ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

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ヤクザ警察発足④

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 それから私はアデ先生から一通りの呪文を教えてもらい、体に叩き込むと、今度は自らの手で応用を繰り返していった。
 月神級の呪文はクイックが先頭に付き、火神級の殆どは先頭にインスタントが付く。

 私の今のお気に入りはナチュラルアースだ。水神級の魔術ではあるが、込めた魔力量によってあらゆる鉱物を生成することができる。
 いずれは強力な鉱物を生成し、自分専用の武器を作るのも悪くない。
 鎧なんて物も良いし、どこかで読んだ漫画や小説のように銃を持ち込むのも悪くない。
 例えば戦車なんてものも……。
 無論、そんな構造なんて知り尽くしている私には難しいはなしではないのだがね。

 私の知識を使えば、現代の強力な兵器の設計図をいくらでも描ける。
 ヘルメスの杖。なんてものも良いだろう。敵を一方的に蹂躙できるなんて興奮ものだ。

 私の知識は多岐にわたる。
 顔の醜かった私には、特出した特技で周りを見返すしかなかったのだ。
 記憶に特化した私は、兵器の仕組みくらい熟知している。


ーーーーーーー


 2、3時間くらいは経っただろうか? アデ先生の授業を終えて、院長のいる書斎へと向かう。

「魔術の授業はどうでしたかアーシャ?」

「とっても楽しかったです! それと、アデ先生がマッサージをしてくれたんです!」

「マッサージ?」

 院長が怪訝な目付きをする。

「まって!」

 アデ先生が慌てた様子で私の口を塞いできた。
 院長は書斎の椅子に座ったまま、腕を組んで話を聞こうとしている。

「マッサージとはいったいなんのことですか?」

「いえ、疲れた様子だったので、肩を揉んであげたんです!」

 アデ先生が私の口をふさぎ、愛想笑いをしてみせる。

「そうですか。しかし、肩を凝るような年でもないというのに……」

「ハハハ……、そうですね……」

 しかし、院長は訝し気な顔を続けている。アデ先生が小児性愛者であるということに気づいているのだろうか?

「アーシャの才能はどうでしたか?」

「とても素晴らしい才能でしたよ! これほどなら学校通わせないことの方が損でしょう!」

「しかし、お金もない身の上ですから、教科書すらも買えないでしょう。残念ですが、ここから先は自分の力で学校に通ってもらうしかありませんね」

「ハハハ……。そうですね……。いたっ!」


 奴隷の躾をすべく、私はアデ先生の腕をつねた。

 アデ先生がげんなりした顔で私を見る。見るからに生気のない顔を向けてくるが、私は全く気にもしなかった。


「アデ先生。私は勉強がしたいんです!」

「分かったって……。そうですね……。そこで、私に一つ提案があるんです……。私が資金を援助して、アーシャちゃんを学校に通わせようと思うのです」

「そんなお金があるのですか?」

「はい……」

「何か事情のありそうな様子ですが、大方アーシャに弱みでもにぎられているのでしょう?」


 私もアデ先生もぎくりとした。私の思った以上に院長は勘が良いようだ。
 アデ先生も顔面を蒼白にして慌てている。


「そんなことはありませんよ院長?」

「あなたの子供らしからぬ行動を見れば分かりますよアーシャ。そこのアデレード先生は小児性愛者ですからね。大方、アーシャに手を出して火傷でもしたのでしょう?」

「ハハハ……。その通りです……」

 アデ先生が絶望した様子で俯いている。もはや、生きていも仕方がないといった感じだ。いつごろ死ぬのだろうか?
 というか、院長は知っていてこの人を私にあてがったのか。

「そんな先生を私に与えていたのですか。全く酷い話です」

「あなたなら上手くやるでしょう? 現にあなたはうまくやった。それほど狡猾であるなら成り上がることも簡単でしょう。ただし、敵は多くなるでしょうが」

「院長は人をよく見ていますね」

「年の功というものですよ。では、アデレード先生。その子を頼みましたよ。私の見立てでは、その子は優しくて、きちんと恩義を感じる子です。ちゃんと誠心誠意お世話をしてあげれば、きっと大きく恩を返してくれるでしょう」

「はい……」

 先生は死んだ魚のような目をして私のことをじっと見ている。

「良かったですねロリコン先生。私のお世話ができて」

「はい……」

 こうして、私に保護者兼、ATMができた。

 入学はこれから一年後。それまでに、この孤児院内での教育は済ませておきたい。

 アデ先生を帰らせると、私はいつものように素敵な中二服に身を包み、クソガキどもを矯正するため見回りを始めた。


―――――


 廊下を歩いていると、泣き叫ぶような声と共に、女児共が男児どもにリンチを行っている場面に出くわした。

「おい! お前たち! なにをやっている!」

 私は怒りを露に女児たちを引き離す。

「あっ! アーシャ様! この者がアーシャ様の悪口を言っていたのです! ただの男ふぜいがアーシャ様の悪口を言っていたのです!」

「そこの少年。それは本当のことか?」

「はい……」

 私が睨みつけると、男児は正直に話した。嘘か真かは分からないが、これ以上の追及も必要ない。


「であれば、今後は誰であろうとも悪口を公の場で言わないようにしろ。それと、君たち。一人を囲って暴力をふるうとはなんて情けない奴らだ! 恥を知れ!」

「アっ、アーシャ様?」

 女児たちが私に咎められたことで、激しく動揺を起こした。

 こうなる日が来るとは思っていたが、まさか、こんなにも早いとは思いもしなかった。集団が帰属意識を持ち、暴走を始めていた。早めに対処をしなくては、事態はもっと深刻なものとなるだろう。ここは強く強制する必要がある


「お前たちには失望したぞ! ただの悪口ごときで暴力をふるうなど、浅ましいにもほどがある!」

「しかしアーシャ様! 私たちはアーシャ様のためを思ってしたのですよ? アーシャ様は私たちの味方ではないのですか?」

「私は差別を無くすと宣言した! それは女性に対してだけのものではない! 全てに対してだ! 今すぐ解散しろ! 複数で一人を取り囲むなど、弱者のする行為だ! この処分は追って下す! 部屋の中で震えて待て!」


 女児たちが涙を浮かべて解散していく。この状況で優しく諭してまえば、自分のしたことの愚かさに気付けることもないだろう。
 暴君である私に対しての憎悪はいくらあっても構わないが、単純な暴力は、私のように反感を買って争いの火種となるのだ。
 私が絶対的な強者であるから問題ないものの、児童にはあまりにも重い行為だ。

 しかし、ここまで帰属意識が強いとなると、おそらく、アリスが裏でいじめられている可能性が高いな。
 私がアリスのことを特別気に入っているせいで、他かが嫉妬を起こしているはずだ。

 アリスの様子を見たらとり急ぎ明確な規則を作るとしよう。
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