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027 第1防衛戦

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 トロイの報告によると、王国軍の兵士数は約1万とのこと。
 対するコチラの戦力は、人間2人にペット33体。
 圧倒的な人数差だが、負ける気はしなかった。

「おや? まずは勧告でもしてくるつもりかな?」

 初っ端から殴り合うのかと思いきや、そうではなかった。
 王都側に面した軍団から、指揮官と思しき騎士が出てきたのだ。

「反乱軍のリーダーアレンは居るか?」

 俺達は“反乱軍”と呼ばれているみたいだ。
 やっていることを考えれば妥当な呼び方だと思った。
 訂正するなら“軍”を付ける程の規模でないということ。

「俺がアレンだがどうした?」

 丘の山頂から騎士の言葉に応じる。

「大人しく投降すれば、苦痛なき死を与えてやる」
「拒んだらどうなる?」
「死んだ方がマシだと思えるほどの苦痛を与えてから殺す」
「どちらにしても殺すつもりか」
「当然だ」
「ならばよし」

 俺は大満足で頷いた。
 相手は意味が分からずに首を傾げている。

「よしとはどういうことだ?」
「そちらが殺す気なら、殺しても心が痛まないってことさ」
「ふざけたことを! 全軍! かか――なっ!?」
「甘いな、もう勝負は始まっているんだよ」

 俺は既にスキルを発動していた。
 戦闘系アクティブスキル〈メテオシャワー〉だ。
 広範囲に隕石の雨降らす範囲攻撃スキルである。

「このスキルは極めて強力だが、雨が降るまでの時間が長すぎて使える場面が限られている。だから、お前が無駄話をしてくれて助かったよ」
「おのれ! 卑怯な!」
「50にも満たない数の相手に1万の軍勢で攻める奴等が云うセリフじゃねぇよ」

 隕石の雨が降り注ぐ。
 油断していた王都側の軍団が、一瞬で壊滅状態に陥った。

「言い忘れていたが、俺は〈魔法強化〉と〈魔法強化・改〉を習得している。ただでさえ強力無比の〈メテオシャワー〉がそれらのパッシブスキルで超強化されたら……〈マジックシェル〉を使っても防げないぜ?」
「ひ、ひぃいいいいいいいいいい!」

 俺と話していた騎士が全力で逃げていく。
 こちらに背を向け、馬を走らせ、王都に一直線。

「攻め時だ! 矢を放て!」

 自軍の皆が〈爆発弓〉を取り出す。
 事前に用意して配っておいたものだ。

「私、弓を使ったことって全くないんだよね」
「大丈夫さ。敵はうじゃうじゃ居る。前に飛ばせば当たるさ」

 士気の下がった敵に爆発属性の矢が襲い掛かる。

「怯むな! 〈マジックシェル〉と盾で防ぎ、数で押し切るぞ!」

 王都側を除く三方向から、王国軍が押し寄せてきた。
 魔法耐性を高める〈マジックシェル〉で爆発に耐えている。

「アレン、相手の言う通り数が多すぎるよ」
「矢の攻撃だと物足りないゴブ! 突っ込みたいゴブ!」
「駄目だ。お前の強さを見せつけるのは今じゃない」
「じゃあどうするゴブ?」
「任せろ。こういう時の為にこいつらを用意したんだ」

 俺はインベントリから2体のペットを召喚した。
 どちらも二足歩行の小さな猫で、手には杖を持っている。

 こいつらの種族名は“ケット・シー”。
 片方が赤のローブを羽織り、もう一方は青のローブを羽織っている。
 俺は赤い方を“ケット”、青い方を“シー”と命名した。

 両者のレベルは、捕獲時が5で今は7だ。
 〈テイミング〉の仕様で、レベルはそれ以上にならなかった。
 〈吸収合体〉によって必要なスキルを習得させたので問題ない。
 ケット・シーの役目は、あくまで後方支援だ。

「ケット・シー、弱体化スキルデバフで敵の進軍を妨害しろ!」
「アイアイサー!」
「分かったにゃー」

 ケットがスキル〈ディスペル〉をばら撒く。
 これは、掛かっている強化スキルバフを解除するデバフだ。

「〈マジックシェル〉が切れたぞ! 奴等〈ディスペル〉持ちだったのか!」
「た、盾だけでこの矢を防ぐのは――ぎゃぁあああああ!」

 〈マジックシェル〉の効果が切れたことで、敵の被害が拡大する。
 それでも、形勢はコチラが不利だ。
 圧倒的人海戦術によって、じわりじわりと距離が詰まってきていた。

「シー!」
「任せるにゃー」

 シーがスキル〈グラビティダウン〉を発動。
 重力の圧をかけることで、敵の動きを鈍らせる。

「身体が重くて……」
「思うように動けん……」

 進軍速度が急激に低下する敵の軍勢。
 そこに襲い掛かる爆発属性の矢。

「二方向までならどうにかなるな」

 三方向を相手取るとこれでも厳しい。
 ケット・シーのスキルが間に合っていないからだ。
 スキルにはCTがあるので、連続で使用することは出来ない。
 どちらも〈CT短縮・極〉を積んでいるが、それでも無理があった。

「皆は西と南の敵を担当してくれ」
「えっ、東の軍勢が一番多いよ!?」
「分かっているさ。だから――」

 俺は〈飛行〉で宙に浮く。

「東は俺が引き受ける」
「アレンが1人で!? 流石に無茶よ」
「何を云うか。楽勝だ、こんなもの」

 今回の戦いに備えて、俺は攻撃スキルを習得していた。

「俺の攻撃はどこよりも激しいぞ」

 天に向かって矢を放つ。
 矢は雲の中に消えた後、大量の数に増えて降ってきた。
 範囲攻撃スキル〈アローレイン〉だ。

「盾で防ぐんだ!」
「盾だ! 盾を使え!」
「盾だぁぁぁぁぁ!」

 兵士達が頭上に盾を構えた。
 そこに、俺の降らした矢の雨が直撃する

「ぎゃああああああああああ!」

 激しい爆音と兵士の悲鳴が響いた。

「降り注ぐ全ての矢が爆発属性だからな」

 矢の雨による爆発は、普通に射かけるよりも威力が低い。
 しかし、それを凌駕して余りある数が降り注いでいる。

「広範囲の敵を殲滅するのに、これ以上の攻撃はない」
「武器とスキルの組み合わせ……これがアレンの本気なのね」

 この程度はRLOだと常識だった。
 本気というにはほど遠い基礎の基礎だ。
 そう思ったが、野暮ったいので訂正しない。

「撤退! 撤退だぁぁぁぁ!」
「ひぃいいいいいいいいい!」
「逃げろぉおおおおおおお!」

 最終的に、王国軍は攻撃を諦めて逃げていった。
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