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「気持ちいい…」


赤くなった頬で擦り寄られて、身体が熱くなる。まずいと思ってルカから視線を外すと、落ち着かせるように呼吸を繰り返す。


それなのに、こっちの気もしらず寝込んでいる青年は誘惑をしてくる。


「ルカ、大人しく寝てな。」


手を離そうとすると逆に腕に手を絡めてきて密着する部分が増えてしまう。しかも、猫みたいに擦り寄ってくるものだから、可愛くて仕方がない。


「ルカ。」


咎めるように名前を呼んでみるがまるで効果がない。


「隣、来て?」


「いや、今はちょっと…」


断りの言葉を口にした途端、ルカは顔を大きく歪ませる。


「やっぱり、嫌なんだっ…」


「は?」


意味が分からなくて言葉を重ねようとしたら、ルカはクルリと身体を反転させてしまう。でも、俺の腕は抱き締めたままだ。


「どうした?」


燻る欲情を抑え込むことに意識しながら、ルカを抱き締めるように横になる。でも、可愛らしい表情を見せてくれなかった。


「ルカ。」


今度は優しく名前を呼んでやると、ピクリと背中が動く。微かに首元がエロくて息を呑む。


これくらいならいいだろうか…


そう思った時にはルカの首筋にペロリと舌を這わせていた。それで、ようやくルカの二重で大きな双方の眼が自分を映し出す。


「かわいい。」


自然と口に出た言葉。でも、ルカはいつもみたいに照れるのではなく、傷付いたように唇を噛む。


そっと、唇を触れてみると噛み締めていた唇を離してくれる。


「どうした?」


「…ヒスイさんって、女が好きでしょ?」


「女?」


そう言われてもピンとこない。これまで恋などしたことがないのだから、分からない。でも、ルカが好きになったのだから男が好きということになるのだろうか。


「ほらー!」


今度こそ涙を流し始めるので慌てて涙を拭いながら宥める。


「違うから!俺はルカが初恋だから!」


「…本当に?」


途端に涙が引っ込んだように見上げてくる。


「本当。」


ーああ、ほんと、そんな虐めたくなる瞳で見上げないで欲しい。これがのぼせておらず、平常なルカだったら迷わず襲っていた。

いや、いざそんな場面になると、きっと何も出来なくなる。


…ルカは俺が汚いことを知らない。俺が同族を殺して、その罪悪感や償いとして力を与えてもらったことを知らない。


綺麗な君をこれ以上触れて良いのか分からなくなる。いや、汚したくない気持ちになるんだ。


でも、もっと触れたいという思いは消えてくれない。そんな矛盾した想いが今でも胸をしめる。
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