結末はバッドエンドが良い

みさき

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物語の終わり

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私は、ハッピーエンドで終わる自伝が大嫌いだ。何故なら、その自伝を書いた人物はこれからも生き続け、どんな苦難に合うか分からないからである。とりあえずその物語を畳むために、そこで話したかったことをまとめるためにハッピーエンドで終わらせているとしか思えないのだ。

一方、史実に基づく物語。これはそもそも故人を描く場合が多いが、ハッピーエンドとバッドエンドが分かれる。最後に最愛の人に看取られながら亡くなる方もいれば、戦争で誰にも知られずひっそりと山の中で餓死するような方だっている。
私はどちらの場合も興味深く感じてその物語に入り込んでいくし、教訓もすんなりと受け入れるだろう。


では完全なるフィクション、小説家や映画監督が作り上げたものはどうだろう。一時期ビートたけしさんが「極悪人を描いた映画で極悪人が実際に生まれるならば今頃世界は良い人だらけだ」なんて旨の発言をして話題になった。まさにその通りだと思う。私の思う最高の物語とは、ハッピーエンドかバッドエンドかじゃない、登場人物の性格でもない、その物語から退出した後、登場人物の過去や未来に想いを馳せられるかどうかだと思っている。
あの後、あの人はどんな人生を歩んできたんだろう。こんな極悪人になるにはどんな育ち方をしてきたのだろう。そう思って、初めて物語というものは完成する。そこに答えはない。しかし、本をパタンと閉じた時、劇場から出てコーヒーを飲んでいる時、そんな時にそう考えさせたら勝ちなのではないだろうか。

私も高校生の時に演劇をやっていた。演技はとにかく下手で性分にも合っていなかったので、3年間ずっと音響一筋だった。その時に大事になってくるのは、役と役者の違いだ。言ってしまえばたかが高校生の小さな集まり。役柄と異なる性格の人物がその役を演じることも少なくない。おっとりした人が極悪人を演じたりするのだ。しかし、役者にだって矜持はある。しっかりとこなす。でも小さな所作やセリフの端々に温厚な性格が無意識のうちに出てしまうことがある。私はしばしばそれを指摘した。裏方というのは忙しい時と暇な時の差が大きいのである。そしてそこでどうしても直せない部分、生かしていきたい部分は裏方の出番である。ああ、忙しくなれる。音や光でその時の情景をよりハッキリと表現してみたり、逆に苦手な部分はカバーできるような小物を用意してみたり。ちなみに裏方が暇な時は何をしているかというと、役者の研究である。いわゆるモノマネや完コピが出来るくらいまで役者のセリフの癖や手先の動きなどを観察する。そして実際に裏方同士で演じてみて、この人はここの部分が声が小さくなりやすいからBGMの音量調節が必要だよね、などと話し合うのである。
そうそう、高校演劇というのは常に人が足りていない。だから大会の提出用シートには私の名前の横には常に「音響」と書かれているが、音響兼照明兼大道具兼小道具兼演出なのである。時々欠席した役者の代役もこなす。そこでモノマネの力が発揮される。つまりなんでも屋なのだ。

話を戻そう。演劇で例えるならば、観劇した後に「あのキャラクターは幸せになれたかな」「脇役のあの人はどんな風に生きてきたんだろう?」そう思わせたらこちらとしてはガッツポーズをしたくなる。だから私はあえて役者にこう問うた。
「このキャラはどこで生まれてどうやって育ったの?」
「この物語が終わった後、あなた(役柄)はどう生きる?」
その問答をするだけで、物語の深みが変わってくる。
大会が終わってから他校の生徒に「(劇中で結婚した役柄に対して)絶対夫は尻に敷かれるよね~笑」なんて言われた日には内心小躍りをしていた。


同じ「物語」でも終わり方はさまざまである。
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