51 / 52
厭人の王と人間の僕
2
しおりを挟む
「ぴゃってなんだよ」
全身黒ずくめの青年はクスクスとおかしそうに笑うと、目の前でしゃがみ込んだ。
青年は紫色の瞳を細めながら、首を傾げるとただじっと僕を見てきた。それはそれはこちらが恥ずかしくなるレベルにじーっとだ。
だから耐えられなくなった僕が先にこの空間を打破するべく言葉を発した。
「お兄さんっ!」
「お兄さん?」
青年は自分を指したので僕はコクコクと頷いた。
すると、彼が無表情になってしまったので、僕はまたひっ…と情けない声をあげることになった。
お兄さんと呼ばれるのがそんなに嫌だったのだろうか……
「な、名前を教えて下さい!」
青年は僕の言葉を聞くと今度は考え込むように視線を逸らしてしまった。
…僕はまた何かやらかしてしまったのだろうか。
もう何も話したくないと思い彼の視線を追うように背後を見ると、僕はハッとして思わず青年の裾を掴んだ。
「逃げなきゃっ!」
突然声を上げた僕に驚くように青年は肩をビクつかせると、何事かと目を瞬かせる。
「逃げる?」
「うん!逃げないと危ないから!ほらっ」
僕が森林火災の方を指さすと彼はなんの反応も示さずに再び僕を見た。
何だろう…この人、さっきから僕の言うことに疑問で返してる気がする。そんなにおかしなことは言ってないはずなのに…。
「ああ、そっか。そうだった」
青年は燃える森林を見ると1人で何やら納得したように頷く。
その横で僕は困惑して彼を見つめるばかり。
いや、何がそうなのか教えて欲しい。
そんな願いがマイペースな彼に通じるはずもない。
「まあ、もういっか」
そう言って青年が森の方に手を広げると、森を燃やしていた炎が消えてなくなった。
一瞬の出来事に呆然とする僕を青年は抱えると立ち上がった。
…あれっ?
僕の読んでいた小説物語ならきっと主人公をお姫様抱っこをする場面として描かれるだろう。だが、あいにく僕はお米様抱っこによって担ぎ上げられた。
まあ、男だからお姫様抱っこに憧れることはないけど、せめておんぶにして欲しかった。お米様抱っこはなんか雑な運び方がしてなんか嫌だ。
とはいえ、動けない僕が助けてくれる彼に注文などできるはずもなく黙って受け入れる。
というか、先ほどの光景が衝撃的すぎて何かを発する気力が起きなかったという方が正しい。
だって、瞬きしている間に鎮火したのだ。
上下逆さになった世界で再び視線を向けてみると、やはり視界の先にあるのは黒く染まった一面だけだった。
やはり見間違いなんかじゃないらしい。
これが魔法というものだろうか。1人で悶々と考え込んでいると青年が腰をポンと叩いた。
何事かと彼を見るとまた訳のわからないことを言う。
「じゃ、帰るか」
「帰る?」
帰るってどこに?と疑問に抱くと同時に今度は周囲の景色がガラリと変わった。
今度は魔法を使ってどこか部屋の一室に移動したみたいだ。青年は戸惑う僕をベッドの上に座らせるとあぐらをかいて目の前に座ったのだ。
全身黒ずくめの青年はクスクスとおかしそうに笑うと、目の前でしゃがみ込んだ。
青年は紫色の瞳を細めながら、首を傾げるとただじっと僕を見てきた。それはそれはこちらが恥ずかしくなるレベルにじーっとだ。
だから耐えられなくなった僕が先にこの空間を打破するべく言葉を発した。
「お兄さんっ!」
「お兄さん?」
青年は自分を指したので僕はコクコクと頷いた。
すると、彼が無表情になってしまったので、僕はまたひっ…と情けない声をあげることになった。
お兄さんと呼ばれるのがそんなに嫌だったのだろうか……
「な、名前を教えて下さい!」
青年は僕の言葉を聞くと今度は考え込むように視線を逸らしてしまった。
…僕はまた何かやらかしてしまったのだろうか。
もう何も話したくないと思い彼の視線を追うように背後を見ると、僕はハッとして思わず青年の裾を掴んだ。
「逃げなきゃっ!」
突然声を上げた僕に驚くように青年は肩をビクつかせると、何事かと目を瞬かせる。
「逃げる?」
「うん!逃げないと危ないから!ほらっ」
僕が森林火災の方を指さすと彼はなんの反応も示さずに再び僕を見た。
何だろう…この人、さっきから僕の言うことに疑問で返してる気がする。そんなにおかしなことは言ってないはずなのに…。
「ああ、そっか。そうだった」
青年は燃える森林を見ると1人で何やら納得したように頷く。
その横で僕は困惑して彼を見つめるばかり。
いや、何がそうなのか教えて欲しい。
そんな願いがマイペースな彼に通じるはずもない。
「まあ、もういっか」
そう言って青年が森の方に手を広げると、森を燃やしていた炎が消えてなくなった。
一瞬の出来事に呆然とする僕を青年は抱えると立ち上がった。
…あれっ?
僕の読んでいた小説物語ならきっと主人公をお姫様抱っこをする場面として描かれるだろう。だが、あいにく僕はお米様抱っこによって担ぎ上げられた。
まあ、男だからお姫様抱っこに憧れることはないけど、せめておんぶにして欲しかった。お米様抱っこはなんか雑な運び方がしてなんか嫌だ。
とはいえ、動けない僕が助けてくれる彼に注文などできるはずもなく黙って受け入れる。
というか、先ほどの光景が衝撃的すぎて何かを発する気力が起きなかったという方が正しい。
だって、瞬きしている間に鎮火したのだ。
上下逆さになった世界で再び視線を向けてみると、やはり視界の先にあるのは黒く染まった一面だけだった。
やはり見間違いなんかじゃないらしい。
これが魔法というものだろうか。1人で悶々と考え込んでいると青年が腰をポンと叩いた。
何事かと彼を見るとまた訳のわからないことを言う。
「じゃ、帰るか」
「帰る?」
帰るってどこに?と疑問に抱くと同時に今度は周囲の景色がガラリと変わった。
今度は魔法を使ってどこか部屋の一室に移動したみたいだ。青年は戸惑う僕をベッドの上に座らせるとあぐらをかいて目の前に座ったのだ。
35
あなたにおすすめの小説
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,8時,12時,18時,20時に2話ずつ更新
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる