ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

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魔女裁判続行

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 2時間にも及ぶ私の演説は、民衆の疲れを誘発し、集中力を欠かせ、結果的に考える力を奪わせる。
 そうすることにより、更に、より、単純な言葉だけが大衆の耳に残るようになる。


 しかして、演説の前では自らは謙虚でなくてはならない。大衆の喝さいを浴びることよりも、自分の主張をすること。同意を求めることに固執してはならず、常に自分の中の正しさを見失わずにいること。そして、力を見せつけること。
 それが結果的に演説による大衆の喝さいを呼び起こすのだ。

 知識人であるほどに、言葉を論理的に扱うが、多くの民衆はその言葉の意味を決して理解しきることはない。なぜなら、すぐに言われたことを忘れてしまうせいにあるのだから。

 常に扱うべきは自らの思想。そして単純な言葉。そして自分の強さ。未来に希望を抱かせることにこそ民衆は心を動かされる。


 例え、中身が無くとも、甘言にこそ大衆は誘惑される。中身を伴っては、大衆の心を掴むことができない。

 かの日本の政権がそうであったように、甘言にこそ、大衆の心を掴む意味があるのだ。


 村長はそろそろ止めろと言ってくるが、民衆はそれを望まなかった。

 

 私はそこで、ようやく、目的の一段階目を達成することができる。


「エリーチカに対する処罰を延期せよ! でなければ、私は絶対にここを退かない! 見ろ! 民衆は私の演説を望んでいるではないか!」

「分かった! 処罰については期日を伸ばす!」

「一か月の延期を求める!」

「分かった!」


 気が狂ったように、民衆の熱は昂り、村長や被害者の家族だけが、この場で正気でいられている。


 私が退場してもなお、民衆たちの私を求める声は鳴りやまない。

 村長がどうにか、この場を収めようと解散をさせるが、民衆たちの反抗は強く。解散までには時間がかかった。




─────




 久しぶりに大声を使ったことで、体中が汗でびっしょりになってしまった。火照った体を、夜風が、つうっと、通るたびに、背筋から頭にかけて、ゾクッとした寒さが行きわたってくる。

 縄で縛られたエリーチカを、牢屋に連れ戻し、私は檻越しに話しかける。


「エリーチカ。君の裁判はどうにか延期をすることができた。だが、しかし、後は君の態度次第だ。君が被害者の家族に対していつまでも誠実に奉仕し続けることが君への罰だ。君がすべきことは、死んで全てから逃げることではなく、生きて償い戦うことにある。君のやってしまった行いがいつ許されるかは分からないが、そうしなくては、君も被害者家族も前に進むことはできない。殺したり、殺されたりが、罪の許しの全てではないのだ」


「あの……。私には難しいことは分かりませんが、生きて償えと言われればそうしましょう。私にはもう自由はありませんから」

「明日。被害者の家族に対して、謝りに行こう。何度でも謝りに行って、誠実な態度を貫くのだ」

「分かりました……」

「難しく考えなくても良い。君がどうすべきかは私も一緒に考える。可哀そうなエリーチカ」



 一度、私はアデ先生の元へと戻って、食事を作ってからエリーチカに渡しに行く。

 最初は手を付けなかった食事だが、私がじっと見ていると、エリーチカも雰囲気を察してか、おずおずと食事を食べ始めた。

「あの、なんで私は産まれたのでしょうか? 変な話ですけど、なんだか言わないと苦しくて仕方がないんです……」

「君は本来は祝福を受けて産まれる存在だった。一人では辛いその苦しみも、私も一緒になって苦しめばいくらが和らぐだろう。私が君を祝福をしよう。困ったことがあれば、なんでも私を頼りなさい」

「はい……」


 エリーチカのボロボロの牢屋の中に、新調したベッドやらなんやらを持ち込み、寝る分には困らないようにする。

 それから、アデ先生とアリスやジークリンテやマーラに話を通して、私はエリーチカと一晩を傍で過ごすことにした。

 エリーチカは、檻の中にいるが、私は檻を隔てて、椅子の上で眠ろうとする。


「そのままでは気が滅入るだろう。眠れるようになるまで話でもしよう」

 
 監視がいるので、無理やり外に追い払うと、エリーチカと将来の話をし始めた。

 楽しいこと。幸せなこと。許してもらった後、どう過ごすのか? 決してエリーチカは許してもらえないだろうと言ってきたが、私はそれを否定した。


「君は幸せになるべきだ。君は将来、どこへ住みたい?」

「……。静かな湖畔の、綺麗な花畑のある傍で、誰とも話さずひっそりと暮らしたいです」

「良い夢だな」

「猫が好きなので、猫も飼って、お昼は紅茶とお菓子を食べて、そんな生活がしたいです」

「きっと叶うさ。誠実に生き続ければな」

「アーシャさん? ちゃん? 大人になったり、子どもの姿になったりで良く分からないのですけど、どうお呼びすれば良いですか?」

「私のことは、ただのアーシャで良い」

「アーシャの将来の夢ってなんですか?」

「私の夢は、差別のない世界を築くこと。特別な理由で女性が虐げられることのない世界を実現することだ」

「本当にそれが夢なんですか? 人間の欲望はもっと汚くて、闇の深いもののはずですよ。魔女だった身からすれば、人間の欲望はたた抑えられているだけで、みんな根の深い欲望を抱えているように思います」

「確かにその通りだろう。私には汚い欲望は沢山ある。それも人並み以上にな」

「そうですよね」


 話しがそこで途切れた。

 エリーチカも自分のことを話したし、私も少し自分の話をしようと思う。


「私の根の深い欲望はな。性欲が強すぎるんだ。何人でも相手が欲しいし、いくらだって自分の種をばらまきたい。私も、もし、魔女になってしまったらそんなことをずうっと続けていただろう」

「アーシャさんもエッチが好きなんですね」

「私もエッチは大好きだよ。気持ちがいいし、何より幸せだ」

「私はエッチが終わると、怖いことを思い出してしまうからそれだけが嫌です……」

「確かに行為が終わると、途端に現実に引き戻される。私も昔は怖かったな。それなのに、またやってしまうんだ。今日は何回でもできると思っていても、実際には一回しかできないしで、私はつくづく性欲に振り回されているよ」

「私はお兄ちゃんとのエッチが一番好きで、でも、兄妹なのにって毎回後悔していました」

「この世界は広いからな。そういうこともあるだろう」


 決してエリーチカの話を拒絶せず、最後まで聞いていく。身を潜めたくなるような話も出てくるが、それでも私はきちんと話を聞いていく。

 ようやく、エリーチカの目が萎んできたころ。

「アーシャ。ねえ、私とエッチして欲しい」

「性欲が沸いてきたということは、生きる力が付いてきたということさ。食事も性欲も睡眠も本能から来るものだからな。生きるためには必要なことだ。君は正常に戻りつつある」

「ねえ、はぐらかさないで」


 エリーチカが勝手に服を脱ぎ始めた。


「いずれはな。もう夜も遅い。眠るか、自分で慰めるかしなさい」

「じゃあ、手伝ってよ。アーシャも興奮してるんでしょ?」

「残念だが、私はもう眠い。一度オナニーでもすれば、君も眠たくなるよ。あれは体力を使うものだ」


 エリーチカが檻の前で、ストリップをしているが、構わず私は眠ったフリをすることにした。

 ようやくエリーチカも勝手にオナニーを初めて、終わるとようやく眠り始めた。

 そうして、私もようやく眠ることができる。


「おやすみエリーチカ。君は幸せになるべきだよ」




 
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