Love Potion

煉彩

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真実 11

 あ……れ……?
 私、寝ちゃったの?

 目を開けると、加賀宮さんのベッドの中だった。
 ちゃんと布団が掛けられてる。隣に彼は居なかった。

 今、何時なんだろう?

 彼の家の時計を見ると
「えっ!もう十九時過ぎてる!」
 家に帰らなきゃ。孝介が帰って来ちゃう。

 急いで帰宅する準備をしようとしたが――。

 あっ、そうだった。
 今日は実家に泊まるって言ってたっけ。
 浮気相手美和さんの家か実家なのか、本当のことはわからないけど。

 はぁと呼吸を整えた時だった。

「おはよ」
 声がした方向を見ると、加賀宮さんが上半身裸で立っていた。
 タオルで髪の毛を拭いている。
 シャワー浴びたのかな。

「あの……。もう私には用はないんでしょ?帰るね」

 ベッドから降りようとしたが
「ダメ。まだ帰さない。聞きたいことあるし。それに今日、孝介あいつ帰って来ないと思うよ?」

 まただ。どうしてそんなことまで知っているんだろう。
 彼が納得する返事をしなきゃ、いつまでも帰してくれないような気がした。

「なに?私に聞きたいことって」

「なんで俺の名前知ってんの?ま、会社名でネット検索したら普通に出てくるんだけど」

 名前?
 あぁ、さっき下の名前で呼んだから気になってるのかな。

 先程までの情事を思い出し、一瞬恥ずかしくなったが、加賀宮さんも今は普通に話をしてくれそうな雰囲気だ。

「そう。ネットで調べたの。あなたが家に来た時に、会社のことを孝介が話してたでしょ。だからそれを手がかりに。加賀宮さんは私のことを昔から知っているみたいだけど、私はあなたと接した覚えがないの。あなたはどこで私のことを知ったとか、全然話してくれないし。私だって過去にあなたに会っているのなら、思い出したい。調べたのは、あなたのことを知りたかったから」

 ただ単純な理由だった。
 下の名前を聞けば、何か手がかりがあるような気がしたから。
「隠してたって孝介あいつと関わることになった以上、いつかはバレると思ってたから。んで、俺のこと何かわかったの?」
 
 髪の毛を拭いていたタオルをポイっと洗濯カゴの中に投げながら、彼は私に問いかけた。

「……。わからない」
 正直に答えるしかないよね。
 変な嘘をついても、この人には通用しなさそうだ。

「そっか」
 彼はそう一言呟いた後
「髪の毛、ドライヤーかけてくる」
 そう言って洗面台へと向かった。

 今、一瞬、とても悲しそうな顔してた。
 私だって過去にあなたと出逢っているのなら、思い出したいよ。

 どうして教えてくれないの?

 しばらくして――。
 彼が戻って来た。

 あれ?私服?
 黒いTシャツにジーンズ。
 これからどこかに出かけるのだろうか。

「美月。出かけるよ。準備して?」

「えっ!?どこに?」

「腹減った。飯食べに行こ?」
 
 全く予想していなかった彼の誘い。
 この状況でよくそんなこと言えるわね。
 私、下着姿なんですけど。
 シャワーだって浴びたいし、それに……。

「無理。行かない」

「なんで?」

「どうしても!!」

「命令って言っても?」

 命令。
 そう、彼と私の契約において、彼の命令は絶対。
 だけど――。

「シャワーだって浴びたいし、下着が濡れちゃってて気持ち悪いの!もちろん、着替えなんて持ってきてないし。こんなんで出かけたくない!」

 なんでこんなこと素直にカミングアウトしてるんだろ。
 さすがの加賀宮さんだって引くよね。
 いっそのこと、私と話したくないと思うくらい、嫌いになってくれれば良いのに。

 私の強めの発言に彼は
「ハハッ」
 声を出して笑った。

「っ……。なんだよ。それ。そんな理由かよっ」
 アハハハと彼はまだ笑っている。

 そんなに面白いこと?

「マジヤバい。ツボった……」
 
 こんなに笑うことができる人なんだ。
 なんか人間離れしているような人だと思ってたけど。感情も読めないし。

「わかったよ。でも腹減った。そうだな、デリバリーなら良いだろ?」

 どうして加賀宮さんと食事なんか。
 うーん、私もお腹空いたかも。
 加賀宮さんの笑っているところ見たら、なんか安心した。なんて単純な思考なんだろう。
 
「あっ、ごめんなさい。やっぱり無理。お金、持ってきてない」
 
 私のお財布の中、千円ちょっとでデリバリーなんて頼めるわけがなかった。
 
 一日で千円使ったなんて孝介が知ったら、なんて言われるか。
 それにこの前、加賀宮さんに奢ってもらったばかりだ。加賀宮さんがお金持ちだからって、出してもらう義理はない。

「はっ?金は別に気にしなくていいんだけど。俺が出す。そんなに俺と飯が食べたくない?」

 命令と言われても拒否を続けたので、彼のご機嫌が斜めになってしまった。

「違う。この前も奢ってもらったし。嫌なわけじゃない。私、本当にお金持ってないの」

 ベッドサイドにポスっと彼は座り
「BARで会った時、金も管理されてるって言ってたもんな」
 そう言った。
 私が話したこと、覚えてるんだ。

「そう。この前、出張で帰って来なかった時に一週間の食費として渡されたのが千円で。私のこと、そんなに憎いのかな」

「はぁ?一週間千円って、一食いくらだよ?それ、経済的DVだぞ」
 加賀宮さんは眉をひそめた。

「うん」
 経済的DVか。孝介はDVそんなことしている認識はないんだろうな。

「とりあえず、服着ろよ。そのままだとまた襲うよ」
 布団で隠してはいるが、まだ下着姿だった。

「シャワーでも浴びてくれば?なんか食べたいものある?適当に注文しとくから」

「えっ、特に何もないよ。加賀宮さんの食べたいもので……」

「わかった」

 なにこれ。普通の会話ができている。

 自分でも加賀宮さんとの関係がよくわからない。
 優しいと思ってしまうことも正直あるけど、さっきみたいに悪魔のように感じることもあるから。
 シャワーを浴びながらそんなことを考える。
 
 部屋は汚いのに、水回りは綺麗だな。
 てっきりカビだらけだと思ってたけど、掃除とかちゃんとしてるんだ。

 それとも家政婦さんとか雇ってるのかな?
 いや、部屋の中とか見るとそんな雰囲気ではないな。
 食事もほとんど外食だって言ってたよね。

「タオル、ありがとう」

 私が髪の毛を乾かし部屋へ戻ると、彼はスマホを見ながらベッドの上で寛いでいた。
 
 こういう姿見ると、年相応のお兄さんなんだけどな。イケメンには違いないけど。
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