《完結》財閥令嬢と伯爵令嬢の魂の入れ替わり

ヴァンドール

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43話(告白)

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 あの舞踏会から随分と日が経つのに、ステーシア嬢とは相変わらず会えていない。
 もういい加減自分の方から会いに行かなければ、彼女からは会いに来ないことは分かっていた。なのに、変なプライドが邪魔をしてここまで来てしまった。あんな大人気ない居留守を使ってしまったんだ、きっと彼女は呆れているかもしれないな。そう思うと、今一つ勇気が出ない。
 だが、このままではいつあのアレン・マークという男や彼女の従兄が絡んでくるか分からない。私は今日、思い切って侯爵邸に彼女を訪ねることにした。

 従者を連れないわけにはいかないので、一人の信頼している者を同行させた。
 そして、午前中に侯爵邸に着きステーシア嬢を訪ねると、彼女の侍女のアンが驚いて中へと通してくれたが、待っていたのはこの屋敷の主人であるハントリー侯爵自身だった。 

「これは王弟殿下、このようなところへよくお越しくだされた。実はステーシアは息子のジャンと今、隣国に仕事で滞在しています」

 それを聞き、心の中では『何だって、従兄と二人? それも隣国だと?』私は気持ちを隠しながら侯爵に尋ねた。

「いつこちらに戻りますか?」
 
「もう大分経つから、そろそろ戻ってもいい頃だと思うのですが生憎、連絡が来てませんので」

 何とも曖昧な返事だった。心の中では『大分経つとは、あれからすぐに経ったということか?』と焦りで手が震えた。それを必死で隠しながら侯爵に頼んだ。

「彼女が戻ったら、王宮に先触れを出して欲しいと伝えてもらいたい」

 それだけお願いをして去ろうとすると、侯爵は意味深なことを告げた。 

「殿下には失礼かと存じますが、ステーシアはあのような快活な性格だが、かなりの鈍感ときている。はっきりと言葉にしなくては何も伝わりませんぞ」

 と言ってから

「失礼した、ほんの老婆心です」

 私はコホンと咳払いをしてから返した。
 
「いや、感謝する」

 そして今度こそ侯爵邸を後にした。

 帰りの馬車に揺られながら、私は侯爵の言葉で不思議と冷静になれた。そしてその一言に、何故か温かさを感じた。息子のジャンとやらもステーシア嬢のことを慕っているはずなのに。

 それから一週間経った頃、彼女から戻ったとの先触れが届いた。私は『疲れているところ悪いが、王宮に来て欲しい』と手紙を送った。本来なら自分から会いに行くべきだと思ったが、従兄や侯爵の前では話しにくいので、やはりこちらに来て欲しかった。

 そしていよいよ彼女が王宮に来てくれた。
 久しぶりに見る彼女は相変わらず美しかった。私はまず彼女に謝罪した。

「この前の舞踏会では、つい大人気ない態度を取り申し訳なかった」
 
「わたくしの方こそ約束を違えてしまいすいませんでした」

 そして彼女は痛いところを突いて来た。
 
「大人気なかったのは居留守のことですか?」

 私はギクリとしながらも、ここは素直に認めた方が良さそうと思い謝った。

「あれもだな。すまなかった、つい頭に血が昇ってしまった」
 すると彼女は少し笑って言ってくれた。

「いえ、認めてくださるならいいのです」

 私は心の中で『素直に認めて正解だった』と苦笑した。

「わたくしもあの後すぐに仕事で隣国に参りましたので、あれ以来マーク氏とはお会いしてません」
 
「そのことはもういい」
 
 それから私は決心をして、彼女にこれから私の話に付き合って欲しいと言ってから、自分の素直な気持ちを伝えることにした。

「私は初めて会った時から、君のことを『変わった女性』として意識した。そして会う度にどんどん気持ちが惹かれていくのが分かった。それからは、君の周りにいる男たちに、もやもやする感情を感じ、『あーこれが嫉妬というものか』と理解した。
 私は間違いなく君のことが好きだ。私と一緒になって欲しい」
 
 すると彼女は静かに口にした。

「そこまで詳しく仰らなくても伝わります」

 そう言って微笑んだ。そして続けた。

「わたくしも殿下のことは気になる存在ですが、これが男女の好きかと問われると今一つわからないのが本音です」
 
「今すぐに返事をしなくていい。だが、少しずつでいいから自分の気持ちと向き合ってくれないか? そして自分の気持ちがはっきりしたらその時に教えてくれ。どんな答えでも受け入れるから」
 
「分かりました。その時は必ず自分の出した答えを殿下にお伝えします」

 私は今はそれだけで充分だと思った。これから時間をかけて彼女が私と向き合ってくれるというのだから。

 その後は、いつものようにたわいのない会話をした。隣国であった話などを聞きながら楽しいひとときを過ごした。

 彼女が帰った後、私はこれからは変なプライドなど捨てて、彼女と真摯に向き合っていこうと決めた。そして私の思いが叶わなかったとしても、彼女とはこれから先も付き合っていきたいと思っていた。
 尤も、彼女の隣に他の男がいるのは我慢できそうもないのだが、と自分で自分に苦笑した。
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