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対決 1
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あんな小さなカメラなのに、思っていた以上に鮮明に見えるんだ。
撮られている映像を見るのは、初めてだった。
「まずはこれがリビング」
パソコンを操作しながら迅くんは教えてくれたが、リビングには誰も映っていない。
やっぱり――。
「次に寝室」
マウスをクリックすると、そこには――。
「げっ!」
思わず反応してしまった。
「あー。やっぱり見ないでおく?」
行為を終えたであろう裸の二人が、ベッドで横になって寝ていた。
孝介なんて美和さんを腕枕してる。
羨ましいとかそんな感情は一切ないけど、私にはあんなこと一度もない。
「遡って見たら、確実にヤッてるだろうな」
二人の姿を見れば、不貞行為後。
休んだらもう一度、なんて可能性もあるかもしれない。
<……。どうした?美和。なんか元気ないな>
えっ、孝介の声が聞こえる。
「迅くん。これ、声も聞こえるの?」
「そりゃ、そーだろ」
そうなんだ、今リアルに何て話しているのかわかっちゃうんだ。
<そんなことないよ>
孝介の問いかけに美和さんは返事をした。
が、その声は私が聞いてもなんだか素っ気ないというか。
心ここにあらず、みたいな感じだ。
<そっか。じゃあ、もう一回しよう?>
孝介が美和さんに跨り、キスをしている。
あぁぁぁぁぁ、やっぱり見るものじゃない。
悲しいとか悔しいとか、そんな感情はなく、ただ不快だ。
<んっ……>
美和さんの声も聞こえる。
隣に居る迅くんを見る。至って普通、無表情。何を考えてるんだろ。
ていうか、孝介が動くから布団がズレて、美和さんの裸が見えちゃいそう。
思わず
「ダメッ!」
迅くんの目を、私の手のひらで覆ってしまった。
「えっ、なんでだよ」
「美和さんの胸が見えちゃうっ!」
「ひとんちでこんなことしている奴が悪い。興味のない女の裸なんて見ても、何とも思わねー」
私の手が退けられた。
<ごめん。今日はもうやめよ>
画面から美和さんの声が聞こえてきた。
なんか、前に見てしまった彼女の様子と違う。
<どうした?やっぱり疲れてる?あのバカ女のせいで>
あのバカ女って、きっと私のことだよね。
「酷い言われようだな」
迅くんも孝介が言っているバカ女が私のことだって思ったみたい。
<バカ女にはキツく言っておいたし、一発殴っておいたから。本当にごめん。俺は美和のことを愛してる。たとえ今は難しくても、きっともうすぐ――>
<いつもそう。もうすぐだからって。結局、あの女と別れてくれないじゃない>
リアルな会話、他人事じゃないのに。
まるで昼ドラとか深夜ドラマのシーンみたい。
<ごめん。俺がもっと上の立場になれば。社長になれる日もそう遠くはないから!だからその時まで待っていてほしい>
<ごめんなさい。今日はこれで帰るね>
<ちょっと、待って!美和!>
二人の話はまだ続きそうだったが
「証拠としては十分だな。不愉快だから、切るよ」
そう言って迅くんは画面を消した。
美和さんの様子が明らかに変だ。
ふぅと息を軽く吐いた後
「美月。ごめん。今日この後、用事があって。時間までここに居てくれていいからゆっくりしてな。もし殴られたところが痛み出したら言って?医者呼ぶ。亜蘭にも伝えておくから」
迅くんはそう言ってくれた。
忙しいよね。
「うん。わかった。ありがとう」
彼とはまた会えるのに。なんだか寂しい。
見送ろうと立ち上がると、頬に当たらないようにギュッと抱きしめてくれた。
「ちょっと充電」
彼のことがわからなかった時は拒んでしまった時もあるけど、今は彼の胸の中が幸せ。
彼が仕事に行ってしまったあと、ソファで傾眠してしまった。
夜中あまり眠れていないのは、変わらない。
あんなベッドで熟睡できるわけがない。
帰ったら、孝介が待っている。
時間がきても<帰りたくない>そんな気持ちの方が強い。
弱音、吐いちゃダメだ。
仕事に行っていたと見せかけるため、ベガの退勤時間に合わせ帰宅をした。
鍵を開けると、孝介の靴があった。部屋に居るんだ。
リビングに行くと、孝介がテレビも見ずに座っていた。
「ただいま」
声をかけるも無言。
「ご飯、何時にしますか?」
その時――。
孝介が
「お前のせいだ」
そう言ったのが聞こえた。
今、お前のせいだって言った?私、今日は何もしてない。
「どうしたの?」
恐る恐る、彼の後ろ姿に声をかける。
「お前のせいで、今日も彼女の様子がおかしかった。お前がこの前、美和さんに変なこと言うから、きっと傷ついたんだ」
カメラの様子を見ていたから、本当は私も知っている。
孝介は怒鳴るわけではなく、淡々と自分に言い聞かせているみたいだった。
「そうだ。そもそも全てお前のせいだ。お前のせいで彼女は……」
背筋が凍った。
あの後、何かあったの?
まさか、美和さんとケンカでもした?
だからこんなに機嫌が悪い……。というか、機嫌が悪いどころじゃない。
怖い、また殴られる。でも、ここでまた殴られたらカメラにも映ってさらに証拠が集まるかも。
ギュッと手を握り締める。
彼は立ち上がり、身体を私へ向けた。
「お前のせいだ!美和が俺と……」
完全に我を失っている。
そう思った瞬間、ソファの前にあったガラステーブルを孝介は思いっきり蹴った。
撮られている映像を見るのは、初めてだった。
「まずはこれがリビング」
パソコンを操作しながら迅くんは教えてくれたが、リビングには誰も映っていない。
やっぱり――。
「次に寝室」
マウスをクリックすると、そこには――。
「げっ!」
思わず反応してしまった。
「あー。やっぱり見ないでおく?」
行為を終えたであろう裸の二人が、ベッドで横になって寝ていた。
孝介なんて美和さんを腕枕してる。
羨ましいとかそんな感情は一切ないけど、私にはあんなこと一度もない。
「遡って見たら、確実にヤッてるだろうな」
二人の姿を見れば、不貞行為後。
休んだらもう一度、なんて可能性もあるかもしれない。
<……。どうした?美和。なんか元気ないな>
えっ、孝介の声が聞こえる。
「迅くん。これ、声も聞こえるの?」
「そりゃ、そーだろ」
そうなんだ、今リアルに何て話しているのかわかっちゃうんだ。
<そんなことないよ>
孝介の問いかけに美和さんは返事をした。
が、その声は私が聞いてもなんだか素っ気ないというか。
心ここにあらず、みたいな感じだ。
<そっか。じゃあ、もう一回しよう?>
孝介が美和さんに跨り、キスをしている。
あぁぁぁぁぁ、やっぱり見るものじゃない。
悲しいとか悔しいとか、そんな感情はなく、ただ不快だ。
<んっ……>
美和さんの声も聞こえる。
隣に居る迅くんを見る。至って普通、無表情。何を考えてるんだろ。
ていうか、孝介が動くから布団がズレて、美和さんの裸が見えちゃいそう。
思わず
「ダメッ!」
迅くんの目を、私の手のひらで覆ってしまった。
「えっ、なんでだよ」
「美和さんの胸が見えちゃうっ!」
「ひとんちでこんなことしている奴が悪い。興味のない女の裸なんて見ても、何とも思わねー」
私の手が退けられた。
<ごめん。今日はもうやめよ>
画面から美和さんの声が聞こえてきた。
なんか、前に見てしまった彼女の様子と違う。
<どうした?やっぱり疲れてる?あのバカ女のせいで>
あのバカ女って、きっと私のことだよね。
「酷い言われようだな」
迅くんも孝介が言っているバカ女が私のことだって思ったみたい。
<バカ女にはキツく言っておいたし、一発殴っておいたから。本当にごめん。俺は美和のことを愛してる。たとえ今は難しくても、きっともうすぐ――>
<いつもそう。もうすぐだからって。結局、あの女と別れてくれないじゃない>
リアルな会話、他人事じゃないのに。
まるで昼ドラとか深夜ドラマのシーンみたい。
<ごめん。俺がもっと上の立場になれば。社長になれる日もそう遠くはないから!だからその時まで待っていてほしい>
<ごめんなさい。今日はこれで帰るね>
<ちょっと、待って!美和!>
二人の話はまだ続きそうだったが
「証拠としては十分だな。不愉快だから、切るよ」
そう言って迅くんは画面を消した。
美和さんの様子が明らかに変だ。
ふぅと息を軽く吐いた後
「美月。ごめん。今日この後、用事があって。時間までここに居てくれていいからゆっくりしてな。もし殴られたところが痛み出したら言って?医者呼ぶ。亜蘭にも伝えておくから」
迅くんはそう言ってくれた。
忙しいよね。
「うん。わかった。ありがとう」
彼とはまた会えるのに。なんだか寂しい。
見送ろうと立ち上がると、頬に当たらないようにギュッと抱きしめてくれた。
「ちょっと充電」
彼のことがわからなかった時は拒んでしまった時もあるけど、今は彼の胸の中が幸せ。
彼が仕事に行ってしまったあと、ソファで傾眠してしまった。
夜中あまり眠れていないのは、変わらない。
あんなベッドで熟睡できるわけがない。
帰ったら、孝介が待っている。
時間がきても<帰りたくない>そんな気持ちの方が強い。
弱音、吐いちゃダメだ。
仕事に行っていたと見せかけるため、ベガの退勤時間に合わせ帰宅をした。
鍵を開けると、孝介の靴があった。部屋に居るんだ。
リビングに行くと、孝介がテレビも見ずに座っていた。
「ただいま」
声をかけるも無言。
「ご飯、何時にしますか?」
その時――。
孝介が
「お前のせいだ」
そう言ったのが聞こえた。
今、お前のせいだって言った?私、今日は何もしてない。
「どうしたの?」
恐る恐る、彼の後ろ姿に声をかける。
「お前のせいで、今日も彼女の様子がおかしかった。お前がこの前、美和さんに変なこと言うから、きっと傷ついたんだ」
カメラの様子を見ていたから、本当は私も知っている。
孝介は怒鳴るわけではなく、淡々と自分に言い聞かせているみたいだった。
「そうだ。そもそも全てお前のせいだ。お前のせいで彼女は……」
背筋が凍った。
あの後、何かあったの?
まさか、美和さんとケンカでもした?
だからこんなに機嫌が悪い……。というか、機嫌が悪いどころじゃない。
怖い、また殴られる。でも、ここでまた殴られたらカメラにも映ってさらに証拠が集まるかも。
ギュッと手を握り締める。
彼は立ち上がり、身体を私へ向けた。
「お前のせいだ!美和が俺と……」
完全に我を失っている。
そう思った瞬間、ソファの前にあったガラステーブルを孝介は思いっきり蹴った。
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