4 / 13
4
しおりを挟む私が前世でプレイしていたゲームは、孤児院出身であるヒロインがその逆境にもめげず、優れた容姿と才能をもつ地位のある男性たちと恋を育みながら、才能を花開かせ幸せを掴んでいくという内容のものだった。
そんなシンデレラストーリーに惹かれたのがプレイしたきっかけだった。
サポートキャラであるカイルは、攻略対象者である男性の情報をヒロインに教えたり、他にもこまごまとヒロインを手助けしてくれるキャラクターだった。
初めて画面上で見たとき、「サポートキャラまでイケメンなんて流石乙女ゲームね」なんて思って、最初はそれくらいしか興味がなかった。
けれど、ゲームに慣れず男性キャラの誰とも恋仲になれなかった一周回目、本来なら攻略対象者の男性が告白しに来てくれる卒業式の日に、カイルが代りにやってきたのだ。
半分本気で、けれどあとの半分は冗談交じりにヒロインの心を軽くしようと慰めるカイル。
『俺もあと二、三年したらお前が頼れるくらい格好良くなるから……だからその時は……』と最後の台詞と共に顔を赤らめるカイル。
その時に初めて、ヒロインに恋心を寄せていることに気付いた。
きっと誰も落とせなかったプレイヤーに対する制作陣からの計らいとかフォローのつもりだったのだろう。
それからはカイルの言動を注意深く見るようになって、ヒロインを想う気持ちが何度も伝わってきた。
ヒロインが悩んでいたら大袈裟な程応援して、落ち込んでいたら必死に慰めて、そしてたまに、話を蒸し返してはからかうカイル。
男らしい目鼻立ちがヒロイン相手にころころ変わる。
癖っ毛のある明るい髪に、表情豊かな明るい目。
じっと見ているうちに、そんな外見も好きになっていった。
ヒロインと幼い頃から一緒にいる気安さから接してくる彼の飾らない性格にも好感が持てた。
もう何人も攻略し終えていた私はカイルのことが気になってしょうがなかった。
なんで彼は攻略対象者じゃないんだろう。
彼が攻略対象者だったら、ヒロインと結ばせて幸せにしてあげるのに。
気付けば、誰のことも攻略せず、卒業式を迎えるパターンが増えていた。
数年後のヒロインとカイルが仲睦まじく幸せに暮らしている姿を想像するのが好きだった。
正直、攻略対象者である男性たちは完璧過ぎて、私は好きになれなかったのだ。
いや、正確には、すでにカイルに恋に落ちていたから目に入らなかったのだろう。
友達以上なのに恋人にはなれない。
ヒロインに恋のアドバイスをする彼は、その時、どんなふうに思っていたんだろう。
そんなふうに彼に対する思いが強かったから、カイルの姿を見た瞬間、私は全てを思い出したのだろう。
9
あなたにおすすめの小説
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました
歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と
罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが
やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、
エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」
辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。
商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。
元夫が「戻ってこい」と泣きつくが——
「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる