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第005話 貧乏故の幸運
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酒場で適当に食事を済ませた俺達。
「ご飯代は私に出させて下さい!」
会計の時、ルナがそう言った。
「えっ、いいの? 結構飲み食いしたよ?」
「命を助けて頂いたご恩がありますから!」
「それならお言葉に甘えて。宿代は俺が出すよ」
「いやいや、宿代も私が出しますよ!」
ルナがキッパリと言う。
俺の奢りだと受け入れなさそうだ。
そう判断したから譲歩案を出す。
「じゃ、じゃあ、宿代は自分達で出すことにしよう」
「はい! そうしましょう!」
こうして俺達は宿屋に向かった。
1人1部屋を貸してくれ、と店主に頼む。
店主は快諾し、料金を告げた。
「1部屋につき金貨20枚ね」
「に、にじゅう!?」
驚愕したのは俺だ。
とんでもないボッタクリである。
俺が主に活動していた村では銀貨1枚だった。
金貨20枚といえば、銀貨2,000枚に相当する大金だぞ。
「他所ならいざしらず、こんな所で経営しているんだから、この価格でも当たり前じゃろう。何をそう驚いておる」
店主が首を傾げる。
魔王城の最寄りであるここは、周辺が強敵ばかりだ。
最低でもBBB級のモンスターしかいない。
クエストの報酬も金貨数百枚とかが基本だ。
「(まずいぞ……金が全くたりない……)」
俺の所持金は金貨2枚だ。
魔王城に向かうまでの移動費でほぼ全財産を使い切った。
魔王城で死ぬか、最高級のお宝を持ち帰るかの二択だったから。
よもや何も得ずに生きて戻るとは思っていなかった。
「ユウタさん、もしかしてお金が……?」
固まる俺をルナが心配げに見てくる。
酒場の会計でした会話を考慮するとみっともないどころではない。
恥ずかしくて死にそうだ。
それでも言うしかない。俺は観念した。
「恥ずかしながら宿代がなくてね……。でも気にしないで! 俺は野宿するから!」
「いえ、そういうわけにはいきません! 私が出しますよ!」
「さすがに情けないからそれは受けられない」
俺にだってプライドがある。
ちっぽけでダサダサなプライドが。
ここで宿代を出して貰うくらいなら野宿を選ぶ。
「どうしても……私に宿代を出させてはくれませんか?」
ルナが上目遣いで尋ねてくる。
可愛すぎて息が詰まってしまう。
それでも俺の答えは変わらない。
「どうしても駄目だ」
「そうですか……」
ルナが「じゃあ」と代案を出す。
「私の家に泊まるというのならいかがですか?」
「ルナの家?」
「はい。最近はこの村を活動拠点にしておりますから、家を購入したんです。これでしたら宿代は必要ありませんし、問題ないと思うのですが……」
たしかにその通りだ。
ルナの家ならば何の問題もない。
それに、これはルナからの譲歩案だ。
強硬な姿勢を崩さないのもどうかと思う。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます……」
「はい! ありがとうございます!」
「ハハ、ありがとうは俺のセリフだよ」
こうして、俺はルナの家にお邪魔することとなった。
それほど大きくない村を歩き、ルナの家に到着する。
「どうぞ、おもてなしには向かない家ではございますが……」
「お邪魔します。って、これは……!」
ルナの家はワンルームだった。
必要最低限の家具のみ配置されている。
休む為だけの場所といった感じだ。
それよりも、問題なのは――。
「ベッドが1つしかないが……?」
ベッドだ。
天蓋付きの大型ベッドが1つあるだけ。
家に誘うのだから、てっきりベッドは2つあると思っていた。
「大きなベッドなので問題ないかと思ったのですが」
ルナが上目遣いで「駄目ですか?」と尋ねてくる。
「駄目じゃない! 駄目じゃない! むしろ嬉しいよ! でもいいの? 今日知り合ったばかりだし、俺は男だよ。その、男と同じベッドで寝るとか、そういうの大丈夫なの?」
ルナみたいな可愛い女と同じベッドで寝る。
そんなの、同性愛者以外の男は手放しで喜ぶぞ。
「他の男性なら駄目ですけど、ユウタさんならかまいません。大丈夫かどうかとは少し違うのですが、仮に何かあっても自分の判断ミスだと納得できるからいいんです。それに、これは失礼なことなのですが……」
ルナは申し訳なさそうに言った。
「万が一ユウタさんが実は悪い人で私を襲うようなことがあったとしても、すぐに返り討ちできると思います」
たしかに仰るとおりだった。
許可なく悪戯したところで、返り討ちにあうだけだ。
「な、なら、お願いします!」
「はい! こちらこそ、不束者ですが!」
こうして、俺はルナと同じベッドで寝ることになった。
もしかして、この展開も強運の力か!?
「ご飯代は私に出させて下さい!」
会計の時、ルナがそう言った。
「えっ、いいの? 結構飲み食いしたよ?」
「命を助けて頂いたご恩がありますから!」
「それならお言葉に甘えて。宿代は俺が出すよ」
「いやいや、宿代も私が出しますよ!」
ルナがキッパリと言う。
俺の奢りだと受け入れなさそうだ。
そう判断したから譲歩案を出す。
「じゃ、じゃあ、宿代は自分達で出すことにしよう」
「はい! そうしましょう!」
こうして俺達は宿屋に向かった。
1人1部屋を貸してくれ、と店主に頼む。
店主は快諾し、料金を告げた。
「1部屋につき金貨20枚ね」
「に、にじゅう!?」
驚愕したのは俺だ。
とんでもないボッタクリである。
俺が主に活動していた村では銀貨1枚だった。
金貨20枚といえば、銀貨2,000枚に相当する大金だぞ。
「他所ならいざしらず、こんな所で経営しているんだから、この価格でも当たり前じゃろう。何をそう驚いておる」
店主が首を傾げる。
魔王城の最寄りであるここは、周辺が強敵ばかりだ。
最低でもBBB級のモンスターしかいない。
クエストの報酬も金貨数百枚とかが基本だ。
「(まずいぞ……金が全くたりない……)」
俺の所持金は金貨2枚だ。
魔王城に向かうまでの移動費でほぼ全財産を使い切った。
魔王城で死ぬか、最高級のお宝を持ち帰るかの二択だったから。
よもや何も得ずに生きて戻るとは思っていなかった。
「ユウタさん、もしかしてお金が……?」
固まる俺をルナが心配げに見てくる。
酒場の会計でした会話を考慮するとみっともないどころではない。
恥ずかしくて死にそうだ。
それでも言うしかない。俺は観念した。
「恥ずかしながら宿代がなくてね……。でも気にしないで! 俺は野宿するから!」
「いえ、そういうわけにはいきません! 私が出しますよ!」
「さすがに情けないからそれは受けられない」
俺にだってプライドがある。
ちっぽけでダサダサなプライドが。
ここで宿代を出して貰うくらいなら野宿を選ぶ。
「どうしても……私に宿代を出させてはくれませんか?」
ルナが上目遣いで尋ねてくる。
可愛すぎて息が詰まってしまう。
それでも俺の答えは変わらない。
「どうしても駄目だ」
「そうですか……」
ルナが「じゃあ」と代案を出す。
「私の家に泊まるというのならいかがですか?」
「ルナの家?」
「はい。最近はこの村を活動拠点にしておりますから、家を購入したんです。これでしたら宿代は必要ありませんし、問題ないと思うのですが……」
たしかにその通りだ。
ルナの家ならば何の問題もない。
それに、これはルナからの譲歩案だ。
強硬な姿勢を崩さないのもどうかと思う。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます……」
「はい! ありがとうございます!」
「ハハ、ありがとうは俺のセリフだよ」
こうして、俺はルナの家にお邪魔することとなった。
それほど大きくない村を歩き、ルナの家に到着する。
「どうぞ、おもてなしには向かない家ではございますが……」
「お邪魔します。って、これは……!」
ルナの家はワンルームだった。
必要最低限の家具のみ配置されている。
休む為だけの場所といった感じだ。
それよりも、問題なのは――。
「ベッドが1つしかないが……?」
ベッドだ。
天蓋付きの大型ベッドが1つあるだけ。
家に誘うのだから、てっきりベッドは2つあると思っていた。
「大きなベッドなので問題ないかと思ったのですが」
ルナが上目遣いで「駄目ですか?」と尋ねてくる。
「駄目じゃない! 駄目じゃない! むしろ嬉しいよ! でもいいの? 今日知り合ったばかりだし、俺は男だよ。その、男と同じベッドで寝るとか、そういうの大丈夫なの?」
ルナみたいな可愛い女と同じベッドで寝る。
そんなの、同性愛者以外の男は手放しで喜ぶぞ。
「他の男性なら駄目ですけど、ユウタさんならかまいません。大丈夫かどうかとは少し違うのですが、仮に何かあっても自分の判断ミスだと納得できるからいいんです。それに、これは失礼なことなのですが……」
ルナは申し訳なさそうに言った。
「万が一ユウタさんが実は悪い人で私を襲うようなことがあったとしても、すぐに返り討ちできると思います」
たしかに仰るとおりだった。
許可なく悪戯したところで、返り討ちにあうだけだ。
「な、なら、お願いします!」
「はい! こちらこそ、不束者ですが!」
こうして、俺はルナと同じベッドで寝ることになった。
もしかして、この展開も強運の力か!?
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