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第011話 服を買いましょう

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 3体のゴブリンが家族の一員になったことで、食費が2倍に跳ね上がった。
 これが日本であれば速やかに家計簿との睨めっこが始まるところだけれど、この世界の食費は極めて安いので気にならない。テイムする時に食費のことなど欠片も考えていなかったが、問題なかったのでよかったよかった。

 さて、本日はレオンと3体のゴブリンを引き連れて服屋にやってきた。
 既に自分用の服は何着か購入した私にとって、新たな服は必要ない。
 ではなぜ服屋に来たかといえば。

「「「ゴブゥ」」」

 ゴブリンの為だ。
 この子達は今、すっぽんぽんの状態である。
 別にそれが可哀想というわけではない。
 この子達にすれば今の自然スタイルがいいはず。
 服を買うのは私の事情によるものだった。

 詳しくは昨日に遡る。
 昨日とは、ゴブリンをテイムした翌日だ。

「今からレオンとお風呂に入るから、門番をよろしくね、ゴブオ」

 私はゴブリンに名前を付けた。
 ゴブオ、ゴブ太、ゴブ朗という名前だ。
 ゴブリン達は8時間交代で家の前を警備している。
 1体が警備している時、他の2体は寝るか食事するか。
 入浴を許可しているから、風呂に入ることもある。
 今回はゴブオ以外の2体は家の壁にもたれるように寝ていた。

「ゴブゥ……」

 なぜだかゴブオが悲しそうにする。
 右の人差し指を咥え、頬を膨らまして見てきた。

「え、どうしたの? 体調が悪いの?」

 ゴブオは「ゴブブゥ」と顔を横に振る。
 するとレオンが動いて、寝ているゴブリンの前で吼えだした。
 それに反応して1体のゴブリンが目を覚ます。

「えっ、ゴブ太がどうしたの? レオン」

 私が言うと、ゴブオが「ゴブ! ゴブ!」と声を大にした。
 さらに飛び跳ねて、「ゴブ! ゴブ!」と何度も頷く。
 私はその様子とレオンの行動から、どういうことか考えた。
 そして、1つの結論にたどり着く。

「もしかして……ゴブオはあっち!?」

 レオンが「ワゥーン」と頭をペコリ。
 やはりそうだ。私がゴブ太だと思っていたのがゴブオだ。
 すると、私がゴブオだと思って話しかけていたのは。

「えーっと、ゴブ太?」
「ゴブ! ゴブ!」

 正解のようだ。
 警備していたのはゴブ太だった。

「うぅーわからん! 違いがわからん!」

 そう、私には区別が付かなかったのだ。
 ゴブリン3兄弟は、私の目には全く同じ姿に見える。
 声にも特徴はなくて、全部同じ声だ。

「これで見分けが付くぞー!」
「「「ゴブゥー♪」」」

 私は服屋で三色の子供服を買った。
 青がゴブ太、赤がゴブオ、緑がゴブ朗だ。
 洗濯することも想定して、それぞれ予備を2着ずつ買う。

「これでもう問題ないね!」

 そう言うと、私は青い服のゴブリンを指した。

「君はゴブ太!」

 ゴブ太がぴょんぴょん跳ねて頷く。
 大正解だ。

「そして君はゴブ朗!」
「ゴブブのブー!」

 今度は緑の服を着たゴブリン。
 これも大正解で、ゴブ朗も同じリアクションをした。

「最後にゴブオ!」
「ゴブゥー!」

 ゴブオが抱きついてくる。
 見事に全問正解。実に気分がいい。
 それと同時に情けない気持ちにもなった。

「ごめんね、見分けがつけられなくて」

 ゴブリン達が「ゴブブ!」と顔を横に振る。
 それから3体で仲良く私にサムズアップを決めてきた。
 グイッと立てられた小さな親指。思いのほか可愛い。
 見た目は悪いが、なかなか良い仲間をもったと思った。

「ワンワン!」

 服屋を出ると、レオンが吼えだした。
 どうやらレオンも服を欲しいらしい。
 しかし、レオンに服は買ってやれない。

「レオンは服を着るのが嫌いでしょー!」

 そう、レオンは服が大嫌いなのだ。
 本人が着たがったので何度か着させたことがある。
 その度に心地悪そうにして、脱ごうと暴れるのだ。
 着たいと思う反面、着ると嫌な気になる困ったちゃん。

「ワゥゥ……」

 レオンはしょげるように頭を下ろしたあと、テクテク歩き出すのであった。
 なんだか可哀想なので、「分かったよ」と私は笑みを浮かべる。

「着るか着ないかは別として、レオンの服も買ってあげる」
「ワゥーン! ワンワゥーン♪」

 そんなわけで、私はレオンの服も追加で購入。
 その後、思った通り、レオンは服を嫌がるのであった。
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