ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

ヤクザ警察入学準備

　日課の山籠もりをしていたある日、少々物珍しさも減ってきて何か新鮮な出来事はないかと考える。
　これから先、派手な喧嘩も増える予定だ。自分の強さに危機感があるところ、何か別のアプローチが欲しいと思った次第だ。

　一番の問題は相手の魔力の質が見抜けないことだ。
　殴り合いの喧嘩であれば、相手の体格でおおよその戦闘結果は予想できるが、相手の魔力というものは通常では感知することができず、相手の力量を見極めることが非常に難しいのだ。

　不用意に喧嘩を売って私の方が返り討ちになる可能性は大きくある。

　武力も重要ではあるが、それ以上に情報も重要だ。
　機先を制した者が勝ちやすいのは、世の中のルールである。
　ならば、せめて、相手の実力を知ることができれば最高だろう。

　そういや、魔力を散らせる鉱石があったな。あれを使ってみるか？

　いや……、私でさえも最初は意気込んでたものの、発がん性に怯えて近寄らなくなっていたし、相手を殺してしまうことにもなりかねない。

　どうにか使い勝手の良い方法があれば良いのだが……。

　悩むな……。

　仕方がない。実験をしてみる他ないか……。



　確か放射線は五種類に分けられていたな。アルファ線、ベータ線、エックス線、ガンマ線、中性子の五種類だったはずだ。コンクリートとアルミニウムさえあれば大体吸収できるはずだが。
　となると、鉱物生成の魔術か。しかし、作れたところで、まずそれがアルミニウムなのかさえも判別がつく方法がない。


　細心の注意を払いつつ緑色に光る鉱石に向けて魔力を動かす。

　手のひらほどの鉱石でも放射線量は相当なもので、私の魔力はすぐに散ってしまうようだ。

　かろうじてアルミニウムらしき物の生成はできたものの、肝心のセメントが作れず、コンクリートによる防護は夢のまた夢へと消えてしまう。
　多少かさばってしまうが、仕方がない。魔術で水と鉄だけを用意して鉱物を覆う。
　試してみれば、それだけで魔力は散らなくなった。理論上はこれだけでも問題は軽減されているはずだが、利用するとなると重さもそうだが、放射線量の調整もできない。

　まあ、これは最終防御手段としてとっておこう。私や周りの人間を巻き込まないように細心の注意も必要だしな。

　私の当初の目論見では、相手がどんなに強かろうとも、相手の魔力をかき消してしまえば、こちらが一方的に魔法をうてる状況になるはずだった。
　しかし、現実はうまくはいかないようだ。

　大変不本意だが、入学後しばらくは大人しくして周りの力関係を観察しよう。でないと自分が殺される。

　そういえば、明日は入学のための説明会だったな。入学者は魔力量に関する検査を受けるようだがアデ先生は元気にしているだろうか？