十番目の愛

夜宮 咲

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歪んだ愛の結末は

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私は言葉を呑んだ。
目の前で笑みを浮かべる少女の十番目に対する執着心に若干恐怖を覚える。


「お姉様、殺したでしょ?一お兄様のこと」


ゼロに視線を向けた。
ゼロはこちらに見向きもせず、椅子に腰をかけ、何も喋らずこちらの会話を聞いてる。
再び十一歌に視線を戻し、息を吐く。


「えぇ、刺したわ。まさか誰かに見られているとは思わなかったけれど」

「見ちゃったのはたまたまなんだけどね」

「それで、あなたの服が血塗れなのはどうして?もしかして、それも私になるための行動なのかしら」

「そう!容姿だけじゃダメならそれ以外も真似しないとね。ず~っと、悩んでいたんだけど、ようやく答えが見つかったの」

「その答えが、それってこと…」

「お姉様なんでしょ?お兄様やお姉様を怪我させたり、殺したのは。十一歌、全然気がつかなかった!でも、お父様は知ってたんだよね。だから何もなかったかのように処理したんだよね」


すると、十一歌は急に私の側まで近寄り血で赤く染まった手で私の手を強く握った。


「いいなぁ、お姉様。人を殺したのに、それでもお父様に愛されているんだから」

「…愛?」

「だから十一歌もお姉様と同じ事をしたの。まず、一お兄様が倒れているところにね、九都お兄様がいたから、後ろから殴った。それから、すぐにお父様のところに行こうと思ったんだけど、黒島に邪魔されそうになったから、ついでにナイフで刺した殺した。黒島は十一歌のこと、嫌いなの。いつも冷たい目で睨んでくるし、お父様に会わせてくれないし……だから十一歌も黒島のこと大っ嫌いだったの!!嫌な存在だった!!ナイフで刺したときのあの快感!!」


十一歌は興奮気味で人を刺した時の状況を語る。
そんな彼女を見て呆れる。だんだん馬鹿に見えてきた。


「結局、何が言いたいの?」

「え」

「あなたがお父様を異常なほど愛していることはわかった。そして、十番目に執着していることも。それで、あなたは結局どうしたいの?」

「だからっ、もともと十一歌が十番目になるはずだったんだから、本当は十一歌が十番目なの!お姉様は十一歌のものを奪ったの!だから返してって、さっきも言ったでしょ!?」

「いいわよ」

「へ?」

「そんなに十番目になりたいのなら、なればいい。私はそこにこだわっていないから」

「い、いいの?本当に?」

「勝手にすれば。でも、あなたはその後のことを考えたことがある?」

「その後…?」

「十番目を返してもらって、念願の十番目になったら本当にお父様に愛されるの?」

「えっ……だ、だって、お姉様は…お姉様だけだもん!お父様に可愛がってもらえて、何でも許されて…」

「あと、私はお兄様とお姉様を殺してない」

「えっ!?」

「一番目は除いて…他の人は、勝手に追い込まれただけ。私が直接何かをしたわけではない」

「……」

「まぁ、それでも人を刺したことに変わりはないけど。あなたは、そんな事も知らずに自分の欲のために人を殺したのね…しかも、それを興奮気味にペラペラと話して。ここはあなたの大好きなお父様の書斎であることを忘れているのかしら?」


十一歌の顔が青ざめる。
この会話をずっと黙って聞いていたゼロの方に振り向く。すると、いつの間にかこちら側に向きを変えていたゼロもこちらをジッと見つめていた。
冷酷とも言える視線を向けられた十一歌は動揺した。


「お父様、十一……あ、十番目になってもいいってお姉様が!だから、今日から十和……十和って、呼んでくれるよね?」

「……」

「お父様…?」

「…あの時、黒島の言うことを聞いておけばよかったな」


ゼロは重い腰を持ち上げるように椅子から立ち上がった。胸の前で腕を組み、書斎にある本棚に並ぶ本を見ながらゆっくり歩く。


「私がお前を引き取った理由を言っただろう。覚えているか?」

「え、っと…」

「私に興味がなかったからだ。私に何かを期待されても困る、無駄。その点において、お前は都合が良かった。こちらからすれば面倒がなく楽だからな。
だから黒島からお前の情報を聞いたが、気にしなかったんだが…」


ゼロは十一歌の前に立ち、見下ろした。


「……お前は"おかしい"ままだった」


ゼロの一言を聞き、十一歌の顔が真っ青になった。そして、力が抜けたようにその場にストンと崩れ落ちた。


「おかしい……パパも、ママも言ってた…黒島も………お父様にも…」


十一歌はよく分からないことをブツブツと呟いていた。
すると、突然ナイフを握りしめて立ち上がると、笑いながら泣き叫んだ。


「あははははははっ!せっかく十番目になれたのにっ、全然意味なかったぁ…!!頑張ったのに…頑張って、愛されようとしたのにっ……」


首元にナイフの刃が触れる。
十一歌はゼロに視線を向けた。


「…お父様、大好き」


その瞬間、十一歌の首に赤い線が走った。床や壁に飛び散る。
手からナイフが離れ、十一歌はその場に倒れた。
頬に涙がながれていたが、その表情はどこか幸せそうだった。
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