ヤクザ警察アーシャちゃん 異世界に転生したらやりたい放題

竹丈岳

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転生者との遭遇

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 いつの間にか私も子どもたちと昼寝をしていた。しかし、突然、トイレが詰まったと子どもたちから叩き起こされた。

 車内に接地してあるトイレは一応水洗式ではあるのだが、汚物はタンクに溜めていく方式なので、定期的に取り換えないとこうして詰まるようになる。

 最近、忙しくて、ろくに家事もできていなかった証拠であり、もう少し私は家族のことに気を配らねばならないと気づかされる。


 私はソファーから起き上がると、タンクを取り外すために車外に降りる。すると、そこに、赤い髪の綺麗な少年がいることに気付いた。
 よく見ると、頬に火傷の跡があるが、あのアーサーだろうということまで分かった。

 そのアーサーがこんな近くまで来て何をしているのだろうかと思っていると、


「すっ、すみません。この車が気になっていたら、いつの間にかこんな近くまで。これってキャンピングカーですよね? あの、もしかして、あなたは転生者ですか?」

「その直球な物言い、中身は子供か?」

「僕の中身は30過ぎのおっさんです。ぜひとも転生者さんに協力していただきたいことがあるのです」

「協力するにしても荒事はごめんだ」


 不可抗力でアーサーと出会ってしまったが、話をするにしても早めに切り上げるとしようか。あのバーサーカーに言ってしまった手前、そう務めるべきだろうしな。


「その荒事を無くすために協力して欲しいのです」

「じゃあ次は神を倒すために協力してくれと言うんじゃないだろうな?」


 私の言葉を受けたアーサーは、言おうとしていたことを当てられたといった顔をして少し驚いた様子を見せた。


 私はタンクの蓋をわざと開けたままにして森の方へと歩いていくが、アーサーは一つたりとも嫌な顔をせずに私に付いてくる。

 人気のないところで、重力場の魔法を使い、穴を掘り始めていくのだが、アーサーは構わず私に話しかけようとする。


「あの、創世記というものは知っていますか?」

「知らないな」

「昔、この世界の人間たちは争いに明け暮れていました。そこに神が現れ、この世界を調停したのです。そして、神はこの世界に魔法というものを授け、安寧と平和をもたらしました」

「そこだけ聞くと、神と戦う要素なんか無いように思えるな」

「話はここからです。それと同時に神は罪のある者と、罪の無い者に分けて、一方を地獄に追いやったのです。その地獄とはここ、魔都のことです」

「そうかい」

「話を聞いてください。本題はここからです。神がなぜ、魔法の階級などに使われる月神、火神、などというのか、それは、それぞれが統治していた星の名前から来ているのです。月だったり火星だったりと」

「じゃあ、魔法はエイリアンのテクノロジーか?」

「察しが良いですね。その通りです。魔力は放射線に弱いのですが、それは、ナノマシンを用いて魔力を使っているからです。人間が魔法を使うにはナノマシンが必要で、そのナノマシンは機械なので、電磁波にはとても弱くて機能しなくなるのです」

「じゃあ、土を食べると、魔力の回復が早くなる理屈はなんなんだ?」

「それはまだ分かりません」


 穴を掘り終えた私は、その穴に、汚物を流し込み、最後の一滴までふるい落とす。

 次に魔法で水洗いを始め、隅に残ったものまで掃除をしていく。


「神は神ではないのです。神はこの世界の罪のある者から魂を搾取して今も生きながらえているのです。その罪のある者とは、むかし、神の侵略に最後まで抗った者たちの末路なのです。魂を奪われると、誰も転生することができずに消滅してしまうのです。酷いでしょう? 一緒に協力してくれませんか?」

「それだけでは君の言う話が本当かどうかは分からないな。それに、私は戦闘にはめっぽう弱いんだ。他を当たった方がいい」

「いえ、転生者であるからにはそれなりの実力を持っているはずです。後になってしまいましたが名刺を渡しておきます。また来ますから」


 そう言ってアーサーは私に名刺を渡すと、さっさと立ち去って行った。

 私もさっさとタンクの掃除を終えて汚物を流した穴を埋め立てると、トイレに取りつけて車内に戻ろうとした。

 しかし、泣き声が聞こえてきて、車内に上がると、案の定マーラが間に合わずお漏らしをしている光景を目にした。

 泣き叫んでいるマーラを一度お風呂に入れさせて綺麗にした後、マーラに新しい服を着させた。床はアリスとジークリンテが拭いてくれて、ありがとうという気持ちを込めて2人にキスをした。

 マーラを膝の上で抱きしめて、泣き止むまで慰める。


「ママが悪かったよ。マーラは悪くないよ」

「そう……?」

「うん。泣き止んだらお菓子をあげる。欲しい?」

「うん」


 子どもというのは現金なもので、ちょっと物をつらすだけで、興味がそっちに移っていく。

 子どものこういうところが実は可愛くて、また数人が欲しくなってしまう……。さっさとアデ先生を孕ませるか?

 
 子どもたちがお菓子に夢中になっている間、ふと、気になって、もらった名刺を見てみる。

『魔王城代表取締役 アーサー・グラディウス』と書いてある。
 
 住所やら電話番号らしきものやら、一応の名刺の体はなしているようだった。

 アーサーがどんな人間なのかは分からないが、まあ、話くらい聞くだけ聞いてみるとしようか。
 出会ってしまった以上は不可抗力だからな。






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