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011 ベルクード子爵の依頼
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ルイゼと共に、町一番の大富豪が住む豪邸にやってきた。
既に外は真っ暗だ。
幼女の依頼を終えた時点で日暮れだったし、無理もない。
出来ればもう寝たかったが、急を要する依頼とのことで仕方なかった。
「夜分遅くにお呼び立てしてすみません」
応接間で迎えてくれたのはこの家の主ことベルクード子爵だ。
41歳という若さながらも、国王からの信頼が厚い男。
都とは疎遠のようで、会うのはこれが初めてのことだった。
「それで、俺達に依頼というのは何かな?」
「ロイド、子爵様にその口の利き方は」
「いえ、そういった作法は気にしないでください」
「……と子爵様も言っているから、そうさせてもらおう」
ルイゼが苦笑いを浮かべる。
それはさておき、本題に入った。
「お二方に依頼したいのは人質の救出です」
「そういうこと。まさに私達向けの仕事でしょ?」
隣に座るルイゼが、上目遣いで見てくる。
頼むからこのヤマを引き受けてくれ、と言いたげだ。
「依頼は引き受けるけど」
「早っ!」
「本当ですか!?」
俺の言葉を遮って驚く2人。
もっと渋ると思われていたようだ。
今度は俺が苦笑い。
「でも、どうして俺達なんだ?」
気になる点はそこだ。
「人質の救出、それも依頼者は子爵だ。ならば俺達に依頼するより、政府に要請を出して精鋭を動かしてもらう方がいいだろう。俺の記憶だと、国にはこの手の事件を担当する専門家も居たはずだが」
「お詳しいですね、ロイドさん」
ベルクードが驚く。
「そうなの? ロイド、詳しいんだねー!」
ルイゼは知らなかったようだ。
「たしかに国にはこの手の事件を専門とするチームがあります。しかし、今回は誘拐犯から政府に頼ることを禁止されているのです。頼った場合には人質、つまり私の娘を殺すと云われています」
相手もそれなりのプロというわけか。
「それに、今回の相手はゴンゾールです」
「ゴンゾール!?」
ルイゼが絶叫する。
「知り合いか? ルイゼ」
「ううん。って、ロイド、ゴンゾールを知らないの?」
「知らないよ。有名人?」
「この町で唯一B級だった冒険者だよ! 今は“元”冒険者だけど」
「ほう。冒険者を辞めたのか」
「辞めたというか、素行不良が理由で辞めさせられたの」
「冒険者規則とやらに反したわけだな」
「何度もね。実力は確かだったんだけど……」
ゴンゾールについてはおおよそ把握した。
つまりB級の雑魚というわけだ。
「娘のアテンザには、それなりに腕の立つ護衛をつけていました。ですが、ゴンゾールとその一味の手によって、全員殺されてしまいまして」
「殺された? 死体を確認したの?」
「生首が送られてきましたので……」
とんでもない奴だな、ゴンゾール。
思っていた以上に狂っているようだ。
子爵が命令に従うのも無理はない。
国に頼れば、即座に娘は殺されるだろう。
「誘拐はいつ起きたの?」
「1週間前です」
俺が町にくる少し前のことか。
「身代金はいくら要求されているの?」
「1度目は1000万で、今度は3000万です」
「えっ、既に1度払っちゃったの?」
「はい……。ですが、娘は解放されず……」
「それで俺達に頼ることを決めたのか」
「このままだと金だけ取られて、娘は帰ってこないので」
わりと冷静に判断出来ているようだ。
流石は国王が信頼を置くだけのことはある。
「報酬は言い値でかまいません。ですから、どうか助けてください」
子爵が頭を下げてくる。
「分かった。元B級のゴンゾールとやらから、俺が娘さんを救おう」
「本当ですか?」
「ただし、娘さんを死なせたらごめんね。俺、人質事件のプロじゃないから」
「それは……」
「こら! 本当は死なせるつもりなんてないくせに!」
ルイゼに小突かれる。
「そりゃ最高の結果を目指すけど、人質救出なんて初めてだからな」
「そうなの? ロイドってオールSだから何でも経験済みかと思ったよ」
「えっ」
驚きの声を出したのは子爵だ。
「オールSのロイドって、まさか……」
「あ、俺の昔を知っている感じ?」
「はい、まぁ、名前だけですが、国王陛下から」
「えええええええええええ!?」
今度はルイゼが驚いた。
「ロイドって国王陛下と面識あるの!? 名前覚えられているの!?」
「まぁ、色々あって」
「すごっ! やっぱり凄い人なんじゃん! ロイド!」
苦笑いを浮かべる。
一方、子爵の顔には安堵の笑みが浮かんでいた。
「貴方ほどの傑物に担当してもらえるのなら、どのような結果になっても後悔はありません。貴方で駄目なら、私の頼れる他の全てを利用しても結果は変わらないでしょう。よろしくお願いします、ロイド様」
「様ァ!?」
「すまないが様付けはやめて欲しい。今はもう、様付けされるのに相応しい人間ではなくなったので」
「分かりました。では改めて、ロイドさん、お願いします」
次の依頼が人質の救出に決まった。
「ところで、ゴンゾールとその一味の処遇だけど」
「ロイドさんにお任せします」
「生かす必要は無い、と判断していいのかな?」
「その通りです」
「分かった」
ミッションスタートだ。
既に外は真っ暗だ。
幼女の依頼を終えた時点で日暮れだったし、無理もない。
出来ればもう寝たかったが、急を要する依頼とのことで仕方なかった。
「夜分遅くにお呼び立てしてすみません」
応接間で迎えてくれたのはこの家の主ことベルクード子爵だ。
41歳という若さながらも、国王からの信頼が厚い男。
都とは疎遠のようで、会うのはこれが初めてのことだった。
「それで、俺達に依頼というのは何かな?」
「ロイド、子爵様にその口の利き方は」
「いえ、そういった作法は気にしないでください」
「……と子爵様も言っているから、そうさせてもらおう」
ルイゼが苦笑いを浮かべる。
それはさておき、本題に入った。
「お二方に依頼したいのは人質の救出です」
「そういうこと。まさに私達向けの仕事でしょ?」
隣に座るルイゼが、上目遣いで見てくる。
頼むからこのヤマを引き受けてくれ、と言いたげだ。
「依頼は引き受けるけど」
「早っ!」
「本当ですか!?」
俺の言葉を遮って驚く2人。
もっと渋ると思われていたようだ。
今度は俺が苦笑い。
「でも、どうして俺達なんだ?」
気になる点はそこだ。
「人質の救出、それも依頼者は子爵だ。ならば俺達に依頼するより、政府に要請を出して精鋭を動かしてもらう方がいいだろう。俺の記憶だと、国にはこの手の事件を担当する専門家も居たはずだが」
「お詳しいですね、ロイドさん」
ベルクードが驚く。
「そうなの? ロイド、詳しいんだねー!」
ルイゼは知らなかったようだ。
「たしかに国にはこの手の事件を専門とするチームがあります。しかし、今回は誘拐犯から政府に頼ることを禁止されているのです。頼った場合には人質、つまり私の娘を殺すと云われています」
相手もそれなりのプロというわけか。
「それに、今回の相手はゴンゾールです」
「ゴンゾール!?」
ルイゼが絶叫する。
「知り合いか? ルイゼ」
「ううん。って、ロイド、ゴンゾールを知らないの?」
「知らないよ。有名人?」
「この町で唯一B級だった冒険者だよ! 今は“元”冒険者だけど」
「ほう。冒険者を辞めたのか」
「辞めたというか、素行不良が理由で辞めさせられたの」
「冒険者規則とやらに反したわけだな」
「何度もね。実力は確かだったんだけど……」
ゴンゾールについてはおおよそ把握した。
つまりB級の雑魚というわけだ。
「娘のアテンザには、それなりに腕の立つ護衛をつけていました。ですが、ゴンゾールとその一味の手によって、全員殺されてしまいまして」
「殺された? 死体を確認したの?」
「生首が送られてきましたので……」
とんでもない奴だな、ゴンゾール。
思っていた以上に狂っているようだ。
子爵が命令に従うのも無理はない。
国に頼れば、即座に娘は殺されるだろう。
「誘拐はいつ起きたの?」
「1週間前です」
俺が町にくる少し前のことか。
「身代金はいくら要求されているの?」
「1度目は1000万で、今度は3000万です」
「えっ、既に1度払っちゃったの?」
「はい……。ですが、娘は解放されず……」
「それで俺達に頼ることを決めたのか」
「このままだと金だけ取られて、娘は帰ってこないので」
わりと冷静に判断出来ているようだ。
流石は国王が信頼を置くだけのことはある。
「報酬は言い値でかまいません。ですから、どうか助けてください」
子爵が頭を下げてくる。
「分かった。元B級のゴンゾールとやらから、俺が娘さんを救おう」
「本当ですか?」
「ただし、娘さんを死なせたらごめんね。俺、人質事件のプロじゃないから」
「それは……」
「こら! 本当は死なせるつもりなんてないくせに!」
ルイゼに小突かれる。
「そりゃ最高の結果を目指すけど、人質救出なんて初めてだからな」
「そうなの? ロイドってオールSだから何でも経験済みかと思ったよ」
「えっ」
驚きの声を出したのは子爵だ。
「オールSのロイドって、まさか……」
「あ、俺の昔を知っている感じ?」
「はい、まぁ、名前だけですが、国王陛下から」
「えええええええええええ!?」
今度はルイゼが驚いた。
「ロイドって国王陛下と面識あるの!? 名前覚えられているの!?」
「まぁ、色々あって」
「すごっ! やっぱり凄い人なんじゃん! ロイド!」
苦笑いを浮かべる。
一方、子爵の顔には安堵の笑みが浮かんでいた。
「貴方ほどの傑物に担当してもらえるのなら、どのような結果になっても後悔はありません。貴方で駄目なら、私の頼れる他の全てを利用しても結果は変わらないでしょう。よろしくお願いします、ロイド様」
「様ァ!?」
「すまないが様付けはやめて欲しい。今はもう、様付けされるのに相応しい人間ではなくなったので」
「分かりました。では改めて、ロイドさん、お願いします」
次の依頼が人質の救出に決まった。
「ところで、ゴンゾールとその一味の処遇だけど」
「ロイドさんにお任せします」
「生かす必要は無い、と判断していいのかな?」
「その通りです」
「分かった」
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