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大和との再会
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テレビ局の楽屋。
私は椅子に腰掛け、隣に座るヤングがノートパソコンを開くのを眺めていた。画面から流れる音楽が静かな部屋に広がる。
「愛ちゃん、次の曲、こんな感じなんだけど、どうかな?」
ヤングが画面を愛のほうへ向ける。
耳を澄ませた瞬間、一気に幸せな気分になれた。
「めっちゃいいです。さすがヤングさん!」
「愛ちゃんにそう言ってもらえて良かったよ」
彼は少し照れくさそうに笑う。
「私もヤングさんにプロデュースしてもらえて、幸せです」
「俺も幸せだよ」
絡み合う視線。短い沈黙。私は視線を落とし、指先を触る。
その空気を破ったのは彼の真剣な声だった。
「……俺は、愛ちゃんのことを愛してるんだ」
「え……」
言われなくても何となく好意を持たれていることは薄々感じていた。
でもその言葉を言われることを恐れていたのかもしれない。
「あ、ありがとうございます」
思わず礼を言ってしまう。答えを避けるように。
「返事は、まだもらえないのかな?」
「す、すみません。私もヤングさんのこと好きです。でも……昔の恋愛をまだ引きずっていて。まだ一歩を踏み出せないんです。また騙されるんじゃないかって思うと、怖くて」
ヤングは少し寂しげに、それでも優しく頷いた。
「そうだよね。焦らなくていいよ。僕は、いつまでも待ってるから」
愛は立ち上がり、深呼吸をして笑顔をつくった。
「ありがとうございます。そろそろ出番なので」
「行ってらっしゃい」
楽屋を出た瞬間、廊下の向こうから走ってくる人影があった。
「愛ちゃん!大変だよ。大和が」
「大和?」
駆け寄ってきたのは彼がかつて所属していた男性アイドルグループdanger15のメンバーであり彼の親友である太一くんだった。息を切らしながら言葉を続ける。
「大和も今日の音楽番組に出るんだ」
「え?大和が?……でもdanger15は脱退したんだよね?」
「そ、そうなんだけど、ソロデビューするみたい。今ステージで歌ってる。愛ちゃんも見に行こう!」
戸惑う間もなく、太一くんに手を引かれ走り出す。
スタジオに着いたとき、そこには彼の姿が。
実に3年ぶりだった。
彼の姿を目にしたのは。
彼がステージでラップを刻み、ダンスを踊っている。鋭いリズム、流れるような動き。観客の熱気に包まれたその光景を、私はただ見つめていた。
涙が頬を伝う。
――彼だ。心の奥底から湧き出す、この感情。
彼の作る曲は、天才だ。いつも私の心をいとも簡単に掴んでしまう。
言葉、リズム、ダンス。全てが完璧。彼は……天才だ。
「大和は、すごいね……ブランクを感じない」
太一が横で激しく頷いた。
「そうだね。大和は昔からすごい。あんなことがなければ、今も一緒に音楽ができていたのに……大人たちが憎いよ」
「大人たち……? 何も悪くないってどういうこと?」
太一くんの表情が固まる。何かを言いかけて――。
「おい、太一!出番始まるぞ!」
danger15でリーダーを務めるさとるくんの声が飛び込んできた。
「ごめん、愛ちゃん。この話はまた今度」
そう言い残し、太一くんは走り去った。
その場に残された私は胸に渦巻く疑問を抱えたまま、廊下を歩き出す。
――大和は何も悪くない?薬物所持はデマだったの?確かに、大和はタバコすら嫌っていた。薬なんて、なおさら……。じゃあ、なぜ黙っていたの?
考え込んでいたそのとき。
誰かとぶつかった。
「す、すみません」
顔を上げると――そこにいたのは大和だった。
私は椅子に腰掛け、隣に座るヤングがノートパソコンを開くのを眺めていた。画面から流れる音楽が静かな部屋に広がる。
「愛ちゃん、次の曲、こんな感じなんだけど、どうかな?」
ヤングが画面を愛のほうへ向ける。
耳を澄ませた瞬間、一気に幸せな気分になれた。
「めっちゃいいです。さすがヤングさん!」
「愛ちゃんにそう言ってもらえて良かったよ」
彼は少し照れくさそうに笑う。
「私もヤングさんにプロデュースしてもらえて、幸せです」
「俺も幸せだよ」
絡み合う視線。短い沈黙。私は視線を落とし、指先を触る。
その空気を破ったのは彼の真剣な声だった。
「……俺は、愛ちゃんのことを愛してるんだ」
「え……」
言われなくても何となく好意を持たれていることは薄々感じていた。
でもその言葉を言われることを恐れていたのかもしれない。
「あ、ありがとうございます」
思わず礼を言ってしまう。答えを避けるように。
「返事は、まだもらえないのかな?」
「す、すみません。私もヤングさんのこと好きです。でも……昔の恋愛をまだ引きずっていて。まだ一歩を踏み出せないんです。また騙されるんじゃないかって思うと、怖くて」
ヤングは少し寂しげに、それでも優しく頷いた。
「そうだよね。焦らなくていいよ。僕は、いつまでも待ってるから」
愛は立ち上がり、深呼吸をして笑顔をつくった。
「ありがとうございます。そろそろ出番なので」
「行ってらっしゃい」
楽屋を出た瞬間、廊下の向こうから走ってくる人影があった。
「愛ちゃん!大変だよ。大和が」
「大和?」
駆け寄ってきたのは彼がかつて所属していた男性アイドルグループdanger15のメンバーであり彼の親友である太一くんだった。息を切らしながら言葉を続ける。
「大和も今日の音楽番組に出るんだ」
「え?大和が?……でもdanger15は脱退したんだよね?」
「そ、そうなんだけど、ソロデビューするみたい。今ステージで歌ってる。愛ちゃんも見に行こう!」
戸惑う間もなく、太一くんに手を引かれ走り出す。
スタジオに着いたとき、そこには彼の姿が。
実に3年ぶりだった。
彼の姿を目にしたのは。
彼がステージでラップを刻み、ダンスを踊っている。鋭いリズム、流れるような動き。観客の熱気に包まれたその光景を、私はただ見つめていた。
涙が頬を伝う。
――彼だ。心の奥底から湧き出す、この感情。
彼の作る曲は、天才だ。いつも私の心をいとも簡単に掴んでしまう。
言葉、リズム、ダンス。全てが完璧。彼は……天才だ。
「大和は、すごいね……ブランクを感じない」
太一が横で激しく頷いた。
「そうだね。大和は昔からすごい。あんなことがなければ、今も一緒に音楽ができていたのに……大人たちが憎いよ」
「大人たち……? 何も悪くないってどういうこと?」
太一くんの表情が固まる。何かを言いかけて――。
「おい、太一!出番始まるぞ!」
danger15でリーダーを務めるさとるくんの声が飛び込んできた。
「ごめん、愛ちゃん。この話はまた今度」
そう言い残し、太一くんは走り去った。
その場に残された私は胸に渦巻く疑問を抱えたまま、廊下を歩き出す。
――大和は何も悪くない?薬物所持はデマだったの?確かに、大和はタバコすら嫌っていた。薬なんて、なおさら……。じゃあ、なぜ黙っていたの?
考え込んでいたそのとき。
誰かとぶつかった。
「す、すみません」
顔を上げると――そこにいたのは大和だった。
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