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それから数日が経ち、体育祭当日となった。黒色のハチマキを額に付けながら、目の前の競技を見ているとこちらに手を振ってくるブラッドが目に入った。アルフは視線は向けていたが、手は振らずにいた。
そのためブラッドは自分が気付いていないと思ったのか、1着と書かれた旗を手に取ると再び大きく腕を振ってきた。
「アルフー!!」
しかも、名前付きで。こっちからしたら恥ずかしくて仕方がない。アルフは顔を隠しながら片手を上げてやると、やっと満足したようで旗を元の位置に差し戻した。
アルフはブラッドのせいで一気に注目を浴び、頬は赤く染め上がっていた。少し頬の熱を覚まそうと席から立ち上がたがそれでも周囲の視線は中々外れなかった。
少し離れた日陰に入るとようやく一息つけた。日陰の中に入り込んでいた1番手前の階段に腰を掛け、暫く休んでいると誰かが近付いてくる足音がした。誰だろうかと思い顔を上げるとそこにはリレーの練習で会った2つ年上の先輩がいた。
「おっ、ここで休んでたんだね。」
汗を流しながら近付いてきた先輩にお辞儀をすると、彼は笑顔でお疲れ様と言ってきた。自分は階段に座っているため、身長が高い先輩の顔を見上げるので首が疲れてくる。
「何ですか?」
「ん、何が?」
そう言われてもこっちが何が?って聞きたい。わざわざ目の前に立ち止まってきたのだから用があるはずだろう。
「俺に用があるからここに来たんですよね?」
「特にないけど…。まあ、アルフ殿に会いに来たからあるちゃあるかな?」
そう言うと先輩は金髪の髪を撫でてきた。正直、名前も知らない相手に触れられるのは好きじゃない。アルフはその手をそっと払い除けると、立ち上がった。そして、そのまま立ち去ろうとすると目の前を立ち塞がるように行手を阻まれる。
「…何ですか?」
再び同じ問いを口にすると今度は不快感を表すようにピクリと口角が上がる。
「だから、俺と少し話そうよ。」
「話すことはないです。」
冷めた声で伝えてこの場を後にしようと足を進めたが、腕を引っ張られてそのまま壁に押し付けられる。爪が食い込むほどに肩を押さえつけられ、思わず顔を歪める。
「もう良い加減、その演技しなくて良いから。俺にはバレバレだからさ。」
「はあ?」
眉間に皺を寄せると先輩は可笑しそうに笑う。
「だって、アルフは演技下手くそなんだもん。俺に構って欲しくて冷たく接しているの分かってるから。」
え、キモっ。コイツ何言ってんだ…。
それが真っ先に思ったことだった。内心、ドン引きしていた。
「そんな驚かなくても良いよ。だって、アルフとつるんでいる2人と俺の態度全然違うじゃん。わざわざ、冷たい態度しなくても大丈夫だから。」
片手を頬に伸ばして触れてきたので思わず鳥肌が立った。一様、先輩だから配慮はしていたが我慢の限界だった。
アルフは男の急所を蹴り上げてやろうと足に力を込めたが、それが実行されることはなかった。だって、自分よりも先に行った人物がいたから。
悶える男を物ともせずに彼は黒い瞳を近づけて笑ってきた。
「よお、やっと見つけた。」
カランは嬉しそうに目を細めるとそのまま頬にキスをしてきた。反射的に頬を叩こうとしたが呆気なく受け止められてしまう。
「…キモい。」
「これくらい良いだろ?助けてやったんだから。」
「嫌だよ。てかっ、お前の先輩だろうが。」
「俺、コイツ知らねえから。何、俺のことを出しに使ってきたわけ?」
不機嫌そうに睨む姿からどうやら本当に知らない人物らしい。
「そうみたいだな。」
「てかっ、お前も抵抗しろよ。」
「する直前だったんだよ。一足遅かったら俺がお見舞いしてたところだったのに。」
「へぇー、容赦ねえな。」
自分もやっといてよく言う。アルフはキスされた所を拭うと、会場に戻ろうと足を進めた。
前回と同じく隣を歩いてくるコイツは無視したかったが、疑問に思ったことを聞いてみた。
「なんで、あそこにいるって分かったんだ?」
「そりゃー、あんだけ注目を浴びてたんだから分かるだろ。」
そう言われても真っ先に思い浮かんだのはブラッドとの光景だった。
「やっと、待機場所が分かったのに、着いたらどっか行ってるし…。まあ、お前が人気者のお陰ですぐに居場所が割れたけど。」
「ああ、俺嫌われてるからな。」
隣の足が立ち止まったので、振り返るとカランは口を開けて阿保っ面をかましていた。
「…アルフってバカなのか?あ、天然なのか?いや、バカか。」
彼が珍しく真面目に答えたので思わず思考が停止した。失礼なことを…
「…そんなわけないだろ。皆んな俺を避けてるの知ってるだろうが?」
そう答えるとカランは納得したように首を縦に振った。
「ああ、そっちで捉えてんのか。まあ、それのがこっちは有難いけどな。」
何が言いたいのか問いたかったが、これ以上話すのも疲れるなっと思い口を閉じることにした。
「なあなあ、リレーで勝負しねえ?」
「嫌だ。」
「俺が勝ったら婚約してよ。」
「はああ?!」
自分でも思っていたよりも大きな声が出た。
「良いじゃん。アルフが勝ったら金輪際関わらないように努力をするからさ。」
「ふざけんな。そんな勝負誰がやるか。」
「逃げんの?」
「挑発しても無駄だから。」
そもそも、俺の両親がこんな奴と婚約を許すはずがない。
「なら、まずは結婚前提に付き合うからで良いや。」
「だからやら「やらないなら、俺が毎日会いに行ってやるよ。」……やだ。」
答えが分かっていたかのようにカランは笑うと、一方的に約束を取り付けて去ってしまった。
…まじで意味が分かんねえ。そもそも、なんでこれだけ冷たい態度を取ってんのに普通に来るわけ?ブラッドの我儘度と比較できないレベルじゃないか…。しかも、俺様な雰囲気があってムカつくし…
アルフは髪に手を突っ込んで大きな溜息を吐いた。そして、勝てば何も問題ないのだと思い直すことにした。
そのためブラッドは自分が気付いていないと思ったのか、1着と書かれた旗を手に取ると再び大きく腕を振ってきた。
「アルフー!!」
しかも、名前付きで。こっちからしたら恥ずかしくて仕方がない。アルフは顔を隠しながら片手を上げてやると、やっと満足したようで旗を元の位置に差し戻した。
アルフはブラッドのせいで一気に注目を浴び、頬は赤く染め上がっていた。少し頬の熱を覚まそうと席から立ち上がたがそれでも周囲の視線は中々外れなかった。
少し離れた日陰に入るとようやく一息つけた。日陰の中に入り込んでいた1番手前の階段に腰を掛け、暫く休んでいると誰かが近付いてくる足音がした。誰だろうかと思い顔を上げるとそこにはリレーの練習で会った2つ年上の先輩がいた。
「おっ、ここで休んでたんだね。」
汗を流しながら近付いてきた先輩にお辞儀をすると、彼は笑顔でお疲れ様と言ってきた。自分は階段に座っているため、身長が高い先輩の顔を見上げるので首が疲れてくる。
「何ですか?」
「ん、何が?」
そう言われてもこっちが何が?って聞きたい。わざわざ目の前に立ち止まってきたのだから用があるはずだろう。
「俺に用があるからここに来たんですよね?」
「特にないけど…。まあ、アルフ殿に会いに来たからあるちゃあるかな?」
そう言うと先輩は金髪の髪を撫でてきた。正直、名前も知らない相手に触れられるのは好きじゃない。アルフはその手をそっと払い除けると、立ち上がった。そして、そのまま立ち去ろうとすると目の前を立ち塞がるように行手を阻まれる。
「…何ですか?」
再び同じ問いを口にすると今度は不快感を表すようにピクリと口角が上がる。
「だから、俺と少し話そうよ。」
「話すことはないです。」
冷めた声で伝えてこの場を後にしようと足を進めたが、腕を引っ張られてそのまま壁に押し付けられる。爪が食い込むほどに肩を押さえつけられ、思わず顔を歪める。
「もう良い加減、その演技しなくて良いから。俺にはバレバレだからさ。」
「はあ?」
眉間に皺を寄せると先輩は可笑しそうに笑う。
「だって、アルフは演技下手くそなんだもん。俺に構って欲しくて冷たく接しているの分かってるから。」
え、キモっ。コイツ何言ってんだ…。
それが真っ先に思ったことだった。内心、ドン引きしていた。
「そんな驚かなくても良いよ。だって、アルフとつるんでいる2人と俺の態度全然違うじゃん。わざわざ、冷たい態度しなくても大丈夫だから。」
片手を頬に伸ばして触れてきたので思わず鳥肌が立った。一様、先輩だから配慮はしていたが我慢の限界だった。
アルフは男の急所を蹴り上げてやろうと足に力を込めたが、それが実行されることはなかった。だって、自分よりも先に行った人物がいたから。
悶える男を物ともせずに彼は黒い瞳を近づけて笑ってきた。
「よお、やっと見つけた。」
カランは嬉しそうに目を細めるとそのまま頬にキスをしてきた。反射的に頬を叩こうとしたが呆気なく受け止められてしまう。
「…キモい。」
「これくらい良いだろ?助けてやったんだから。」
「嫌だよ。てかっ、お前の先輩だろうが。」
「俺、コイツ知らねえから。何、俺のことを出しに使ってきたわけ?」
不機嫌そうに睨む姿からどうやら本当に知らない人物らしい。
「そうみたいだな。」
「てかっ、お前も抵抗しろよ。」
「する直前だったんだよ。一足遅かったら俺がお見舞いしてたところだったのに。」
「へぇー、容赦ねえな。」
自分もやっといてよく言う。アルフはキスされた所を拭うと、会場に戻ろうと足を進めた。
前回と同じく隣を歩いてくるコイツは無視したかったが、疑問に思ったことを聞いてみた。
「なんで、あそこにいるって分かったんだ?」
「そりゃー、あんだけ注目を浴びてたんだから分かるだろ。」
そう言われても真っ先に思い浮かんだのはブラッドとの光景だった。
「やっと、待機場所が分かったのに、着いたらどっか行ってるし…。まあ、お前が人気者のお陰ですぐに居場所が割れたけど。」
「ああ、俺嫌われてるからな。」
隣の足が立ち止まったので、振り返るとカランは口を開けて阿保っ面をかましていた。
「…アルフってバカなのか?あ、天然なのか?いや、バカか。」
彼が珍しく真面目に答えたので思わず思考が停止した。失礼なことを…
「…そんなわけないだろ。皆んな俺を避けてるの知ってるだろうが?」
そう答えるとカランは納得したように首を縦に振った。
「ああ、そっちで捉えてんのか。まあ、それのがこっちは有難いけどな。」
何が言いたいのか問いたかったが、これ以上話すのも疲れるなっと思い口を閉じることにした。
「なあなあ、リレーで勝負しねえ?」
「嫌だ。」
「俺が勝ったら婚約してよ。」
「はああ?!」
自分でも思っていたよりも大きな声が出た。
「良いじゃん。アルフが勝ったら金輪際関わらないように努力をするからさ。」
「ふざけんな。そんな勝負誰がやるか。」
「逃げんの?」
「挑発しても無駄だから。」
そもそも、俺の両親がこんな奴と婚約を許すはずがない。
「なら、まずは結婚前提に付き合うからで良いや。」
「だからやら「やらないなら、俺が毎日会いに行ってやるよ。」……やだ。」
答えが分かっていたかのようにカランは笑うと、一方的に約束を取り付けて去ってしまった。
…まじで意味が分かんねえ。そもそも、なんでこれだけ冷たい態度を取ってんのに普通に来るわけ?ブラッドの我儘度と比較できないレベルじゃないか…。しかも、俺様な雰囲気があってムカつくし…
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