36 / 41
36
しおりを挟む
そうした会話を遮るように二人の携帯電話が鳴り、刹那君のおじいさんの訃報が届きました。
刹那君は、傍から見て分かるほどに顔から血の気を失って倒れてしまい、与一とシーア君が保健室に運びこまれます。
「刹那! おいしっかり!」
与一が保健室の扉を力強く開けます。
急に扉が開いたことで、立花先生はびっくりして椅子から飛び跳ねました。どうやら、お茶とお菓子を一緒に食べて落ち着いていたところのようでした。
「どうしたんだい!?」
「先生。刹那が気絶しました! ベッドに休ませてあげてください!」
「ああそれなら、そこに。怪我とかはしてない?」
「頭は倒れた時に打ったと思います」
「なんで気絶したんだい?」
「刹那のおじいさんが死んだんです。そのショックで倒れたんです」
「まあ、君たちも心配だろうけど戻りなさい。あとは僕が見ておくから」
「ありがとうございます!」
立花先生は、刹那の脈と瞳孔の動きを確認したあと、しばらく様子をみました。
それから30分もしなうちに起き上がった刹那の様子を見て、立花先生は、
「起きたかい? 急に倒れたって聞いたけど、気分はどう?」
そう立花先生が聞くと、刹那君はベッドの上でゲロを吐いてしまいました。
慌てて、立花先生は刹那君にゴミ箱を渡します。
ひとしきり吐いた後、刹那は泣き続けました。
立花先生は、そんな刹那の傍にいて身を寄せています。
立花先生の手に、ゲロが付着しているのに気づき、刹那が謝りますが、立花先生は嫌な顔一つしないどころか優しくありました。
「ごめんなさい。ティッシュを……」
「大丈夫だよ。気にしないで。シーツのことも大丈夫だから。後で洗っておくからさ」
「すみません……」
「何か飲み物が欲しければ持ってくるよ?」
「祖父が死んでしまったんです……」
立花先生の言葉を遮って刹那君はそう言いました。
「それは辛いね……」
「……。僕はいつも、周りに足を引っ張られるんです……。みんなが努力しないせいで、僕だけがいつも割を食らっているんだ……。みんながもっと頑張っていれば、もっと早くにエルドラドの秘宝に近い物だって手に入れられたかもしれないのに……」
「……、というと?」
「みんな俺に協力しようとしない……。努力もしないのに……」
「特に誰がだい?」
「みんなだよ……」
刹那君の話しは要領を得ませんが、祖父が死んだショックで動揺しているのでしょう。こうして、刹那君が話しているのも、自分の心を整理しようとしてのことでした。
「僕は臨床心理士の資格も持っているんだ。カウンセリングだってできるよ。人と相談したら楽になれるかもしれない。そのみんなには、僕はまだふくまれていないよね?」
「祖父が死んでしまった……。もっと他に方法があったのかもしれないのに……」
刹那は嗚咽を漏らし、何度も涙を流します。時折、跳ねるゲロが、立花先生の手に付着しますが、それでも、立花先生は、優しく身を寄せていました。
「……。小学生の頃からなんです。ルールを守るように言っても、細かいとか、神経質とか、面倒くさいなんて言われて、僕は教室中のみんなから嫌われたんです。僕はクラスのためを思って、5分前行動を義務付けて守らない人を罰しただけなのに。みんな怠け者なんだ……。みんなが怠け者だから、今度だって目標を達成できなかった……。エルドラドなんかが無くたって、他にもっと何か別の物で助けられたかもしれないのに……」
「小学生の時のそれは、いつのころの話し?」
「小学校一年生の時です……」
「そのころの子供はまだ、協調ができる年ではない子も多いんだ。だから、その時はできなくてみんな反発したんだと思うよ」
「そんなわけない……。僕はできてた……」
「君は特別だったんだよ。他にもあるの?」
「中学生の時、クラスの平均点が低くくて、僕はこんな教室にいると祖父に知られるのが恥ずかしくて、クラスの平均点を上げるために、みんなに勉強するように言ったんです。でも、みんな怠け者で……」
「勉強にも得意とか不得意とかがあるんだよ」
「そんなわけない! だって、中学の先生はみんなには無限の可能性があるって、頑張ればできるって言ってた!! だから、僕以外みんな怠け者なんだ!! 祖父が死んだのだって、周りが頑張らないせいで可能性を潰したせいなんだ! やればできることなのに、みんなが頑張らないで足を引っ張るせいで、いつも頑張ってる僕らが割を食らうんだ! どんな時でも毎回僕だけが頑張ってる!」
刹那君は、自分の思い通りにならなかった怒りを、周りに当たって解消しようとしているのでした。そのことに立花先生は気づき、優しく抱きしめます。
「そうだね。たしかにみんなには無限の可能性があるよ」
「クソッ!!」
「他には?」
「この学園だってそうだ! 成績で一位をとっても、あんなできないトロい奴と組まされて、ダンジョンだってろくに進めやしない!」
「君は賢いんだね」
「違う。努力しているからだ!」
「じゃあ、才能があるんだ」
「才能なんて、あっても、努力しなきゃ意味がない。僕は努力家なんだ!!」
「そうだね……。ちょっと今、君が読むべきかは分からないけれど、いつか君は読むべきものだと思う本を渡そうと思う。落ち着いたら読んでみて」
そう言って、立花先生が持ってきたのは、行動遺伝学の本でした。
刹那君は、傍から見て分かるほどに顔から血の気を失って倒れてしまい、与一とシーア君が保健室に運びこまれます。
「刹那! おいしっかり!」
与一が保健室の扉を力強く開けます。
急に扉が開いたことで、立花先生はびっくりして椅子から飛び跳ねました。どうやら、お茶とお菓子を一緒に食べて落ち着いていたところのようでした。
「どうしたんだい!?」
「先生。刹那が気絶しました! ベッドに休ませてあげてください!」
「ああそれなら、そこに。怪我とかはしてない?」
「頭は倒れた時に打ったと思います」
「なんで気絶したんだい?」
「刹那のおじいさんが死んだんです。そのショックで倒れたんです」
「まあ、君たちも心配だろうけど戻りなさい。あとは僕が見ておくから」
「ありがとうございます!」
立花先生は、刹那の脈と瞳孔の動きを確認したあと、しばらく様子をみました。
それから30分もしなうちに起き上がった刹那の様子を見て、立花先生は、
「起きたかい? 急に倒れたって聞いたけど、気分はどう?」
そう立花先生が聞くと、刹那君はベッドの上でゲロを吐いてしまいました。
慌てて、立花先生は刹那君にゴミ箱を渡します。
ひとしきり吐いた後、刹那は泣き続けました。
立花先生は、そんな刹那の傍にいて身を寄せています。
立花先生の手に、ゲロが付着しているのに気づき、刹那が謝りますが、立花先生は嫌な顔一つしないどころか優しくありました。
「ごめんなさい。ティッシュを……」
「大丈夫だよ。気にしないで。シーツのことも大丈夫だから。後で洗っておくからさ」
「すみません……」
「何か飲み物が欲しければ持ってくるよ?」
「祖父が死んでしまったんです……」
立花先生の言葉を遮って刹那君はそう言いました。
「それは辛いね……」
「……。僕はいつも、周りに足を引っ張られるんです……。みんなが努力しないせいで、僕だけがいつも割を食らっているんだ……。みんながもっと頑張っていれば、もっと早くにエルドラドの秘宝に近い物だって手に入れられたかもしれないのに……」
「……、というと?」
「みんな俺に協力しようとしない……。努力もしないのに……」
「特に誰がだい?」
「みんなだよ……」
刹那君の話しは要領を得ませんが、祖父が死んだショックで動揺しているのでしょう。こうして、刹那君が話しているのも、自分の心を整理しようとしてのことでした。
「僕は臨床心理士の資格も持っているんだ。カウンセリングだってできるよ。人と相談したら楽になれるかもしれない。そのみんなには、僕はまだふくまれていないよね?」
「祖父が死んでしまった……。もっと他に方法があったのかもしれないのに……」
刹那は嗚咽を漏らし、何度も涙を流します。時折、跳ねるゲロが、立花先生の手に付着しますが、それでも、立花先生は、優しく身を寄せていました。
「……。小学生の頃からなんです。ルールを守るように言っても、細かいとか、神経質とか、面倒くさいなんて言われて、僕は教室中のみんなから嫌われたんです。僕はクラスのためを思って、5分前行動を義務付けて守らない人を罰しただけなのに。みんな怠け者なんだ……。みんなが怠け者だから、今度だって目標を達成できなかった……。エルドラドなんかが無くたって、他にもっと何か別の物で助けられたかもしれないのに……」
「小学生の時のそれは、いつのころの話し?」
「小学校一年生の時です……」
「そのころの子供はまだ、協調ができる年ではない子も多いんだ。だから、その時はできなくてみんな反発したんだと思うよ」
「そんなわけない……。僕はできてた……」
「君は特別だったんだよ。他にもあるの?」
「中学生の時、クラスの平均点が低くくて、僕はこんな教室にいると祖父に知られるのが恥ずかしくて、クラスの平均点を上げるために、みんなに勉強するように言ったんです。でも、みんな怠け者で……」
「勉強にも得意とか不得意とかがあるんだよ」
「そんなわけない! だって、中学の先生はみんなには無限の可能性があるって、頑張ればできるって言ってた!! だから、僕以外みんな怠け者なんだ!! 祖父が死んだのだって、周りが頑張らないせいで可能性を潰したせいなんだ! やればできることなのに、みんなが頑張らないで足を引っ張るせいで、いつも頑張ってる僕らが割を食らうんだ! どんな時でも毎回僕だけが頑張ってる!」
刹那君は、自分の思い通りにならなかった怒りを、周りに当たって解消しようとしているのでした。そのことに立花先生は気づき、優しく抱きしめます。
「そうだね。たしかにみんなには無限の可能性があるよ」
「クソッ!!」
「他には?」
「この学園だってそうだ! 成績で一位をとっても、あんなできないトロい奴と組まされて、ダンジョンだってろくに進めやしない!」
「君は賢いんだね」
「違う。努力しているからだ!」
「じゃあ、才能があるんだ」
「才能なんて、あっても、努力しなきゃ意味がない。僕は努力家なんだ!!」
「そうだね……。ちょっと今、君が読むべきかは分からないけれど、いつか君は読むべきものだと思う本を渡そうと思う。落ち着いたら読んでみて」
そう言って、立花先生が持ってきたのは、行動遺伝学の本でした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる