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「えっ?そうなの。うん。わかった。それは良かった。美月でも役に立って。また何かあったら教えて」
お義父さんが何て話してるのかわからないけど、悪い知らせではないみたい。
電話が終わり
「お前、今日本当に仕事になったんだって?わざわざ予定を変えてもらってすみませんでしたって佐伯さんから連絡が来てたらしい。佐伯さんもどうして俺じゃなくて、父さんにお礼を伝えてほしいなんて言ったんだろうな。ま、いいや。お前のこと、向こうの会社が褒めてたらしいし。父さんも喜んでたから」
亜蘭さんが気を遣ってくれたんだ。
きっと孝介に直接連絡しなかったのは、上に話を通しておいた方が良いと思ったから?かな。
何にしても、そこまで考えてくれて助かった。
孝介は
「飯より先に風呂入るから。準備しとけよ」
そう言って自室に向かった。
はぁと溜め込んだ空気を外に出したくなった。が、いけない。
機嫌が良いうちに、お風呂と夕ご飯の準備しなきゃ。
次の日――。
孝介は仕事に出かけた。
「今日から出張だから、数日帰って来ない」
その一言だけ伝え、パタンと扉が閉まった。
ビジネスバッグ一つだけ持って数日も出張とか、私って本当にバカにされてる。
どうせ美和さんのところにでも泊まるのだろう。
今日は私もお休みだ。
昨日できなかったカフェメニューについてのメモをまとめて、それから――。
どうしても確かめておきたいことがあった。
加賀宮さんが私を助けてくれた迅くんかどうか。
もしも迅くんだったら、謝りたい。
ケガまでして私を助けてくれたのに、私はショックからかその部分だけ記憶を無くしてしまって。
当時の彼はどんなことを思ったんだろう。
加賀宮さんが迅くんだったら、大人になっても私のことを覚えててくれたってこと?BARで会った時、Love Potionなんてお酒を飲ませたのは、あの時の復讐?
いや、私の知っている迅くんだったら、そんなことするわけない。
やらなければならないことを終わらせた後、私はスマホを取り出し、緊張しながらも加賀宮さんに電話をかけた。
<プルルル……。プルルル……。プルルル……>
なかなか出ない。
まさか、もう仕事に復帰したとか?
彼ならやりかねない。
<もしもし?>
あっ、出てくれた。
「もしもし。今、大丈夫?」
<大丈夫。昨日はありがとな。おかげで元気になったよ>
声音は元気そうだ。
「まさかもう仕事してるわけじゃないよね?」
<いや。まぁ、熱も下がったっぽいし、出社したら、亜蘭に強制的に止められた。今日は休めって。特別俺が対応しなきゃいけない案件はないし、今から帰るところだけど>
どうしよう。会いたい。少しだけなら負担にならないかな。会いたいって人に伝えるの、こんなに緊張したっけ?
すぅと深呼吸した。
「ちょっとだけでも良いから会えないかな?」
<どうした?何かあったのか?>
「あの……。ただ、加賀宮さんに会いたいだけ」
彼の言葉が止まった。
<美月から会いたいって珍しいな。俺のこと、心配してくれてんの?だったらずっと風邪ひいてた方が良いな>
いつもの彼のペースだ。
「心配はしてるよ」
素直にならなきゃ。
<わかった。じゃあ、今から迎えに行くから。どっか飯でも食べに行く?昨日のお礼もしたい>
ご飯食べてる余裕はないかも。
「ううん。話があるの。あなたのアパートに行きたい」
<わかった。じゃあ、着いたらまた連絡する>
彼との電話が終わり、ソファに座り込む。
私が<昔の名字教えて>って言ったら、教えてくれるかな。
いや、加賀宮だって言われたらそこで終わりだ。
私の知ってる迅くんじゃないかもしれない、ただ名前が一緒なだけの可能性もある。
あっ、もし、本当の<迅くん>だったら、私のこと守ってくれた時に噛まれた傷があるかも。
腰に傷があったら確証できる。
どうやって見よう。まさか急に<脱いで?>とも言えない。
そんなことを考えていると、加賀宮さんから連絡があった。
「ありがとう」
迎えに来てくれた加賀宮さんに挨拶をしながら車に乗る。
「いえ、お嬢様。これからどちらに?ていうか、話ってなに?」
元気そうで良かった。
私は彼の額に手のひらを当てる。そんなに熱くない。一日で本当に回復したんだ。
「美月。手、冷たい」
彼が眉をひそめる。
「俺の家で良いの?」
「うん」
そのまま彼のアパートへ向かった。
お義父さんが何て話してるのかわからないけど、悪い知らせではないみたい。
電話が終わり
「お前、今日本当に仕事になったんだって?わざわざ予定を変えてもらってすみませんでしたって佐伯さんから連絡が来てたらしい。佐伯さんもどうして俺じゃなくて、父さんにお礼を伝えてほしいなんて言ったんだろうな。ま、いいや。お前のこと、向こうの会社が褒めてたらしいし。父さんも喜んでたから」
亜蘭さんが気を遣ってくれたんだ。
きっと孝介に直接連絡しなかったのは、上に話を通しておいた方が良いと思ったから?かな。
何にしても、そこまで考えてくれて助かった。
孝介は
「飯より先に風呂入るから。準備しとけよ」
そう言って自室に向かった。
はぁと溜め込んだ空気を外に出したくなった。が、いけない。
機嫌が良いうちに、お風呂と夕ご飯の準備しなきゃ。
次の日――。
孝介は仕事に出かけた。
「今日から出張だから、数日帰って来ない」
その一言だけ伝え、パタンと扉が閉まった。
ビジネスバッグ一つだけ持って数日も出張とか、私って本当にバカにされてる。
どうせ美和さんのところにでも泊まるのだろう。
今日は私もお休みだ。
昨日できなかったカフェメニューについてのメモをまとめて、それから――。
どうしても確かめておきたいことがあった。
加賀宮さんが私を助けてくれた迅くんかどうか。
もしも迅くんだったら、謝りたい。
ケガまでして私を助けてくれたのに、私はショックからかその部分だけ記憶を無くしてしまって。
当時の彼はどんなことを思ったんだろう。
加賀宮さんが迅くんだったら、大人になっても私のことを覚えててくれたってこと?BARで会った時、Love Potionなんてお酒を飲ませたのは、あの時の復讐?
いや、私の知っている迅くんだったら、そんなことするわけない。
やらなければならないことを終わらせた後、私はスマホを取り出し、緊張しながらも加賀宮さんに電話をかけた。
<プルルル……。プルルル……。プルルル……>
なかなか出ない。
まさか、もう仕事に復帰したとか?
彼ならやりかねない。
<もしもし?>
あっ、出てくれた。
「もしもし。今、大丈夫?」
<大丈夫。昨日はありがとな。おかげで元気になったよ>
声音は元気そうだ。
「まさかもう仕事してるわけじゃないよね?」
<いや。まぁ、熱も下がったっぽいし、出社したら、亜蘭に強制的に止められた。今日は休めって。特別俺が対応しなきゃいけない案件はないし、今から帰るところだけど>
どうしよう。会いたい。少しだけなら負担にならないかな。会いたいって人に伝えるの、こんなに緊張したっけ?
すぅと深呼吸した。
「ちょっとだけでも良いから会えないかな?」
<どうした?何かあったのか?>
「あの……。ただ、加賀宮さんに会いたいだけ」
彼の言葉が止まった。
<美月から会いたいって珍しいな。俺のこと、心配してくれてんの?だったらずっと風邪ひいてた方が良いな>
いつもの彼のペースだ。
「心配はしてるよ」
素直にならなきゃ。
<わかった。じゃあ、今から迎えに行くから。どっか飯でも食べに行く?昨日のお礼もしたい>
ご飯食べてる余裕はないかも。
「ううん。話があるの。あなたのアパートに行きたい」
<わかった。じゃあ、着いたらまた連絡する>
彼との電話が終わり、ソファに座り込む。
私が<昔の名字教えて>って言ったら、教えてくれるかな。
いや、加賀宮だって言われたらそこで終わりだ。
私の知ってる迅くんじゃないかもしれない、ただ名前が一緒なだけの可能性もある。
あっ、もし、本当の<迅くん>だったら、私のこと守ってくれた時に噛まれた傷があるかも。
腰に傷があったら確証できる。
どうやって見よう。まさか急に<脱いで?>とも言えない。
そんなことを考えていると、加賀宮さんから連絡があった。
「ありがとう」
迎えに来てくれた加賀宮さんに挨拶をしながら車に乗る。
「いえ、お嬢様。これからどちらに?ていうか、話ってなに?」
元気そうで良かった。
私は彼の額に手のひらを当てる。そんなに熱くない。一日で本当に回復したんだ。
「美月。手、冷たい」
彼が眉をひそめる。
「俺の家で良いの?」
「うん」
そのまま彼のアパートへ向かった。
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