暴言と浮気を繰り返す婚約者

ヴァンドール

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2話

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 あれから一週間ほど経った頃、ピエール様から連絡が来た。会いに行くと突然、済まなそうな顔をされた。もちろんそれは彼の演技ですが。

「実は来週の舞踏会、知人に頼まれて別の令嬢をエスコートすることになった。だからルシアンは兄上にでもエスコートしてもらってくれ」

(なるほど、そういうことですか)

「わかりました。それではこれで失礼致します」

「お、おいもう帰るのか?」

「? だって、用はそれだけですよね。でしたらこれ以上こちらに留まる理由はありませんので」

「怒っているのか? 俺が他の女をエスコートするから」

「いえ、特には」

(おめでたい男ね。自惚れもいい加減、痛く感じるわ)

「舞踏会の件、承知しました。どうぞご自由になさってください」

「待て、ルシアン」

 呼び止められても、振り返る価値を感じなかったので、そのまま歩みは止めなかった。
 下手に長居して、彼を責めようものなら逆ギレされるだけだ。最近の私は少し、賢くなったようだ。

(自分で自分を褒めてあげたい気分だわ)

 屋敷に戻った私は、真っ先にお兄様の部屋を訪ねた。

「お帰り、ルシアン。ピエール殿との話は済んだのかい?」

 いつもの笑みを浮かべながらお兄様が尋ねた。

 しかし、私は先程の一連の出来事を全て話した。するとお兄様の表情は次第に険しいものへと変わっていった。

「またか! 自分勝手な都合で婚約者を放り出し、あろうことか兄に押し付けるか。彼には貴族としての矜持きょうじというものがないのか。相変わらず、自分勝手な男だな」

「ですので、お兄様。私、ピエール様との婚約を解消したいと考えておりますの」

 きっぱり過ぎる私の言葉に、お兄様は一度目を見開いてから頷いた。

「妥当な判断だ。ルシアン、お前はこれまで充分耐えて来た。そのお前がそう望むなら、私は全力で伯爵家を説得しよう。だが、本当にいいんだな? またいつものように謝って戻って来てもお前は今度こそ、それを跳ね除けられるのだな?」

「勿論です。もう、私は疲れました。何の未練もありません。今度こそ本当に終わりにしたいと心から思います」

「よし、分かった。早速、領地にいる父上にも手紙を送って、我々で対処する」

「いいえ、お兄様。こちらから動くのは少々不味いかもしれません。あの家は面子を大事にします。こちらから解消を切り出せば、何をされるかわかりません。ですから、あちらから『解消したい』と言い出すまで、私はただの『物分かりの良い婚約者』を演じることにいたします」

 面倒な相手には、こうするのが一番だわ。
 私の提案に、お兄様は

「確かに厄介な相手だしな。取り敢えずはそれでいくか」

 と納得した。

「それで、来週の舞踏会はどうするつもりだい?   欠席するか?」

「まさか。最高に着飾って参加いたしますわ。そこで、お兄様にお願いがあるのです」

 私はお兄様に向かってニヤリと笑い、一礼した。

「ピエール様が他の令嬢をエスコートなさるなら、私は私で、自慢のお兄様にエスコートをお願いしたいのです。受けてくださいますか? ロイドお兄様」

 お兄様は一瞬、呆気に取られたような顔をしたが、すぐに立ち上がると、今度はお兄様までニッと意地の悪い顔をされた。

「もちろんだ、私の可愛い妹。当日は、あの愚かな男が自分の選択を死ぬほど後悔するような、最高に美しいお前をエスコートさせてもらうよ」

「はい、ではお兄様、宜しくお願い致しますわ」

(今度の女性にはかなり本気のようだし、その彼女の前で、最後に私の堂々とした態度を見せてあげるわ)
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