ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

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ポリコレポリス魔法学校入学③

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 食堂に寄って、召喚獣である少女に私の弁当を食べさせる。
 
 見た目からして普通の少女なのだが、よくみれば、微妙に耳が尖がっているようだ。

 私の召喚獣である少女はひたすら弁当の中身を掻き込み、時折、喉を詰まらせて咳き込んでいる。

 先ほどまでこの子はスプーンの使い方すらも知らなく、手づかみで食べようとしたので注意をしたのだが、物覚えは良いみたいですぐに慣れた様子だ。
 まあ、10数分ほど駄々をこねてスプーンを使いたがらなかったが……。

 少女? 幼女? 歳は分からないが、この子の中身は随分と幼いようだ。

 心の底から美味しそうに食べる姿は私をほっこりとさせてくれる。しかも、私が作った弁当なのだからなおさらな。


「ほら、口元が汚れてるぞ」

 ハンカチでキッシュソースを拭くと、少女はにっこりと笑った。正直この子を手放すのが惜しく感じてきた。

「ママの名前はなんていうの?」

「私か? 私の名前はアーシャだよ」

「ふーん。私はこれからどうすればいいの?」

「どうすればいい? どういうことだ?」

「だって、ママが呼んでくれたんだから来たんだよ?」

「まあ、確かにそうなんだが。君との契約が解除できないんだよ」

「じゃあそれまで私はどうしていればいいの?」

「大人しくしていればそれでいい」

「ふーん」

 少女が退屈そうに手遊びを繰り返す。

「ところで君はどんな能力があるんだ? 他の召喚獣と違って自我もあるように感じるが」

「能力?」

「契約者のために戦ったり守ったりといったことだよ」

「私はそんなことできないよ?」

「なるほどな」


 やはり、ランクが一番下では能力も微々たるもののようだ。
 しかし、それだけでこの子の価値を付けるのは酷い話だ。

 弁当を食べ終わると、少女は足をぶらぶらと揺らして暇そうにあたりを見渡す。


「ママひまー」

「そうだな。次の授業までの間、アデ先生のところへ遊びに行くか。ところで、君を呼ぶにしても名前がないと呼びづらいな。名前とかってあるのか?」

「名前? 私はマーラだよ?」

「マーラ?」

「そう!!」

 なんともいかがわしい名前のようだが、この世界では意味も分からないだろうし、さして気にする必要もないか。呼ぶ方は言いづらいのだが。

 アデ先生にこの子を引き取ってもらえないか相談しに廊下を歩いていると、こちらに向かって走る三人組の男子生徒に出くわした。

 こんな時間に出歩いているとなると、あまり真面目そうな生徒には思えないな。それに、友達と騒いで前も向いていない様子だが、大丈夫だろうか?

 運の悪いことにその三人組は頭のおかしい連中だった。
 相手は16歳であるはずなのだが、私が危ないと叫んでもなお前を見ようとはせず、そのまま私にぶつかってきたのだ。

 マーラを押して避けさせるが、私は当然のことながら体重差で突き飛ばされる。相手は少しよろめく程度だった。

「ったく! 邪魔なんだよ!」

「邪魔だと……?」


 久しぶりにイラっとした。こちらに謝りもせず悪態をついてくる態度に、一瞬だが殺してやろうかとも考えた。


「こんなとこ歩いてんじゃねーよ!」

「そうか。そういう態度でくるならば、殺してやらないとな」


 魔力を立ち昇らせ、重力場で奴らを襲う。


 どうやら三人とも床に強く頭を打ったようだ。これで少しはマシな頭になっただろうか?


「なんだ! 急に!?」

「私の要求は一つだけだ。私に謝れ」

「何言ってんだ!?」


 三人合わせて魔力は私の二分の一以下の雑魚が。
 調子に乗るなよ。

 続けて重力場による耐久勝負を仕掛けようとするが、急に三人が大人しくなった。
 謝る気にでもなったのかと、重力場を解除するが……、違った。

 どこからともなく現れた三人の女がそれぞれ男の前で胸をはだけさせ、男たちは急に服を脱ぎだしたのだ。

 私の頭は理解の範疇を越えて、少しの間止まってしまう。

「ねえ。悪いことはやっちゃだめよ? ほら、あの子に謝って? じゃないと続きはしてあげないから」

 色香を纏う、胸や腰だけを布で隠す、殆ど半裸の女性が男を誘惑している。
 しかも、それが3人もおり、この場は混沌を極めていた。


「おっぱいが好きなの? でも、あの子に謝ってからね?」

「あの子に謝ったらもっと気持ちいいことしてあ・げ・る」

 見れば、男たちの目は正気ではなくなっていた。
 男たちは私に向かって頭を下げると、女の方に集中し始めた。


「お母さんいこ?」

「ああ。だが、これはなんだ? もしかして、君の能力か?」


 マーラが私の腕を引っ張る。


「そうだよ。私ね、相手の一番好みの女性を呼び出して快楽に落とせるの」


 このまま放っておけば、奴らの周囲は騒ぎになるだろう。最悪退学といったところだが、犯人捜しが始まるのも良くない。


「もう十分だ。あの3人の女は引き上げさせろ」

「わかった」

 マーラがそう言うと、三人の女は消え、男は精も根も尽き果てた顔で真っ白に倒れていた。まだ行為にも及んでいないはずだが、これがこの子の強みとなるとあまりにも恐ろしいものだ。あまり、表立って出せるような能力ではないが、使い方次第ではとんでもないことさえできそうだ。


「誰に対してでもこの能力は使えるのか?」

「うん! あっ、ただ、悟りを開いた人には効かないし、開きかけている人にも効かないよ!」


 マーラか。能力を聞く限り、私の知っているあのマーラなのだろうか? カーマと同一の存在とも言われ、釈迦の悟りを妨害するが、あえなく消え去ってしまったというあのマーラなのか?


「釈迦という人物は知っているか?」

「うーんとね。知らない!」

「そうか」


 だが、マーラと関係があるとすれば、この子は神なのか? それに、男でもないが。


「その姿は変えられるのか?」

「変えるの? この姿が一番ママの好みなのに?」

「やはり、変えられるのか。いや、聞いただけだ。しかし、君の言うのとは違って、その姿は私が興奮するような容姿ではないのだが」

「ん? ママから男の人の気配がしたんだけど、違ったかな? ママの中にある男の人の部分がこの姿が良いって思ってたよ。女の人と男の人の気配が混ざっててうまくわからなかったからこの歳にしたけど?」


 私から男の気配? 前世では男だったが、その影響か? 私の体が女であるから性欲すらも女性として支配されているのかもしれないが、いや、しかし、分からないな。


「まあ、いいさ。アデ先生ならきっと喜んで遊んでくれるよ。ただし、変なことされそうになったらすぐに私に言うんだ。分かったね? それに、その能力は私が良いと言うまで使ってはいけないよ?」

「はい!」

 元気よくマーラが返事をする。あの人のことだ、預ければきっと手を出すに違いないが、その時はとっちめてやらねばならない。

 しかし、それにしてもマーラのこの能力は恐ろしいな。
 結局のところ、人間は本能に抗うのが一番辛いのだ。食欲しかり、性欲しかり、睡眠欲しかり。

 性欲を掌握できるとなれば、この子はランク以上の力があるのだろう。
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