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番外編
ギスギスバレンタインデー
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和紗が心を開いている演技をしている期間中の話です。
「はいこれ。バレンタイン。日本では女から男にあげるのが通例なの」
私は部屋に入ってきたアレクに雑なラッピングをしたチョコレートを渡す。
本当は私を監禁したこんな男にチョコなど渡したくはない。このチョコレートだって猛毒を入れたやりたい気分だ。
だけどご機嫌取りのために私はチョコを準備した。
この男は私を好きと言って自分の家に私を監禁した。閉じ込められて数ヶ月が経った。
私には夢があった。
大学を卒業して女子アナになる。そして素敵な芸能人もしくはスポーツ選手と結婚して誰もが羨む女性になりたかった。
ルーマニアの留学だってただのエピソード作りだったのだ。
それなのにこの男のせいで私は夢を失ったのだ。
今でもはらわたが煮えくりかえって仕方がない。
しかし今は心を開いたふりをしてコイツの信用を勝ち取らなくてはいけない。
実際に作戦は上手くいっており、手錠も足枷も外され、一部の部屋以外ならば自由に動き回れるようになっている。
いつかこいつを殺してここから逃げてみせる。そのためにはもっと信頼させて隙を見つけなくてはならない。
「これを僕にかい?」
アレクは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして私に問いかけた。
眼鏡が似合う知的な雰囲気と柔和さが混じった容貌が戸惑いで崩れているのはちょっとおかしい。
「そうよ」
「ありがとう。嬉しいよ。和紗からプレゼント貰えるとなんて思っていなかったからすごく嬉しい」
そう言ってチョコレートの箱をギュッと抱きしめて、嬉しそうに笑う姿はとてもじゃないが私を監禁した極悪な男とは思えない。
そもそもアレクだって容姿だけならば一級品なのだ。
銀幕のスターでもおかしくないくらいにはスタイルも顔もいい。
実際は芸能人でもなんでもなくただの図書館員だけど。
「ルーマニアだとバレンタインは男性から女性へプレゼントを贈る日なんだ。だからこうして和紗からプレゼントを貰うと嬉しいけど不思議な気分だな。僕もバレンタインにプレゼントを買ってきたんだ」
そう言ってアレクはちょっと待っててと言って部屋を出ていく。
たしかルーマニアはバレンタインは男性から女性にプレゼントをあげる風習だった。
少しするとアレクが白い薔薇の花束を抱えて戻ってくる。
「和紗、バレンタインのチョコレートありがとう。僕からも受け取ってほしい」
そう言ってアレクは白い薔薇の花束とこれまた白い高級感のある紙の箱を渡してきた。
小さな箱は香水だろう。
パルファムって箱に英語で書いてある。
「アレクからバレンタイン貰えるなんて思ってなかったから嬉しい。箱を開けてみてもいいかしら?」
もちろん大嘘。
日本にいた時からモテた私は花なんて腐るほどもらってきた。
正直。花なんて邪魔なだけだ。
香水だって好みのものじゃなければ一生つけることない。
それどころかフリマアプリに出して売ってしまう。
箱を開けると上品なデザインの香水が姿を現す。
薄オレンジ色のガラス瓶に金色の凝ったデザインの蓋と入れ物だけで高級品とわかる。
試しにプッシュして香りを嗅いでみる。
爽やかな柑橘系の香りと花のフローラル系の香りが混じったものだった。
甘すぎず、爽やかすぎないそれは親しみを感じるけど上品な女性を思わせる物だ。
悔しいけれど私好みだった。
「どうかな。気に入ってくれたかな? 要らなかったら捨ててもいいよ。女性にプレゼントをあげるのは初めてなんだ」
少し照れ臭そうに喋る青年の姿は人間を1人誘拐し監禁した凶悪な男とは程遠い。
もしアレクを好きになっていたらどうなっていたのだろうか。
きっとお姫様のように溺愛されたのだろうと思う。
「ありがとう。とっても嬉しいわ。大切にするね」
私は笑顔の仮面を張り付ける。
だって私がアレクを好きになる事はきっと一生ない。
こいつは私から全てを奪った。大好きな両親も夢も友達も恋人も監禁されてからは会うことも話すこともできないのだ。
その日からアレクに対する情は完全に消え失せた。
いい相談相手と思っていたのに私は裏切られたのだ。あの時私が裏切られた苦しみをこいつだって知ればいいのだ。
私が生きる原動力はこいつに一泡吹かせてやることだけなのだ。
「はいこれ。バレンタイン。日本では女から男にあげるのが通例なの」
私は部屋に入ってきたアレクに雑なラッピングをしたチョコレートを渡す。
本当は私を監禁したこんな男にチョコなど渡したくはない。このチョコレートだって猛毒を入れたやりたい気分だ。
だけどご機嫌取りのために私はチョコを準備した。
この男は私を好きと言って自分の家に私を監禁した。閉じ込められて数ヶ月が経った。
私には夢があった。
大学を卒業して女子アナになる。そして素敵な芸能人もしくはスポーツ選手と結婚して誰もが羨む女性になりたかった。
ルーマニアの留学だってただのエピソード作りだったのだ。
それなのにこの男のせいで私は夢を失ったのだ。
今でもはらわたが煮えくりかえって仕方がない。
しかし今は心を開いたふりをしてコイツの信用を勝ち取らなくてはいけない。
実際に作戦は上手くいっており、手錠も足枷も外され、一部の部屋以外ならば自由に動き回れるようになっている。
いつかこいつを殺してここから逃げてみせる。そのためにはもっと信頼させて隙を見つけなくてはならない。
「これを僕にかい?」
アレクは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして私に問いかけた。
眼鏡が似合う知的な雰囲気と柔和さが混じった容貌が戸惑いで崩れているのはちょっとおかしい。
「そうよ」
「ありがとう。嬉しいよ。和紗からプレゼント貰えるとなんて思っていなかったからすごく嬉しい」
そう言ってチョコレートの箱をギュッと抱きしめて、嬉しそうに笑う姿はとてもじゃないが私を監禁した極悪な男とは思えない。
そもそもアレクだって容姿だけならば一級品なのだ。
銀幕のスターでもおかしくないくらいにはスタイルも顔もいい。
実際は芸能人でもなんでもなくただの図書館員だけど。
「ルーマニアだとバレンタインは男性から女性へプレゼントを贈る日なんだ。だからこうして和紗からプレゼントを貰うと嬉しいけど不思議な気分だな。僕もバレンタインにプレゼントを買ってきたんだ」
そう言ってアレクはちょっと待っててと言って部屋を出ていく。
たしかルーマニアはバレンタインは男性から女性にプレゼントをあげる風習だった。
少しするとアレクが白い薔薇の花束を抱えて戻ってくる。
「和紗、バレンタインのチョコレートありがとう。僕からも受け取ってほしい」
そう言ってアレクは白い薔薇の花束とこれまた白い高級感のある紙の箱を渡してきた。
小さな箱は香水だろう。
パルファムって箱に英語で書いてある。
「アレクからバレンタイン貰えるなんて思ってなかったから嬉しい。箱を開けてみてもいいかしら?」
もちろん大嘘。
日本にいた時からモテた私は花なんて腐るほどもらってきた。
正直。花なんて邪魔なだけだ。
香水だって好みのものじゃなければ一生つけることない。
それどころかフリマアプリに出して売ってしまう。
箱を開けると上品なデザインの香水が姿を現す。
薄オレンジ色のガラス瓶に金色の凝ったデザインの蓋と入れ物だけで高級品とわかる。
試しにプッシュして香りを嗅いでみる。
爽やかな柑橘系の香りと花のフローラル系の香りが混じったものだった。
甘すぎず、爽やかすぎないそれは親しみを感じるけど上品な女性を思わせる物だ。
悔しいけれど私好みだった。
「どうかな。気に入ってくれたかな? 要らなかったら捨ててもいいよ。女性にプレゼントをあげるのは初めてなんだ」
少し照れ臭そうに喋る青年の姿は人間を1人誘拐し監禁した凶悪な男とは程遠い。
もしアレクを好きになっていたらどうなっていたのだろうか。
きっとお姫様のように溺愛されたのだろうと思う。
「ありがとう。とっても嬉しいわ。大切にするね」
私は笑顔の仮面を張り付ける。
だって私がアレクを好きになる事はきっと一生ない。
こいつは私から全てを奪った。大好きな両親も夢も友達も恋人も監禁されてからは会うことも話すこともできないのだ。
その日からアレクに対する情は完全に消え失せた。
いい相談相手と思っていたのに私は裏切られたのだ。あの時私が裏切られた苦しみをこいつだって知ればいいのだ。
私が生きる原動力はこいつに一泡吹かせてやることだけなのだ。
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