【完結】《馬鹿王子は、間違っています》その人は、さすがに無理だと思います!!

のんびり歩く

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愛は重い様です

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「殿下、いい加減にしてくださいませ。本当に婚約破棄いたしますわよ。」

まるでこうなる事が分かりきっていたかの様に、会場の入り口に馬車が停められていて、その事に驚くでもなく、二人は馬車に乗り込んだ。、

「そんな事を言われては、流石に私も傷付くぞ。」

「そう思うなら、時と場合と、言い回しを考えて下さいませ。」

「何を言うんだ、私は、ただずっと探していた諜報員向きの人間を見つけただけだぞ。あの存在感の無さは、なかなか居ない。」

「サミュエラ様もそんな所を認められても、嬉しく無いとおもいますけれど。それならば、小声で教えてくだされば良いでしょう。何故大声で、あんな紛らわしい言い方をするのですか。」

「勝手に勘違いしたのは、あそこに居た者達だろう?私は一度も愛人など言っておらん。」

「ですが、『探し求めていた女性に出会えた』と言いましたわよね?」

レイラの言葉に、ユドルフはニヤリと不敵な笑みをうかべる。

「それは、俺の勘違いだったな。サミュエラには、悪い事をした。」

口ではそう言っているが、悪いとは思っていないと、レイラは知っている。

「ユドルフ様。」

名前で呼ぶと、ユドルフの顔がパッと華やぐ。

「私は、ユドルフ様が王位に就かれても大丈夫な様に、王妃教育をきちんと受けてきたと自負しておりますし、教師の先生方にも太鼓判を押していただいております。ですから、わざわざ馬鹿な真似をするのは、お辞めくださいませ。」

その言葉に、ユドルフは大きく目を見開き、次の瞬間には、ニヤリと笑っていた。

ユドルフは幼い頃、一眼見たレイラに恋をし、既に決まりかけていた婚約を破棄し、かなり強引にレイラを婚約者としていた。
レイラの家は、家柄的には何も問題無かったのだが。その頃病弱で、貴族社会で全く名の知られていなかった娘の、突如降って湧いた王太子との婚約に、同じ年頃の娘達から反発は凄まじく、加えて厳しい王妃教育もあり、レイラは一度だけ、ユドルフを責めた事があった。

『私は王妃になど、なりたくないのに・・・ユドルフ様が王子でなければ、こんな思いしなかったのに・・。」

泣きながら言うレイラに、ユドルフは困った顔をしながらも、泣き止むまで側に居てくれた。

それからユドルフは変わってしまった。
王太子としての振る舞いはどこへやら、自由奔放に振る舞うようになってしまい。おかげで最初は、レイラと婚約したせいだと攻撃は激しくなってしまった。しかし、時がたち、レイラの王妃教育が進むにつれ、しだいに周囲の反応は変わり、今では馬鹿な王太子に見初められた可哀想な婚約者という、哀れみの目で見られる様になっている。

「おや、気付いていたのか。」

「気付かれないと思っていらしたの?」

レイラは知っている。
本来のユドルフが他のどの王子達よりも王に向いている事を。
彼が国を治めれば、この国は今まで以上に安定し、潤うだろう事を。
しかし、ユドルフは、きっと王にはならないだろう。

「レイラを王妃にしたら、今まで以上に君の姿が、他人の目に映る事になるだろう?そんな事、私には耐えられない。だから、もうしばらく付き合ってもらうぞ。」

ユドルフは、クスクスと笑いながら、レイラの腕を強引に引っ張ると、倒れ込んできたレイラを強く抱き寄せ、その背を意味有りげに、ゆっくりと撫で上げた。

最初にレイラの涙を見た時、ユドルフは王位継承権の放棄をしようとした。しかし、優秀過ぎた為に許されなかった。その為、わざと奇行を起こし、王位継承権から外れようとしたのだ。しかし、やり過ぎてはいけない。馬鹿だと思われれば、今度は丁度いい傀儡として、王位に就かせようとする者が現れる。
今後のレイラとの平穏な暮らしの為に、悪評ばかりを広める訳にはいかなかった。
そうしてユドルフは、外では奇行を度々起こしながらも、王太子としての仕事はキチンとこなし、城内と城外で極端な評判を確立した。

二つの極端な評判は、貴族達や民達に馬鹿王子が王になる事の不安を植え付け、それと同時に傀儡には成り得ない能力を示し続けている。
しかしそれも、もうすぐ終わる事だろう。


ユドルフの愛はとても重たい。
王位を放棄するほどに・・・
レイラはきっと、婚姻を結べばユドルフに囲われ、今までの様な自由は無くなるだろう。
しかし、レイラはきっと受け入れる。
そんなユドルフさえも愛しているのだから。
愛していなければ、いくら王太子としての仕事を完璧にこなしているとはいえ、馬鹿王子と呼ばれている相手の為に、辛い王妃教育など続けられない。



「なあ、知っていたか?サミュエラとリオレット、ずっと好き合っていたのに、サミュエラの家がそれを許さなかった事を。」

「ええ、ですが今回の事で、サミュエラ様の名誉を回復した女性として、大切に迎えられるでしょうね。」

そうして、私達はお互いの顔を見てクスクスと笑い合います。

「ユドルフ様、愛していますから、何者になろうと私を妻にして下さいね。」

「レイラ、愛しているから、私が何者になろうとも、見捨てないで一生側にいてくれ。」

「もちろんですわ。」
「もちろんだ。」


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