62 / 76
転生者との遭遇
しおりを挟む
いつの間にか私も子どもたちと昼寝をしていた。しかし、突然、トイレが詰まったと子どもたちから叩き起こされた。
車内に接地してあるトイレは一応水洗式ではあるのだが、汚物はタンクに溜めていく方式なので、定期的に取り換えないとこうして詰まるようになる。
最近、忙しくて、ろくに家事もできていなかった証拠であり、もう少し私は家族のことに気を配らねばならないと気づかされる。
私はソファーから起き上がると、タンクを取り外すために車外に降りる。すると、そこに、赤い髪の綺麗な少年がいることに気付いた。
よく見ると、頬に火傷の跡があるが、あのアーサーだろうということまで分かった。
そのアーサーがこんな近くまで来て何をしているのだろうかと思っていると、
「すっ、すみません。この車が気になっていたら、いつの間にかこんな近くまで。これってキャンピングカーですよね? あの、もしかして、あなたは転生者ですか?」
「その直球な物言い、中身は子供か?」
「僕の中身は30過ぎのおっさんです。ぜひとも転生者さんに協力していただきたいことがあるのです」
「協力するにしても荒事はごめんだ」
不可抗力でアーサーと出会ってしまったが、話をするにしても早めに切り上げるとしようか。あのバーサーカーに言ってしまった手前、そう務めるべきだろうしな。
「その荒事を無くすために協力して欲しいのです」
「じゃあ次は神を倒すために協力してくれと言うんじゃないだろうな?」
私の言葉を受けたアーサーは、言おうとしていたことを当てられたといった顔をして少し驚いた様子を見せた。
私はタンクの蓋をわざと開けたままにして森の方へと歩いていくが、アーサーは一つたりとも嫌な顔をせずに私に付いてくる。
人気のないところで、重力場の魔法を使い、穴を掘り始めていくのだが、アーサーは構わず私に話しかけようとする。
「あの、創世記というものは知っていますか?」
「知らないな」
「昔、この世界の人間たちは争いに明け暮れていました。そこに神が現れ、この世界を調停したのです。そして、神はこの世界に魔法というものを授け、安寧と平和をもたらしました」
「そこだけ聞くと、神と戦う要素なんか無いように思えるな」
「話はここからです。それと同時に神は罪のある者と、罪の無い者に分けて、一方を地獄に追いやったのです。その地獄とはここ、魔都のことです」
「そうかい」
「話を聞いてください。本題はここからです。神がなぜ、魔法の階級などに使われる月神、火神、などというのか、それは、それぞれが統治していた星の名前から来ているのです。月だったり火星だったりと」
「じゃあ、魔法はエイリアンのテクノロジーか?」
「察しが良いですね。その通りです。魔力は放射線に弱いのですが、それは、ナノマシンを用いて魔力を使っているからです。人間が魔法を使うにはナノマシンが必要で、そのナノマシンは機械なので、電磁波にはとても弱くて機能しなくなるのです」
「じゃあ、土を食べると、魔力の回復が早くなる理屈はなんなんだ?」
「それはまだ分かりません」
穴を掘り終えた私は、その穴に、汚物を流し込み、最後の一滴までふるい落とす。
次に魔法で水洗いを始め、隅に残ったものまで掃除をしていく。
「神は神ではないのです。神はこの世界の罪のある者から魂を搾取して今も生きながらえているのです。その罪のある者とは、むかし、神の侵略に最後まで抗った者たちの末路なのです。魂を奪われると、誰も転生することができずに消滅してしまうのです。酷いでしょう? 一緒に協力してくれませんか?」
「それだけでは君の言う話が本当かどうかは分からないな。それに、私は戦闘にはめっぽう弱いんだ。他を当たった方がいい」
「いえ、転生者であるからにはそれなりの実力を持っているはずです。後になってしまいましたが名刺を渡しておきます。また来ますから」
そう言ってアーサーは私に名刺を渡すと、さっさと立ち去って行った。
私もさっさとタンクの掃除を終えて汚物を流した穴を埋め立てると、トイレに取りつけて車内に戻ろうとした。
しかし、泣き声が聞こえてきて、車内に上がると、案の定マーラが間に合わずお漏らしをしている光景を目にした。
泣き叫んでいるマーラを一度お風呂に入れさせて綺麗にした後、マーラに新しい服を着させた。床はアリスとジークリンテが拭いてくれて、ありがとうという気持ちを込めて2人にキスをした。
マーラを膝の上で抱きしめて、泣き止むまで慰める。
「ママが悪かったよ。マーラは悪くないよ」
「そう……?」
「うん。泣き止んだらお菓子をあげる。欲しい?」
「うん」
子どもというのは現金なもので、ちょっと物をつらすだけで、興味がそっちに移っていく。
子どものこういうところが実は可愛くて、また数人が欲しくなってしまう……。さっさとアデ先生を孕ませるか?
子どもたちがお菓子に夢中になっている間、ふと、気になって、もらった名刺を見てみる。
『魔王城代表取締役 アーサー・グラディウス』と書いてある。
住所やら電話番号らしきものやら、一応の名刺の体はなしているようだった。
アーサーがどんな人間なのかは分からないが、まあ、話くらい聞くだけ聞いてみるとしようか。
出会ってしまった以上は不可抗力だからな。
車内に接地してあるトイレは一応水洗式ではあるのだが、汚物はタンクに溜めていく方式なので、定期的に取り換えないとこうして詰まるようになる。
最近、忙しくて、ろくに家事もできていなかった証拠であり、もう少し私は家族のことに気を配らねばならないと気づかされる。
私はソファーから起き上がると、タンクを取り外すために車外に降りる。すると、そこに、赤い髪の綺麗な少年がいることに気付いた。
よく見ると、頬に火傷の跡があるが、あのアーサーだろうということまで分かった。
そのアーサーがこんな近くまで来て何をしているのだろうかと思っていると、
「すっ、すみません。この車が気になっていたら、いつの間にかこんな近くまで。これってキャンピングカーですよね? あの、もしかして、あなたは転生者ですか?」
「その直球な物言い、中身は子供か?」
「僕の中身は30過ぎのおっさんです。ぜひとも転生者さんに協力していただきたいことがあるのです」
「協力するにしても荒事はごめんだ」
不可抗力でアーサーと出会ってしまったが、話をするにしても早めに切り上げるとしようか。あのバーサーカーに言ってしまった手前、そう務めるべきだろうしな。
「その荒事を無くすために協力して欲しいのです」
「じゃあ次は神を倒すために協力してくれと言うんじゃないだろうな?」
私の言葉を受けたアーサーは、言おうとしていたことを当てられたといった顔をして少し驚いた様子を見せた。
私はタンクの蓋をわざと開けたままにして森の方へと歩いていくが、アーサーは一つたりとも嫌な顔をせずに私に付いてくる。
人気のないところで、重力場の魔法を使い、穴を掘り始めていくのだが、アーサーは構わず私に話しかけようとする。
「あの、創世記というものは知っていますか?」
「知らないな」
「昔、この世界の人間たちは争いに明け暮れていました。そこに神が現れ、この世界を調停したのです。そして、神はこの世界に魔法というものを授け、安寧と平和をもたらしました」
「そこだけ聞くと、神と戦う要素なんか無いように思えるな」
「話はここからです。それと同時に神は罪のある者と、罪の無い者に分けて、一方を地獄に追いやったのです。その地獄とはここ、魔都のことです」
「そうかい」
「話を聞いてください。本題はここからです。神がなぜ、魔法の階級などに使われる月神、火神、などというのか、それは、それぞれが統治していた星の名前から来ているのです。月だったり火星だったりと」
「じゃあ、魔法はエイリアンのテクノロジーか?」
「察しが良いですね。その通りです。魔力は放射線に弱いのですが、それは、ナノマシンを用いて魔力を使っているからです。人間が魔法を使うにはナノマシンが必要で、そのナノマシンは機械なので、電磁波にはとても弱くて機能しなくなるのです」
「じゃあ、土を食べると、魔力の回復が早くなる理屈はなんなんだ?」
「それはまだ分かりません」
穴を掘り終えた私は、その穴に、汚物を流し込み、最後の一滴までふるい落とす。
次に魔法で水洗いを始め、隅に残ったものまで掃除をしていく。
「神は神ではないのです。神はこの世界の罪のある者から魂を搾取して今も生きながらえているのです。その罪のある者とは、むかし、神の侵略に最後まで抗った者たちの末路なのです。魂を奪われると、誰も転生することができずに消滅してしまうのです。酷いでしょう? 一緒に協力してくれませんか?」
「それだけでは君の言う話が本当かどうかは分からないな。それに、私は戦闘にはめっぽう弱いんだ。他を当たった方がいい」
「いえ、転生者であるからにはそれなりの実力を持っているはずです。後になってしまいましたが名刺を渡しておきます。また来ますから」
そう言ってアーサーは私に名刺を渡すと、さっさと立ち去って行った。
私もさっさとタンクの掃除を終えて汚物を流した穴を埋め立てると、トイレに取りつけて車内に戻ろうとした。
しかし、泣き声が聞こえてきて、車内に上がると、案の定マーラが間に合わずお漏らしをしている光景を目にした。
泣き叫んでいるマーラを一度お風呂に入れさせて綺麗にした後、マーラに新しい服を着させた。床はアリスとジークリンテが拭いてくれて、ありがとうという気持ちを込めて2人にキスをした。
マーラを膝の上で抱きしめて、泣き止むまで慰める。
「ママが悪かったよ。マーラは悪くないよ」
「そう……?」
「うん。泣き止んだらお菓子をあげる。欲しい?」
「うん」
子どもというのは現金なもので、ちょっと物をつらすだけで、興味がそっちに移っていく。
子どものこういうところが実は可愛くて、また数人が欲しくなってしまう……。さっさとアデ先生を孕ませるか?
子どもたちがお菓子に夢中になっている間、ふと、気になって、もらった名刺を見てみる。
『魔王城代表取締役 アーサー・グラディウス』と書いてある。
住所やら電話番号らしきものやら、一応の名刺の体はなしているようだった。
アーサーがどんな人間なのかは分からないが、まあ、話くらい聞くだけ聞いてみるとしようか。
出会ってしまった以上は不可抗力だからな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる