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004 生殖のメカニズム

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 リーネが簡単に教えてくれた。

 曰く、スキルを使うには、ランスのメーターが上限の100でなければならない。

 朕ランスのメーターは、朕ポイント、略してCPという。

 CPは、コクーンの外に棲息する魔物を倒すことで増加する。

 そう、この世界にも魔物が棲息しているのだ!

 ゴブリンとか、スライムとか、ドラゴンとか、そういった魔物らしい。

 ランスには様々なモードがある。

 例えば封印されている美女を解放するのは〈解放モード〉という。

 他のモードについても簡単に説明されたけれど、よく覚えていない。

 他のことを考えていて、気が散っていた。

 とにかく、これらのモードが俺のユニークスキルということだ。

 必要に応じて詳しく教えてくれるらしいから、気にしないでおこう。

「ですので、カイト様が1日に行うお仕事は、魔物退治でCPを100にすることから始まり、それをユニークスキルで使うことで終わります」

 CPは魔物を1体倒すごとに10貯まるので、日に10体倒せばいいそうだ。

「なるほど、大体のことは分かった」

「では、早速、CPを貯めに行きましょうか。本来は、カイト様かレベル10以上の娘以外、コクーンの外に出てはいけないのですが、最初の研修のみ、私も外に出ることが許されているので」

「いや、その前に、リーネを孕ます為の作業に入ろう!」

 俺が話をよく覚えていなかったのは、これが言いたかったからだ。

 脳内には、リーネの裸体を堪能する自分の姿が映っていた。

「えっと、その」

 リーネは俺の言っている意味が分かっていないようだ。

 皆まで言わすなと思ったが、既に皆まで言っているようなものだった。

 俺はリーネの手を取り、更にハッキリと言った。

「子作りだよ! ベッドで大人の行為をしようぜ!」

 こんな発言をしても問題ない、という自信があった。

 実際に問題はなくて、リーネは嫌がるどころか喜んだ。

 しかし、首は横に振られた。

「私のような者と大人の行為をしていただけるのは嬉しいのですが、それでは孕むことができません」

「えっ、どういうこと?」

 リーネはうんざりする様子でもなく、こう前置きした。

「先ほど説明しましたことの繰り返しになりますが」

 どうやら既に言っていたらしい。

 捗る妄想に耽っていたせいで、完全に聞き逃していた。

「私達の受胎方法は、カイト様のスキル〈生殖モード〉を発動した状態の朕ランスで私達を突くことです」

 そういえば、そんな説明を受けた気がする。

「出産についても、俺の常識とは異なっているんだっけか」

 リーネが「そうです」と頷く。

 つまり、この世界における大人の行為は、快楽目的でのみ行われる。

「大人の行為をしても受胎することはない、ということをご理解頂いた上でのお誘いであれば、喜んでお受け致しますが、どういたしましょうか?」

 俺は二つ返事で「やるぞ!」と言いたかった。

 だが、言えない。

 説明を受ける中で、昂ぶる欲求が軽く落ち着いてしまった。

 望めばいつでも可能なわけだし、後で楽しめばいいわな。

「とりあえず、先に仕事をこなすとしよう。外に出て魔物狩りだ」

「かしこまりました」

 朕ランスを持ち、リーネと2人でコクーンの外に向かった。

 ◇

 コクーンの出入口は、半円状になっている空間の、水平部分の中央にある。

 完全な円だったら中心点となる場所に、出入口の自動ドアがある感じだ。

 ドアは二重になっており、2個目のドアが開かれると、外が見えた。

「外はこんな感じだったのか」

「予想と違いましたか?」

「いや、なんともだな」

 どこかの森に居るようで、外には木々が広がっていた。

 ドアの外に足を踏み出し、振り返ってみる。

 天に届きそうな巨大な壁がそびえていた。

 その壁にめり込む形で、コクーンは存在している。

 出入口以外は壁の中にあるから、外観がまるで分からなかった。

「魔物の強さは、コクーンに近い程に弱くなっております」

 森の中を歩きながら、リーネが説明する。

「でも、どいつを倒したって得られるCPは10なんだろ?」

「はい」

「だったら、雑魚だけ倒せばいいんじゃないか?」

「カイト様に限って言えば、そうです」

「どういうことだ?」

「カイト様の娘が倒した際に得られるCPが、敵のレベルに比例します」

「俺の娘か……」

 想像もつかない。

「って、〈生殖モード〉で、リーネや他の美女が俺の娘を孕むわけだろ?」

「そうです」

「だったら、リーネ達は俺の嫁ということになるのか?」

 リーネは嬉しそうな笑みを浮かべ、「はい」と頷いた。

「地下に居た無数の美女が全て俺の嫁……!」

 童貞どころか彼女すらいた経験がないのに、一気に、人生大逆転だ。

「ピュッピューイ!」

 などと思っていると、近くの茂みから魔物が現れた。
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