奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される

葉空

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奴隷商人と皇太子

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「ルーカスちゃん、おめでとう!」
「皇ご「ん"?」お母様!」

一気に冷たい雰囲気を醸し出されたので慌てて言い直すと一瞬にして柔らかな微笑みへと変わる。それに夫である皇帝は声を出して笑う。

「はは、ルーカスちゃんおめでとう。」
「ありがとうございます。」
「俺は言ってくれないのか?」
「お、父様。」

2人は何かと会う度にそう呼ばせようとしてくる。こちらも人前で言うのは流石に気まずくて逃れようと思惑しているが上手くいった試しがない。

「ルーカスちゃん、おいで!」
「私のところにも。」
「大丈夫です!」

両手を広げ、胸に飛び込んでくるように言われるが全力で首を横に振った。ただでさえ視線が集中しているのに、これ以上恥ずかしい思いはしたくなかった。

特にノアやカールの前ではやりたくない。

「皇帝陛下と皇后陛下に失礼だから、行ってこいよ!」
「そうだ!ノアの言う通りだ!」 
「お前らはうるさい!」

2人はすぐ悪ノリをして、後で揶揄う材料を増やそうとするのだ。こう言われては尚更、やりたくない。

どうしようかと思い悩んでいると、見覚えのある後ろ姿が視界に映る。久しぶりの姿に胸が弾み、ノアとカールを皇帝と皇后の方に押し出すと俺はそっちに走り寄った。

足音か気配に気付いたのか、彼はこちらに身体を向けると両手を広げて待ち構えてくれる。だから、安心して彼の胸に飛び込むことが出来た。

「兄ちゃん!」
「ルーカス、誕生日おめでとう。」
「ありがとう!久しぶり!」
「ああ。」

挨拶を交わして身体を離すと、彼の背後にラドリエン帝国の皇帝であるイーサンと部下であるベルクとブレアンもいた。

「3人もいらっしゃい。」
「普通、一纏めして挨拶するか?まあ、誕生日おめでとう。」

イーサンの言葉に続くように2人からもお祝いの言葉を受け取る。

「ありがとう!で、兄ちゃんはいつ帰ってくるの?」
「あと、数ヶ月は無理だな。」
「そっかー。」

少し残念だが、セスの楽しそうな顔を見ると仕方がないと諦めがつく。

セスはまだラドリエン帝国で過ごしている。剣術や武術を習うためだ。やりとりを行っている手紙には、こちらの形と違うらしく学ぶことが面白いと書かれていた。

「今はどれくらい強い?」
「今はイーサン以外には勝てるようになった。」
「え、凄いじゃん!」
「まだ、俺には1度も勝ってないけどな。」

イーサンはセスの頭を上から潰すように力を加える。少し低くなった彼はイーサンに殺気を向けているが、当の本人は痛くも痒くもないと言うように頭をぐちゃぐちゃと撫でる。

「ルーカスは元気か?」
「元気ですよ。」
「そうか。」

どこか安心した表情を見せると彼は目尻を下げて優しい微笑みを浮かべて手を伸ばしてくる。でも、その手は俺に触れることなく空中で止まる。

「相変わらずだな。」
「そちらこそ、いい加減触ろうとしないで下さい。」

睨み合う2人のやりとりにはもう慣れてしまった。

「リアム、手を離して。」
「分かったよ。」

大人しく言うことを聞いたリアムに微笑むと彼の手を握り締める。でも、すぐに手を離されて恋人繋ぎへと直される。

「セス、元気か?」
「ああ。」

2人は身体を寄せると互いに軽く背中を叩いて離れる。それだけで、強い絆があるのだと見ているだけで感じた。

それが羨ましく思うが、自分だって特別な立ち位置にあることを知っているのでやきもちはそこまで焼かなかった。

「それじゃー、ルーカス前に行こう。」
「分かった!」

主役である自分が今日のパーティーを開会することを宣言することになっている。未だにこんなに人が集まっていることは慣れないが、気持ちが昂っているせいかテンションが高くなっている自信があった。

楽しくて、嬉しくて仕方がない。

周囲が自分に向けてくれる視線が温かかった。繋がれた温もりが優しくて、愛おしかった。自分が生きてて良かったと思え始めた瞬間だった。

リアムと共に皆んなの前に立つ。

ここで出会った人達がじっと見つめてくれる。専属護衛となってから出会った者達だけでなく、自分が故郷で出会った人達まで来てくれた。

ここにいる人達は自分を奇怪な存在ではなく、ずっと普通の人間として関わってくれる。それがどんなに有難くて嬉しくて仕方がないことだろうか。

「皆様、本日は私のためにお越し頂きありがとうございます。これほど、多くの方々に祝杯を挙げて頂けることになり、嬉しく思います。皆様と出会えたことが私の人生で何よりの宝物です。どうか、今後とも宜しくお願い致します!」

本当はもっと伝えたいことがある。でも、あまり長々と開会の言葉を言いたくないので短く纏める。

頭を下げると大きな拍手が耳に届いて、泣きたくなった。いや、泣いてしまった。

泣き顔を見られたくなくてリアムの背後に隠れるように動くと、会場が騒つく声が聞こえてくる。笑っている声や祝福の言葉をあげる声、揶揄う声が聞こえてくる。

「ルーカス。」
「前向け…」
「えー、嬉し泣きしてる姿見たいんだけど。」
「うるさい…」
「はいはい。」

頭をポンポンと撫でると彼は言った通りに前を向く。

ーああ、好きだ、大好きだ。

胸が苦しいが別に嫌じゃなかった。どこか心地が良いとさえ感じてしまう。

俺はこの人とずっと一緒にいたい。自分を救ってくれて、幸せを与えてくれるこの人にずっとついていきたい。

いや、彼の隣に立ち続けられるように胸を張って生きていきたいんだ。
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