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「ふぇ?!…っ……」
間抜けな声が口から溢れてしまい慌てて口を隠す。ピクリと動いた眉はまた元の位置に戻り、彼が眠っていることを物語らせる。始めはこの状況に困惑していたが、次第に眠る前のことを思い出して現状を理解する。
…本物だ。ヒスイさんがいる。
そう思うだけでなんだか泣きたくなった。ここ数日が嘘みたいに今は心が満たされている。
「やっぱり、好きだな。」
自然と出た言葉だった。
とりあえず朝食を作ろうかと思い、腕を退けようとするとピクリとも動かせない。自分の非力さに悲しくなってくると、クスリと笑う声がする。
「普通は起きてるって気付くのに。」
「っ…!」
目覚めから良いものを見れたが、笑顔が眩しくて思わずヒスイさんに背を向けてしまう。まあ、そのせいで余計に身体は密着されてしまったのだが…
「ヒスイさん、離して下さい。」
「嫌だ。」
お腹に回されていた手を外そうとすると逆に自分の手と絡められる。
「身体の調子はどう?」
「お陰様で元気ですよ。朝食用意するんで退いて下さ、ヒッ!…」
急に耳に息を吹きかけられてびっくりして振り返ると、悪戯っ子の笑みを浮かべていた。
「…なんか、意地悪になってませんか?」
「そう?まあ、ルカには俺のことを知ってもらいたいから、心のままに行動はしているかな。」
「すみません、よく分からないです。」
「簡単に言うと、ルカは特別な人として接してるね。ルカも俺に好きなだけ甘えていいよ。俺が好きなんでしょ?」
「はあ?!」
「せっかくなら、俺の目を見て言って欲しいけどね。」
顔がどんどん熱くなっていく。ヒスイさんの手がようやく緩んだので、顔を隠すように布団に丸まる。まさか、その時から起きているとは思わなかった。
「ルカは寝てて。俺が作るから。」
「え?」
布団から顔を出すとヒスイさんに頭を撫でられる。
「毎日美味しいもの作って、太らせてあげるよ。」
「俺、デブにはなりたくないです。」
「ルカはポッチャリしててもかわいいと思うけど。」
「俺が作り「寝てて。」…い"っ……」
おでこを指で弾かれて押さえると、ヒスイさんは笑って台所の方へと向かって行った。
正直、お腹はあまり空いていない。空腹感はあるが、食べたいとは思わないのだ。でも、ヒスイさんのご飯は食べたいなとは思った。
「あれっ…ヒスイさん、毎日って……」
彼が言った言葉を思い返すと、俺はベッドから飛び起きてヒスイさんの元に向かった。勢い良くリビングの扉を開けると、ヒスイさんは驚きとどこか呆れたような視線を向けてくる。
「寝てろって言ったのに。」
俺は駆け寄った勢いのままにヒスイさんの腰に抱き付いた。
「ヒスイさん!さっき、毎日ご飯を作るって言ったよね?!」
「…言ったな。」
「なら、ここに住んでくれるの?!」
目を輝かせながら言うとヒスイさんは瞼を2度瞬かせる。
「いや、住むつもりはなかったけど…」
それを聞いた瞬間、がっかりした。これで、ヒスイさんがどこかに行ってしまい、帰ってこない心配をしなくて良いと思ったから。
「…俺、住んでいいの?」
「住んで!」
即答して答えると、彼は一瞬固まって可笑しそうに笑い出す。歯を見せて笑う姿は初めて見るので、まじまじと見てしまう。なんだが、いつもよりも幼く見えて可愛かった。
「冗談で聞いたんだけど‥まあ、いいや。ルカといたいし、今みたいにもっと甘えて。」
そう言われて、自分がヒスイさんに抱き付いていたことを思い出す。両手を離して後ずさると、ヒスイさんは顎に手を置いてニヤリと笑う。
「もういいの?」
「いい!俺、寝てくる!」
逃げるようにその場を離れると、背後からはヒスイさんが笑う声がした。
間抜けな声が口から溢れてしまい慌てて口を隠す。ピクリと動いた眉はまた元の位置に戻り、彼が眠っていることを物語らせる。始めはこの状況に困惑していたが、次第に眠る前のことを思い出して現状を理解する。
…本物だ。ヒスイさんがいる。
そう思うだけでなんだか泣きたくなった。ここ数日が嘘みたいに今は心が満たされている。
「やっぱり、好きだな。」
自然と出た言葉だった。
とりあえず朝食を作ろうかと思い、腕を退けようとするとピクリとも動かせない。自分の非力さに悲しくなってくると、クスリと笑う声がする。
「普通は起きてるって気付くのに。」
「っ…!」
目覚めから良いものを見れたが、笑顔が眩しくて思わずヒスイさんに背を向けてしまう。まあ、そのせいで余計に身体は密着されてしまったのだが…
「ヒスイさん、離して下さい。」
「嫌だ。」
お腹に回されていた手を外そうとすると逆に自分の手と絡められる。
「身体の調子はどう?」
「お陰様で元気ですよ。朝食用意するんで退いて下さ、ヒッ!…」
急に耳に息を吹きかけられてびっくりして振り返ると、悪戯っ子の笑みを浮かべていた。
「…なんか、意地悪になってませんか?」
「そう?まあ、ルカには俺のことを知ってもらいたいから、心のままに行動はしているかな。」
「すみません、よく分からないです。」
「簡単に言うと、ルカは特別な人として接してるね。ルカも俺に好きなだけ甘えていいよ。俺が好きなんでしょ?」
「はあ?!」
「せっかくなら、俺の目を見て言って欲しいけどね。」
顔がどんどん熱くなっていく。ヒスイさんの手がようやく緩んだので、顔を隠すように布団に丸まる。まさか、その時から起きているとは思わなかった。
「ルカは寝てて。俺が作るから。」
「え?」
布団から顔を出すとヒスイさんに頭を撫でられる。
「毎日美味しいもの作って、太らせてあげるよ。」
「俺、デブにはなりたくないです。」
「ルカはポッチャリしててもかわいいと思うけど。」
「俺が作り「寝てて。」…い"っ……」
おでこを指で弾かれて押さえると、ヒスイさんは笑って台所の方へと向かって行った。
正直、お腹はあまり空いていない。空腹感はあるが、食べたいとは思わないのだ。でも、ヒスイさんのご飯は食べたいなとは思った。
「あれっ…ヒスイさん、毎日って……」
彼が言った言葉を思い返すと、俺はベッドから飛び起きてヒスイさんの元に向かった。勢い良くリビングの扉を開けると、ヒスイさんは驚きとどこか呆れたような視線を向けてくる。
「寝てろって言ったのに。」
俺は駆け寄った勢いのままにヒスイさんの腰に抱き付いた。
「ヒスイさん!さっき、毎日ご飯を作るって言ったよね?!」
「…言ったな。」
「なら、ここに住んでくれるの?!」
目を輝かせながら言うとヒスイさんは瞼を2度瞬かせる。
「いや、住むつもりはなかったけど…」
それを聞いた瞬間、がっかりした。これで、ヒスイさんがどこかに行ってしまい、帰ってこない心配をしなくて良いと思ったから。
「…俺、住んでいいの?」
「住んで!」
即答して答えると、彼は一瞬固まって可笑しそうに笑い出す。歯を見せて笑う姿は初めて見るので、まじまじと見てしまう。なんだが、いつもよりも幼く見えて可愛かった。
「冗談で聞いたんだけど‥まあ、いいや。ルカといたいし、今みたいにもっと甘えて。」
そう言われて、自分がヒスイさんに抱き付いていたことを思い出す。両手を離して後ずさると、ヒスイさんは顎に手を置いてニヤリと笑う。
「もういいの?」
「いい!俺、寝てくる!」
逃げるようにその場を離れると、背後からはヒスイさんが笑う声がした。
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