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決意 4
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「わかりました。加賀宮さんに怒られない程度でしたらお話しますよ。あと俺、美月さんと同い年なので、敬語じゃなくても大丈夫です」
「えっ?同い年なんですか!?」
私よりも若く見える。
「えっ。そんなに老けて見えます?俺」
「いえ、逆です。もっと若く見えます!」
良かった、と彼は笑った。
「加賀宮さんと初めて会ったのは、高校生くらいの時でした。当時、俺もやんちゃしてて。通学してた高校も荒れてたので、しょっちゅうケンカとかしてました」
今の亜蘭さんからじゃ、全く想像がつかない。
「あの時はなりふり構わず、誰にでもケンカを売っていたので、上級生から目を付けられることも多く。自業自得なんですが、呼び出されてその場所に行ったら、俺一人に対して五、六人に襲われて。ボコボコにされて、もう抵抗する気力も失せて。意識がなくなりそうになった時に、加賀宮さんが助けてくれたんです」
迅くん、他人には興味がないって雰囲気だけど、優しいところあるんだ。
「その後、俺は――。加賀宮さんのパシリになりました」
「えっ?」
命の恩人とか、亜蘭さんにとってのヒーローとかじゃなく!?
「言い方、悪いですよね。実際その通りなんです。正直に言えば、彼に逆らえなかった。力でも頭でも加賀宮さんの方が上だったし。最初はビクビクしながら、彼に従ってましたよ。でも一緒にいる時間が長くなればなるほど、彼の人間性に惹かれていきました。歪んでいるところもあるけど」
亜蘭さんの言っていることが、なんとなく想像できる。
「うーん。彼の本質は俺でもわからないところがありますが、あの時、美月さんの存在がかなり大きなものとなっていたようです」
あの時、もしも迅くんとずっと一緒に居ることができたら。何かが変わっていたのかな。
「大変な時に、迅くんの部分だけ記憶をなくしちゃって。彼はあの時、一人で辛かったのに。私は何もすることができなくて」
「記憶のことは仕方がないと思います。ほら?大きくなっていた存在ほど、何かの衝撃があった時にその部分だけ失ってしまうことがあるって、どこかの専門家が言ってませんでしたっけ?美月さんにとっても加賀宮さんの存在は、大きなものになっていたんじゃないかな」
幼い頃の私は、迅くんのことが大好きだった。彼と会うのが楽しみだった。
小さかったけど、初恋の人だもんね。
「久しぶりの再会の時、変なお酒を飲ませてここへ連れ込んで、あんなことしなくたって。亜蘭さんも知ってますよね?」
「ええ。あれは俺もドン引き……。あ、言わないでくださいよ?彼にとっては歪んでいる愛情表現と思ってあげてください」
いきなりあんなことされたら嫌いになるよ。
脅されてたし……。
亜蘭さんとこんなに長い間話したことなかったけど、話しやすい。同い年だからかな。
「わかりました」
私が返事をすると、彼は口角を上げてとても柔らかい表情をしてくれた。
亜蘭さんに自宅まで送ってもらい、車から降りようとシートベルトを外す。
「今日はありがとうございました。明日はゆっくり休んでください」
「はい。こちらこそありがとうございました」
亜蘭さんに軽く手を振り、帰宅した。
誰も居ない部屋。
明日は孝介が帰ってくるんだろうな。
そんな当たり前なことをつい<嫌だな>と感じてしまう。
でも――。
迅くんや亜蘭さんが協力してくれる。
とりあえず、隠しカメラを設置しなきゃ。
寝室とリビングに取り付けることにした。
次の日。
朝から孝介が帰ってくるかと思って身構えていた。けれど、彼が帰ってくることはなかった。
しかし<ピンポーン>というインターホンが鳴り、画面に映る人物を確認する。
家政婦の美和さんだ。
美和さんが来るってことは、今日の夜には帰ってくるってことだよね。
<こんにちは>
「こんにちは。今、開けます。玄関も開けておきますね」
美和さんと二人きりの状態は、浮気がわかってからは今ではしんどい。
エントランスの鍵と玄関の鍵を開けて部屋で待っていると
「お邪魔します」
美和さんが部屋に入ってきた。
「よろしくお願いします。私は今日、リビングでちょっと作業をしていますので。何かありましたら、声をかけてください」
一瞬、美和さんが考え込んだように見えた。
「はい。わかりました。それでは、お掃除から始めますね」
何をするんだろうって顔してたな。
私もいちいち気にしないようにしないと。
私がさっき掃除はしたばかり。
だけど、<美和さん>が掃除をしてくれたって方が、孝介にとって安心できる部屋になるだろう。
「私がさっき掃除したので」なんて勝手に美和さんの仕事をなくしたら、告げ口されて「どうしてそんなことをしたんだ!」って怒鳴られるだけだ。
私はリビングのソファに座り、ベガのメニューについて考えていた。
事前に仕込みができて、ある程度ボリュームがあって、だけど簡単に食べられるもの。
うーんと考えていると
「美月さん。すみません。相談したいことがあるんですけど」
美和さんに話しかけられた。
美和さんが私に相談したいこと?
「えっ?同い年なんですか!?」
私よりも若く見える。
「えっ。そんなに老けて見えます?俺」
「いえ、逆です。もっと若く見えます!」
良かった、と彼は笑った。
「加賀宮さんと初めて会ったのは、高校生くらいの時でした。当時、俺もやんちゃしてて。通学してた高校も荒れてたので、しょっちゅうケンカとかしてました」
今の亜蘭さんからじゃ、全く想像がつかない。
「あの時はなりふり構わず、誰にでもケンカを売っていたので、上級生から目を付けられることも多く。自業自得なんですが、呼び出されてその場所に行ったら、俺一人に対して五、六人に襲われて。ボコボコにされて、もう抵抗する気力も失せて。意識がなくなりそうになった時に、加賀宮さんが助けてくれたんです」
迅くん、他人には興味がないって雰囲気だけど、優しいところあるんだ。
「その後、俺は――。加賀宮さんのパシリになりました」
「えっ?」
命の恩人とか、亜蘭さんにとってのヒーローとかじゃなく!?
「言い方、悪いですよね。実際その通りなんです。正直に言えば、彼に逆らえなかった。力でも頭でも加賀宮さんの方が上だったし。最初はビクビクしながら、彼に従ってましたよ。でも一緒にいる時間が長くなればなるほど、彼の人間性に惹かれていきました。歪んでいるところもあるけど」
亜蘭さんの言っていることが、なんとなく想像できる。
「うーん。彼の本質は俺でもわからないところがありますが、あの時、美月さんの存在がかなり大きなものとなっていたようです」
あの時、もしも迅くんとずっと一緒に居ることができたら。何かが変わっていたのかな。
「大変な時に、迅くんの部分だけ記憶をなくしちゃって。彼はあの時、一人で辛かったのに。私は何もすることができなくて」
「記憶のことは仕方がないと思います。ほら?大きくなっていた存在ほど、何かの衝撃があった時にその部分だけ失ってしまうことがあるって、どこかの専門家が言ってませんでしたっけ?美月さんにとっても加賀宮さんの存在は、大きなものになっていたんじゃないかな」
幼い頃の私は、迅くんのことが大好きだった。彼と会うのが楽しみだった。
小さかったけど、初恋の人だもんね。
「久しぶりの再会の時、変なお酒を飲ませてここへ連れ込んで、あんなことしなくたって。亜蘭さんも知ってますよね?」
「ええ。あれは俺もドン引き……。あ、言わないでくださいよ?彼にとっては歪んでいる愛情表現と思ってあげてください」
いきなりあんなことされたら嫌いになるよ。
脅されてたし……。
亜蘭さんとこんなに長い間話したことなかったけど、話しやすい。同い年だからかな。
「わかりました」
私が返事をすると、彼は口角を上げてとても柔らかい表情をしてくれた。
亜蘭さんに自宅まで送ってもらい、車から降りようとシートベルトを外す。
「今日はありがとうございました。明日はゆっくり休んでください」
「はい。こちらこそありがとうございました」
亜蘭さんに軽く手を振り、帰宅した。
誰も居ない部屋。
明日は孝介が帰ってくるんだろうな。
そんな当たり前なことをつい<嫌だな>と感じてしまう。
でも――。
迅くんや亜蘭さんが協力してくれる。
とりあえず、隠しカメラを設置しなきゃ。
寝室とリビングに取り付けることにした。
次の日。
朝から孝介が帰ってくるかと思って身構えていた。けれど、彼が帰ってくることはなかった。
しかし<ピンポーン>というインターホンが鳴り、画面に映る人物を確認する。
家政婦の美和さんだ。
美和さんが来るってことは、今日の夜には帰ってくるってことだよね。
<こんにちは>
「こんにちは。今、開けます。玄関も開けておきますね」
美和さんと二人きりの状態は、浮気がわかってからは今ではしんどい。
エントランスの鍵と玄関の鍵を開けて部屋で待っていると
「お邪魔します」
美和さんが部屋に入ってきた。
「よろしくお願いします。私は今日、リビングでちょっと作業をしていますので。何かありましたら、声をかけてください」
一瞬、美和さんが考え込んだように見えた。
「はい。わかりました。それでは、お掃除から始めますね」
何をするんだろうって顔してたな。
私もいちいち気にしないようにしないと。
私がさっき掃除はしたばかり。
だけど、<美和さん>が掃除をしてくれたって方が、孝介にとって安心できる部屋になるだろう。
「私がさっき掃除したので」なんて勝手に美和さんの仕事をなくしたら、告げ口されて「どうしてそんなことをしたんだ!」って怒鳴られるだけだ。
私はリビングのソファに座り、ベガのメニューについて考えていた。
事前に仕込みができて、ある程度ボリュームがあって、だけど簡単に食べられるもの。
うーんと考えていると
「美月さん。すみません。相談したいことがあるんですけど」
美和さんに話しかけられた。
美和さんが私に相談したいこと?
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