聖剣学園の魔剣の鬼~最高の学舎に入る剣の鬼~

暁ウサギ

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第一話 列車の中にて

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「殺せ!殺せぇ!!」

 ―――五月蝿い。

「た、助けてくれ……!」

 ―――黙れ。

「か、金なら幾らでもやる!だから殺さないで」

 ―――喚くな。

 五月蝿き者を貫き、黙らぬ者を潰し、喚く者を切り裂く。屍を踏みつけ、俺は屍たちの中を歩く。

 河は血と臓物で醜く汚れる。

 焼け野はらには焼けた死体の臭いが充満する。

 都市は火の手が上がり、子供が泣く。

 忘れるな、この光景。

 ―――分かっている。

 忘れるな、己の罪。

 ―――分かっている。

 忘れるな、お前の手は―――血で汚れている。


「……全く、酷い夢だよ」

 一定のタイミングで動くベッドから起き上がり、悪夢に苛まれる頭を手で押さえながらメガネを着け、備え付けの鏡に映る自分の姿を観る。

 病的に白い髪、血のように紅い瞳、鋭い目付き。それが俺の特徴だった。

 俺の名前はリューク。十六歳。何処にでもいる、普通の少年だ。

「この部屋とも、今日でお別れか……」

 ベッドから起き上がり服に着替え鉄のロングソードを腰に携えると個室から出て細い通路を歩く。

 通路には既に多くの同年代と思われる人たちが喋っていたためその中に紛れ込む。

 この中に友人がいる訳でもないし、それなら人混みの中に紛れ込み気配を擬態させる方が気が楽だしな。

(数日間の旅のせいで体の方の調子は少し悪いな)

 この寝台列車は案外揺れ、個室も狭く運動したり勉強したりするのは少し難しい。しかし、これはとある試験を受ける者たち全員が通るものだから仕方ないとしか言えない。

「あの……貴方も一人ですか?」

「そうだけど……それがどうかしたのか?」

 一人、壁に寄りかかりながら電車の揺れを楽しんでいると少女が話しかけてきた。

 美しい少女だ。

 金色の髪を肩まで伸ばし、一房だけ左肩の方に尻尾のように鈴のついた糸で纏め、碧眼の瞳は優しく、人形と見間違える程に可愛らしい顔には微笑みが浮かんでいる。

 身長は少し低いが胸は豊かで穏やかな雰囲気と合間って『教会』の最高指導者に匹敵する聖女のようにも見える。もし、『教会』に入っていればそっちの道に進んでいたかもしれない、そう思えてしまう人物だ。

「お隣、良いですか?」

「構わないが……」

 隣に立ち少し眠そうな眼を手で擦る。その様子を少し見た後、腰を見る。

 腰には他の同年代と同じようにフルーレより太く、ロングソードに比べて薄い鉄の剣が携えられている。

 この人も俺や他の連中と同じように試験の参加者なのか。

「剣、よく手入れされてるな」

「はい。私、剣の手入れが趣味なんです」

 剣の手入れが趣味……成る程、鞘の方にかなり使い込まれた跡があっから聞いてみたがそうだとはな。

「真摯に剣に向きあえば剣は必ず答えてくれますので」

「まあ、それは当然だ。剣と言うのは使い手の体の一部なのだからな」

 逆に剣に真摯に向き合わなかった者には剣も答えてくれない。剣と言うのは使い手の一部であると同時に恋人のような立ち位置なのかもしれないな。

「そう言えば、お名前は何と言うんですか?」

「リュークだ。そちらは?」

「私はエリーゼです」

 互いに自己紹介をし終えたところで電車の速度はゆっくりとなり、窓から外の光景が見えてくる。

 外には大小様々な石造りの建物が建ち並び、朝早くから多くの人たちが行き交っている。

「ふわぁ……」

「寝不足なのか?」

「いいえ、朝が弱いだけです……」

 あくびをし溢れた涙を手で拭うエリーゼを見ながら興味を覚える。

 剣の実力は兎も角、その優しい性格がこの地獄のような世界調でどれだけ通じるのか。どれだけ自分の意思を貫けるのか、それを見ているのは楽しそうだ。

「それでは、次会う時は合格してましょう」

「―――ああ」

 電車が止まる直前、互いに拳を突き出しそれぞれの拳を拳に当てる。当てた後、完全に止まった電車から人の流れに逆らわず駅から出る。

 エリーゼとは完全に離ればなれになってしまったが……まあ、会うときがあれば会えるだろうな。エリーゼはそれなりに強いのだから。

「……凄いな」

 駅から出て真正面にある荘厳な建物に地方の出身者は全員目を見張り、後ろから歩いてくる人たちに押され建物の門をくぐる。

 ここはカリバーン聖剣学園。世界に五つある最高峰の学舎一つ。世界に散らばる伝説の剣士たちが使った五つの聖剣が眠りつく場所の一つであり、入学者は日夜聖剣の使い手となるために研鑽を積む。

 ―――今日、その学舎に俺らは入る。そして、一つの運命が再び回り始める。


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