11 / 13
第011話 SSS級の銭闘力
しおりを挟む
酒場で食事を終えた俺達は宿屋にやってきた。
宿屋に向かう道中の俺と来たら「今日は任せろ」と意気込んだものだ。ルナは「ありがとうございます! お言葉に甘えさせて頂きますね!」と空気を読み、ハクは「Zzz……」と寝息を立てている。
――そして、俺は宿屋で絶望した。
受付カウンターの前で膝から崩落する俺。
慌てて飛び起き、翼をパタパタさせて避難するハク。
そんなハクを両手でキャッチするルナ。
「そ、そそ、そこをどうにかなりませんか?」
「ならないよ。どこでもそう。無理なものは無理。駄目だよ」
とりつく島もなく拒否される。
俺達は宿屋を利用できないときたのだ。
その理由は――。
「ペット連れは宿屋を利用できないって、それ常識だよ?」
――ということだ。
たしかに言われてみると思い当たる節がある。
宿屋の中では1度もテイマーを見かけたことがないのだ。
「じゃあ、テイマーってどうやって寝泊まりしているの?」
俺が尋ねると、宿屋の店主は「知らんがな」と答える。
しかし、その後に優しく補足説明をしてくれるのであった。
「宿屋を利用出来ないなら家を買うしかないだろう。もしも活動拠点を変えることになったら、その時は家を売ればいいだけだしな。それか、ペットを売るなり、家を持っている奴に預けるなりしてから、宿屋に泊まるとかな」
なかなかのツンデレ店主である。
これが可愛い女の子なら、俺は喜んだだろう。
しかし、この店主は初老のハゲオヤジである。残念だ。
「それにしても宿屋が利用できないとは困ったな」
「ですね……」「キュゥン」
俺達は宿屋を出て、路頭を彷徨っていた。
宿代を軽やかに奢るはずが、またしても失敗である。
「どうしたものかなぁ」
既に夕暮れが過ぎようとしている。
出来る限り速やかに決めておきたいところだ。
さもなければ酒場のテーブルで突っ伏して寝ることになる。
または冒険者ギルドのテーブルで。
「ユウタさん、1つ提案があるのですがよろしいでしょうか」
ルナが言った。
俺は「もちろん!」と快諾。
ハクは俺の肩で眠りはじめていた。
「家を買う……というのはいかがでしょうか?」
ルナは言いにくそうに提案してきた。
どうしてなのか、その理由は分かっている。
家を買う場合、彼女がお金を出すからだ。
今の俺に家の購入資金を支払うだけの金がない。
当然ながらハクもお金を持っていないから、出すのはルナだ。
名目が宿代から家代に変わっただけで、本質的には変わりない。
俺がルナに奢って貰うということに、何の変わりもないのだ。
しかし、この期に及んでそのことを拘る余裕はない。
代案がない以上、プライドを捨てて採用するのみだ。
「まぁ、それしか道はないよな」
俺は頭をポリポリ掻きながら承諾。
それからルナに「奢ってもらってばかりで悪いな」と謝る。
ルナは笑顔で「気にしないでください!」と答えた。
「私達は仲間なんですよ、ユウタさん。宿代や食費、それに家代は必要経費です。浪費するわけではありませんし、仲間なら協力しあうものですよ。だからユウタさんは何も悪くないですし、変に恩を感じたりもしないでください」
ルナが「いいですね?」と鋭い目つきで俺を見てくる。
俺は「お、おう」と声を詰まらせてしまうのであった。
ルナは本当によく出来た女だ。
顔、強さ、性格、どれをとっても申し分ない。
それに不慮の事故で見てしまった裸体も美しかった。
優秀な仲間を得られて、俺は本当に幸運である。
◇
そんなこんなで不動産屋に来た。
家を買うには不動産屋と相場が決まっている。
ところが、ここで予想外の事態が起きた。
「すみません、ただいまお売り出来る物件が1つしかなくて……」
業者の男が申し訳なさそうに言う。
通常ならば無数にある物件から最適な物を選ぶ。
1軒しかないのであれば、もはや買うのはその家しかない。
「なんでその1軒は残っているんですか? 売れないのにはなにか怪しげな理由があるのでは?」
勘ぐる俺。
業者は「違います!」と慌てて否定した。
「その1軒は先日完成したばかりなんです。新築ですし、何かしらの問題があるわけではありません。建築に関わった職人は有名所の実力派ですし、建材も一級品を使っております。この町にある家なので決して広くはありませんが、家具も一式揃えておりますからきっと気に入られますよ」
業者がドヤ顔で胸を張る。
ルナは「家具が揃っているのはいいですね」と声を弾ませた。
それから、「ではそのお家を買わせていただきます」と即答する。
「ありがとうございます。金貨2,850枚となります」
ぶっ飛んだ価格だ。
家を買うのだから当然といえば当然か。
数千枚の金貨など、俺には到底出せない。
しかしルナは――。
「わかりました」
即決して、カード決済を済ませる。
「ル、ルナって、カード残高いくらあるんだ?」
気になったので尋ねてみた。
ルナは「えっと……」とカードを確認する。
カードには残高が表示されているからだ。
「87,039,721枚のようです」
「は、はっせんななひゃくまん!?」
俺は腰を抜かした。
分かっているのに、つい「金貨で?」と確認する。
当然ながら、ルナの返答は「はい」であった。
金貨8700万枚。
人生を100周しても余りそうな額だ。
ちなみに、俺の所持金は金貨3枚である。
「流石は<魔王城>で狩りをするだけのことはあるな……」
戦闘力に加え、銭闘力の差も絶望的だった。
宿屋に向かう道中の俺と来たら「今日は任せろ」と意気込んだものだ。ルナは「ありがとうございます! お言葉に甘えさせて頂きますね!」と空気を読み、ハクは「Zzz……」と寝息を立てている。
――そして、俺は宿屋で絶望した。
受付カウンターの前で膝から崩落する俺。
慌てて飛び起き、翼をパタパタさせて避難するハク。
そんなハクを両手でキャッチするルナ。
「そ、そそ、そこをどうにかなりませんか?」
「ならないよ。どこでもそう。無理なものは無理。駄目だよ」
とりつく島もなく拒否される。
俺達は宿屋を利用できないときたのだ。
その理由は――。
「ペット連れは宿屋を利用できないって、それ常識だよ?」
――ということだ。
たしかに言われてみると思い当たる節がある。
宿屋の中では1度もテイマーを見かけたことがないのだ。
「じゃあ、テイマーってどうやって寝泊まりしているの?」
俺が尋ねると、宿屋の店主は「知らんがな」と答える。
しかし、その後に優しく補足説明をしてくれるのであった。
「宿屋を利用出来ないなら家を買うしかないだろう。もしも活動拠点を変えることになったら、その時は家を売ればいいだけだしな。それか、ペットを売るなり、家を持っている奴に預けるなりしてから、宿屋に泊まるとかな」
なかなかのツンデレ店主である。
これが可愛い女の子なら、俺は喜んだだろう。
しかし、この店主は初老のハゲオヤジである。残念だ。
「それにしても宿屋が利用できないとは困ったな」
「ですね……」「キュゥン」
俺達は宿屋を出て、路頭を彷徨っていた。
宿代を軽やかに奢るはずが、またしても失敗である。
「どうしたものかなぁ」
既に夕暮れが過ぎようとしている。
出来る限り速やかに決めておきたいところだ。
さもなければ酒場のテーブルで突っ伏して寝ることになる。
または冒険者ギルドのテーブルで。
「ユウタさん、1つ提案があるのですがよろしいでしょうか」
ルナが言った。
俺は「もちろん!」と快諾。
ハクは俺の肩で眠りはじめていた。
「家を買う……というのはいかがでしょうか?」
ルナは言いにくそうに提案してきた。
どうしてなのか、その理由は分かっている。
家を買う場合、彼女がお金を出すからだ。
今の俺に家の購入資金を支払うだけの金がない。
当然ながらハクもお金を持っていないから、出すのはルナだ。
名目が宿代から家代に変わっただけで、本質的には変わりない。
俺がルナに奢って貰うということに、何の変わりもないのだ。
しかし、この期に及んでそのことを拘る余裕はない。
代案がない以上、プライドを捨てて採用するのみだ。
「まぁ、それしか道はないよな」
俺は頭をポリポリ掻きながら承諾。
それからルナに「奢ってもらってばかりで悪いな」と謝る。
ルナは笑顔で「気にしないでください!」と答えた。
「私達は仲間なんですよ、ユウタさん。宿代や食費、それに家代は必要経費です。浪費するわけではありませんし、仲間なら協力しあうものですよ。だからユウタさんは何も悪くないですし、変に恩を感じたりもしないでください」
ルナが「いいですね?」と鋭い目つきで俺を見てくる。
俺は「お、おう」と声を詰まらせてしまうのであった。
ルナは本当によく出来た女だ。
顔、強さ、性格、どれをとっても申し分ない。
それに不慮の事故で見てしまった裸体も美しかった。
優秀な仲間を得られて、俺は本当に幸運である。
◇
そんなこんなで不動産屋に来た。
家を買うには不動産屋と相場が決まっている。
ところが、ここで予想外の事態が起きた。
「すみません、ただいまお売り出来る物件が1つしかなくて……」
業者の男が申し訳なさそうに言う。
通常ならば無数にある物件から最適な物を選ぶ。
1軒しかないのであれば、もはや買うのはその家しかない。
「なんでその1軒は残っているんですか? 売れないのにはなにか怪しげな理由があるのでは?」
勘ぐる俺。
業者は「違います!」と慌てて否定した。
「その1軒は先日完成したばかりなんです。新築ですし、何かしらの問題があるわけではありません。建築に関わった職人は有名所の実力派ですし、建材も一級品を使っております。この町にある家なので決して広くはありませんが、家具も一式揃えておりますからきっと気に入られますよ」
業者がドヤ顔で胸を張る。
ルナは「家具が揃っているのはいいですね」と声を弾ませた。
それから、「ではそのお家を買わせていただきます」と即答する。
「ありがとうございます。金貨2,850枚となります」
ぶっ飛んだ価格だ。
家を買うのだから当然といえば当然か。
数千枚の金貨など、俺には到底出せない。
しかしルナは――。
「わかりました」
即決して、カード決済を済ませる。
「ル、ルナって、カード残高いくらあるんだ?」
気になったので尋ねてみた。
ルナは「えっと……」とカードを確認する。
カードには残高が表示されているからだ。
「87,039,721枚のようです」
「は、はっせんななひゃくまん!?」
俺は腰を抜かした。
分かっているのに、つい「金貨で?」と確認する。
当然ながら、ルナの返答は「はい」であった。
金貨8700万枚。
人生を100周しても余りそうな額だ。
ちなみに、俺の所持金は金貨3枚である。
「流石は<魔王城>で狩りをするだけのことはあるな……」
戦闘力に加え、銭闘力の差も絶望的だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
53
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる