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鏡月 四菜は女王様になりたい(4)
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いつもと変わらない一日になるはずだった。
「鏡月さん。ちょっと来てくれる?」
授業が始まる時間帯なのに先生は教室に入るやいなやあたしを呼んだ。
「どうしたんですか、先生。授業始めなくていいんですか?」
「大事な話しがあるの。ちょうどいいわ、このクラス全員にも関係あるかもしれないし」
そう言って先生は教壇に立ち、真剣な表情を浮かべた。
「…今日、木下さんの親御さんから連絡がありました」
木下?
「木下さんはこのクラスでいじめにあっていると、親御さんから聞きました。まず、これは本当ですか?」
あいつ、親に言いやがったのか。
まぁ、親に何と言われようが誤魔化せる。
「木下さんとは毎日一緒に遊ぶ仲なんです。いじめなんてありえません。みんなそう思っています」
まわりの奴らもあたしに合わせるように頷く。
「そうですか」
すると、先生は授業で使うものを入れているバッグの中から紙の束を取り出す。
「……これは木下さんの親御さんから送られてきた写真です」
先生は一枚ずつ紙を黒板に貼り付けていく。
「え…」
「これってさ…」
「何これ」
……どういうこと。
写真には昨日の校舎裏でのあたしと木下が写っている。
そして、あたしが木下の腹を蹴る姿までしっかりと写っていた。
「鏡月さん」
先生に呼ばれ動揺する。
「ここに写っているのはあなたですね?」
「えっ、と…」
「どういうことか、説明してください」
「これは、その」
誰が?
誰が撮った?
あの時、あそこにはあたしと木下しかいなかったはず。
木下が撮ったのか?
どこかにカメラを設置して撮っていたんだ。
絶対そうだ…!
そうじゃないと親がこんなの送ってこれるわけがない…!
どうする?
ここは潔く認めるべきか…?
いや、そもそもいじめはあたしがしていたわけじゃない。
みんなもやっていた。
あたしだけが責められることはない。
「確かに昨日、木下さんを呼び出して暴力を振るいました。それに関しては悪かったと思っています」
「事実なのね。じゃあ、いじめに関してはどうなの?」
「木下さんに嫌がらせをしていました…でも、これはみんなもです!あたしだけじゃありません!」
少し泣きそうな表情を入れながら訴えた。
先生も困った顔をしている。
あとはまわりがカバーをしてくれればいいだけ。
「鏡月さんの話しは分かったわ。他のみんなは?正直に話して」
まわりは静まり、互いが様子を伺っている状態だ。
しばらくはみんな黙っていたが、一人が恐る恐る手を挙げながら口にする。
「あ、あの…」
「落ち着いて。ゆっくりでいいから」
「はい………木下さんに嫌がらせをしていたのは、本当です。でも、私達にも思うことがあって、それで…」
いい、これでいい。
このままいけば…。
「私達はただ、鏡月さんに言われてやってただけで…」
……………は?
「いつも木下さんに買い出しをさせたり、暴力で遊んだりして…私達もやらないと同じ目に遭うと思って…!」
いや、何言ってんのこいつ。
「木下さんに死んでやるって言われて、その時から私、怖くなって……鏡月さんにもうやめようって言ったけど、でもっ…!」
「ありがとう、正直に話してくれて。落ち着いて、涙をふいて…」
泣き崩れる奴をまわりが慰める。
先生もティッシュを持ってきてくれる。
この状況の中、あたしはただ呆然とするしかなかった。
「…鏡月さん、本当のことをちゃんと話してくれる?」
ちゃんとって何?
「…あたしが悪いんですか?」
「理由を聞かないと、何も解決できないでしょ?それに、この事はあなた達と学校側、親御さんと話し合いをする必要もある。だから、ここでちゃんとはっきりさせておきたいの。理解してくれる?」
だから、なんであたしだけなんですか。
あいつらの言うことを信じるわけ?
あいつらは自分を守るために全部あたしに押し付けたんですよ?
ちゃんと見ろよ、あいつらの顔。
あたしを見つめるあの嬉しそうな顔を。
こんなところで恥をかかせやがって。
あたしのことを舐めてるの?
ムカつく。
ムカつく。
ムカつく。
「……先生、これってあたしの親に連絡したんですか?」
「ええ。ここに来る前に連絡を入れたけど…」
あたしは鏡月財閥の社長の娘よ。
いじめの事実なんてお父様の力を使えば表沙汰にならない。
こんなのすぐに消してくれるはず。
こういうことよ。
あたしがいじめていた事実は消されてあいつらに降りかかるのよ。
あたしを裏切るからこういう事になるのよ。
「そうですか。何か言っていましたか」
「後から代理の人とか言う人から連絡をいただいて、こちらとは関係のない人ですって言われたんだけど……鏡月さんの番号で間違いないはずなんだけど、どういうことなのかしら?」
こっちのセリフなんだけど。
どういうこと。
関係がないって、いや、あるでしょ。
あたしは鏡月家の養子で、
今日まで鏡月家で生活をして、
まわりがあたしを囲んで、
毎日楽しく過ごして、
遊んで…。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
きっと代理の人は黒田のことだ。
黒田が伝えたということは、
お父様に言われたということ。
つまり、
あたしはお父様から見捨てられた…?
なんで?
あたしがいじめていたから?
問題を起こしたから?
でもお父様の力で何とか出来るでしょ?
なのになんで?
「…なんで、なんで………?」
「鏡月さん?とりあえず、場所を変えてお話ししましょう。他のみんなは自習をしててください」
見捨てられた。
お父様に見捨てられた。
また捨てられた。
捨てられてばかり。
髪色のせい?
性格?
それとも顔?
なんであたしが苦しまないといけないわけ?
お金持ちになって、
みんなに囲まれて、
ただまわりの中心で笑って。
女王の地位を手に入れたのに。
「じゃあ鏡月さん、向こうの教室に移動しましょう」
あたし、どうなるの?
お父様はあたしを助けてくれないんだもん。
もうどうにも出来ない。
まるで弱者になったみたいだ。
「鏡月さん!?」
真っ赤な血吹雪で首元が染まる。
綺麗に整えられた鋭い爪からキラキラと光るものが落ちていく。
悲鳴が響きわたる。
自分が楽しくなければ意味がない。
こんな屈辱を与えられたまま生きたくない。
こんな事なら、
女王様になれないのなら…。
赤く染められた爪に美しさは残っていなかった。
「鏡月さん。ちょっと来てくれる?」
授業が始まる時間帯なのに先生は教室に入るやいなやあたしを呼んだ。
「どうしたんですか、先生。授業始めなくていいんですか?」
「大事な話しがあるの。ちょうどいいわ、このクラス全員にも関係あるかもしれないし」
そう言って先生は教壇に立ち、真剣な表情を浮かべた。
「…今日、木下さんの親御さんから連絡がありました」
木下?
「木下さんはこのクラスでいじめにあっていると、親御さんから聞きました。まず、これは本当ですか?」
あいつ、親に言いやがったのか。
まぁ、親に何と言われようが誤魔化せる。
「木下さんとは毎日一緒に遊ぶ仲なんです。いじめなんてありえません。みんなそう思っています」
まわりの奴らもあたしに合わせるように頷く。
「そうですか」
すると、先生は授業で使うものを入れているバッグの中から紙の束を取り出す。
「……これは木下さんの親御さんから送られてきた写真です」
先生は一枚ずつ紙を黒板に貼り付けていく。
「え…」
「これってさ…」
「何これ」
……どういうこと。
写真には昨日の校舎裏でのあたしと木下が写っている。
そして、あたしが木下の腹を蹴る姿までしっかりと写っていた。
「鏡月さん」
先生に呼ばれ動揺する。
「ここに写っているのはあなたですね?」
「えっ、と…」
「どういうことか、説明してください」
「これは、その」
誰が?
誰が撮った?
あの時、あそこにはあたしと木下しかいなかったはず。
木下が撮ったのか?
どこかにカメラを設置して撮っていたんだ。
絶対そうだ…!
そうじゃないと親がこんなの送ってこれるわけがない…!
どうする?
ここは潔く認めるべきか…?
いや、そもそもいじめはあたしがしていたわけじゃない。
みんなもやっていた。
あたしだけが責められることはない。
「確かに昨日、木下さんを呼び出して暴力を振るいました。それに関しては悪かったと思っています」
「事実なのね。じゃあ、いじめに関してはどうなの?」
「木下さんに嫌がらせをしていました…でも、これはみんなもです!あたしだけじゃありません!」
少し泣きそうな表情を入れながら訴えた。
先生も困った顔をしている。
あとはまわりがカバーをしてくれればいいだけ。
「鏡月さんの話しは分かったわ。他のみんなは?正直に話して」
まわりは静まり、互いが様子を伺っている状態だ。
しばらくはみんな黙っていたが、一人が恐る恐る手を挙げながら口にする。
「あ、あの…」
「落ち着いて。ゆっくりでいいから」
「はい………木下さんに嫌がらせをしていたのは、本当です。でも、私達にも思うことがあって、それで…」
いい、これでいい。
このままいけば…。
「私達はただ、鏡月さんに言われてやってただけで…」
……………は?
「いつも木下さんに買い出しをさせたり、暴力で遊んだりして…私達もやらないと同じ目に遭うと思って…!」
いや、何言ってんのこいつ。
「木下さんに死んでやるって言われて、その時から私、怖くなって……鏡月さんにもうやめようって言ったけど、でもっ…!」
「ありがとう、正直に話してくれて。落ち着いて、涙をふいて…」
泣き崩れる奴をまわりが慰める。
先生もティッシュを持ってきてくれる。
この状況の中、あたしはただ呆然とするしかなかった。
「…鏡月さん、本当のことをちゃんと話してくれる?」
ちゃんとって何?
「…あたしが悪いんですか?」
「理由を聞かないと、何も解決できないでしょ?それに、この事はあなた達と学校側、親御さんと話し合いをする必要もある。だから、ここでちゃんとはっきりさせておきたいの。理解してくれる?」
だから、なんであたしだけなんですか。
あいつらの言うことを信じるわけ?
あいつらは自分を守るために全部あたしに押し付けたんですよ?
ちゃんと見ろよ、あいつらの顔。
あたしを見つめるあの嬉しそうな顔を。
こんなところで恥をかかせやがって。
あたしのことを舐めてるの?
ムカつく。
ムカつく。
ムカつく。
「……先生、これってあたしの親に連絡したんですか?」
「ええ。ここに来る前に連絡を入れたけど…」
あたしは鏡月財閥の社長の娘よ。
いじめの事実なんてお父様の力を使えば表沙汰にならない。
こんなのすぐに消してくれるはず。
こういうことよ。
あたしがいじめていた事実は消されてあいつらに降りかかるのよ。
あたしを裏切るからこういう事になるのよ。
「そうですか。何か言っていましたか」
「後から代理の人とか言う人から連絡をいただいて、こちらとは関係のない人ですって言われたんだけど……鏡月さんの番号で間違いないはずなんだけど、どういうことなのかしら?」
こっちのセリフなんだけど。
どういうこと。
関係がないって、いや、あるでしょ。
あたしは鏡月家の養子で、
今日まで鏡月家で生活をして、
まわりがあたしを囲んで、
毎日楽しく過ごして、
遊んで…。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
きっと代理の人は黒田のことだ。
黒田が伝えたということは、
お父様に言われたということ。
つまり、
あたしはお父様から見捨てられた…?
なんで?
あたしがいじめていたから?
問題を起こしたから?
でもお父様の力で何とか出来るでしょ?
なのになんで?
「…なんで、なんで………?」
「鏡月さん?とりあえず、場所を変えてお話ししましょう。他のみんなは自習をしててください」
見捨てられた。
お父様に見捨てられた。
また捨てられた。
捨てられてばかり。
髪色のせい?
性格?
それとも顔?
なんであたしが苦しまないといけないわけ?
お金持ちになって、
みんなに囲まれて、
ただまわりの中心で笑って。
女王の地位を手に入れたのに。
「じゃあ鏡月さん、向こうの教室に移動しましょう」
あたし、どうなるの?
お父様はあたしを助けてくれないんだもん。
もうどうにも出来ない。
まるで弱者になったみたいだ。
「鏡月さん!?」
真っ赤な血吹雪で首元が染まる。
綺麗に整えられた鋭い爪からキラキラと光るものが落ちていく。
悲鳴が響きわたる。
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