奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される

葉空

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奴隷商人と皇太子

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「俺にとって、空杜は光だよ。」

俺の髪をすくように彼は手を動かす。

「急にどうしたの?」
「急じゃないよ。」

彼の腕から頭を離して身体を起こそうとすると、再び寝かせられる。

「…俺さ、22年間、誰のことも好きにならなくて、恋なんて出来ないんじゃないかって思ってた。」

そんなこと言ったら俺の方が当てはまる気がする。玲於の容姿なら、女性がほっとくはずがないのだから。

「でも、空杜が変えてくれた。それに、俺が良い皇帝になって皆んなが笑える国にしたいと思ったのも空杜のお陰。」
「俺?」
「そう。空杜が子ども達のために動く姿を見て、俺もこんな風になりたいって思った。」

そんなこと初めて言われた。俺のような汚い家業をしていた者に憧れる人なんているはずがない。でも、玲於が嘘を言ってないということはこれまで過ごしてきて分かっていた。

「本当に変わってるよ。」

声が震えてしまう。誰かに頑張りを認めて貰えるのってこんなに嬉しいことなんだって思った。

「そうかな?普通だと思うけど。」
「普通なら、皇太子が奴隷になんてならないよ。」
「確かに。わざと怪我して、あいつに捕まってやるのも初めての経験だったな。」

思い出して可笑しそうに笑う姿に呆れてしまう。初めての経験というが、普通は生涯経験するはずのないことを彼は自らやったのだ。

そっと涙を拭かれる。俺って、いつからこんなに涙脆くなったんだろうと疑うレベルで弱虫になった。

「だから、空杜の本当の名前も俺は好きだよ。」
「っ、あんな名前を俺には似合わない…」

光、光を運ぶものを意味するこの名前が嫌いだった。親が忌み嫌われる存在の自分に皮肉のために付けた名前だと実感して嫌だった。

「そんなことないよ。俺にとってはまさに名前そのものなんだから。」

首を振ると優しく微笑まれる。彼はいつだって眩しくて、自分を孤独から救い出してくれる。本当の名前など、出会った時にしか教えていないのに今でも覚えていてくれる。

「だから、俺だけにはその名前を呼ばせてくれないか?俺も特別な名前で呼びたい。空杜もソラもアリマも他に呼ぶ人がいるからな。」

自分と同じく嫉妬してくれる彼が嬉しくて仕方がなかった。そんなの俺の答えは1つに決まっている。

「よんで、ほしい。リアムには…その名前で呼んで欲しい。」

「ありがとう、ルーカス。」

不思議だ。ずっと呼ばれることが不快で怖かったのに彼に呼ばれると愛おしいものに感じる。名前を呼ばれると打たれることを意味していたのに、今では自分を特別に想っているよっと教えてくれる感覚に駆られる。

「ルーカス。」

涙が止まらなかった。俺はこの時、ようやく暗闇から救われたのだと思った。嘘みたいに心が軽い。あれほど、寂しくて辛かった思いも微塵も感じない。

「リアム、大好き、誰よりも愛してる。」
「嬉しい。でも、そうでないと困るよ。」

絡められた手の甲に口付けを落とされる。それに自然と頬は緩んでしまう。

「…ねえ、お願いがある。」
「ルーカスの頼みなら何でも聞くよ。」

その言葉に笑ってしまう。

「なら、お墓に一緒に入ろって言っても叶えてくれるの?」

皇族がこんな身分の低い者と共にすることさえ許されるはずがなかった。しかも、お墓に入ろうということは来世でも共に過ごすことを願う意味を表す。

でも、俺が生まれ育ったログナート帝国の皇族は普通とは違った。

「そんなん当たり前だろ?てかっ、それは絶対するから。あー、でも父さんや母さんだけでなく、あの3人も一緒にしろって言ってきそうだな。」

そうだったら嬉しいと思った。リアム、皇帝陛下、皇后陛下、そしてセス、カール、ウィルと来世でも同じになれるならこの上なく幸せなことだろう。

でも、もちろん俺はまだいかない。この人の傍で幸せになって、それ以上に幸せにしてみたかった。

「玲於。」
「ん?」
「俺、あと2日で一旦意識失うことになる。」
「は?」

ぽかんと口を開けて間抜け顔を晒してくる。でも、普通は意味が分からなくて仕方がないのだろう。未だに俺も実感が湧かないのだから。

「俺の中に混ざっている血は原初の悪魔の血縁者のものなんだって。それで、俺の中から出ていってもらうために俺は一回眠ることになった。」

玲於は意味が分からないという表情をする。でも、俺の真剣な表情に嘘ではないことが分かるとどういうことなのか説明を求めてきた。だから、俺は王と交わした話について説明をした。自分がネックレスをセスにあげたことで、悪魔に侵食されたことは伏せて。
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