので、それがあの時は最善だと思った。そして去って行きながら、いつもにも増して輝いて見えた彼女が尚更面白くなかった。
王宮に帰り頭を冷やしていたら、彼女が訪ねて来たと聞き、すぐに会いたい自分と腹立たしく怒っている自分がいて、私は居留守という選択をしてしまった。
彼女が帰った後、自分はなんと大人気ないことをしてしまったのだろうと後悔したが、遅すぎた。
これでは会うきっかけが作れないではないかと思ったが、もうどうすることも出来ない。
今度は自分が謝る番なのかもしれないと思ったが、流石にすぐには無理だった。気持ちの整理がまだつかない。
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