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047 10月:作戦会議
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這々の体で逃げ帰ってきた学生連合軍。
幸いにも死傷者は出ておらず、全員が無事だ。
そして、またしても、作戦会議が開かれることとなった。
「思ったよりきついな」
会議は、1番隊の隊長によるこの言葉から始まった。
僕にとっては賛同しかねる発言だったが、他の5人は賛同していた。
「どうするよ、待機して夜襲に切り替えるか?」
「いや、夜は魔物の領分だ。分が悪すぎる」
「なら数カ所から同時に攻めるというのは?」
「戦力が分散して余計にきつくなるぞ」
「ならどうすりゃいいんだ」
会議は難航を極めていた。
僕は何も言わずに、会議の行く末を眺めている。
ミストラル先生の言葉を思い出していた。
――レイ君が真面目に戦うと、他の方の出番がなくなってしまいます。
あの言葉は、てっきり、強さだけの話かと思っていた。
敵は弱くて数が多いから、〈ファイア〉であっさりクリア出来る、と。
だが、それだけではないということが、今になって分かった。
先生との2人PTで鍛えられた僕にとって、この程度は屁でも無い。
突破方法はいくらでも浮かぶし、なんなら正面から突破することも可能だ。
もちろん、〈シールド〉で耐えながら進むわけではない。
数千の敵に同時攻撃されれば、僕の〈シールド〉でも厳しいから。
たしかに、僕が真面目に戦ったら、他の人はすることがない。
ミストラル先生は、少し、いや、かなり、僕を鍛えすぎてしまった。
何も言わずに振り返り、ミストラル先生を見る。
ミストラル先生は、他の先生方と協力し、肉を焼いていた。僕達が作戦会議をしている間に、他のメンバーに肉を振る舞い、英気を養わせるわけだ。僕の気配に気づくと、視線を手元からこちらに向け、目が合うと、一瞬だけ両目を閉じた。先生流のウインクだ。
「だからその作戦は無理があるっつってんだろ!」
「お前の作戦こそ無茶なんだよ! ボケが!」
いつの間にやら、大隊長同士で言い合いを始めていた。
1番隊と2番隊の隊長が揉めているようだ。
他の隊長の支持はというと、物の見事に二分されている。
「これでは埒があかないな……」
僕は先輩方の間に割って入った。
「どちらの案も試せばいいじゃないですか」
怒声が飛んでくるのを覚悟で言う。
しかし、怒声は飛んでこず、静かに注目が集まった。
僕が急に口を開いたから驚いているようだ。
「さっきのすごく危険で無謀で馬鹿げた作戦でさえ、損害は出なかったのだから、作戦が上手くいくかどうかは別として、失敗しても安全であることはたしかですよね。だったら、両方の作戦を試してみて、成功したらそれでいいし、失敗したら、反省点を挙げて、次に活かせばいいじゃないですか。時間はたくさんあるわけですし」
先輩方がきょとんとする。
口々に「たしかに」と呟いた。
「1年の言う通りだ」
「試行錯誤すりゃいいんだよな」
「エルブロ先生も、トライ・アンド・エラーってよく云ってるし」
「いや、それは恋愛に関する話だぞ?」
「それに、エルブロ先生の恋愛講座は嘘ばかりだぜ?」
「そういや俺も、エルブロ先生の助言を信じて失敗したな……」
「先生の話を真に受ける奴がおるか」
「「「はっはっは」」」
話が逸れて、エルブロ先生のことで盛り上がる先輩方。
話にはついて行けないが、エルブロ先生が人気なのは分かった。
僕にとっては、ただただ鬱陶しいだけの先生だが。
「ありがとうな、1年」
「お前のおかげで冷静になれたよ、1年」
「それならよかったです」
どうにか話が落ち着いてくれた。
話が進む前に、僕はある提案をすることにした。
「僕達がいる此処って、北門ですよね?」
「そうだ」
1番隊の隊長が頷く。
「じゃあ、7番隊だけ南門に行ってもいいですか?」
「俺達の為に、囮になってくれるってことか?」
「そんなところです。効果は分かりませんが、敵の注意を引けるかと」
もちろん囮になるつもりなどない。
ただ、先輩方の作戦に参加する気がないだけだ。
試行錯誤は良いことだが、あまりにも次元が低すぎる。
だから、南門に避難して自由に過ごしたい、というのが本音だ。
「7番隊って3人しかいないし、問題ないんじゃねーの?」
2番隊の隊長が言い、他の隊長が同意する。
「分かった。じゃあ、7番隊だけ南に移動してくれ」
「ありがとうございます。それでは」
先輩方に一礼してから、エマ達のもとに戻り、2人に事情を説明する。
話したのは建前、つまり、囮にとして行動する云々、のほうだ。
「そんなわけで、僕達は別行動となった」
「師匠、絶対に面倒くさいから逃げるだけでしょー」
「上手な建前の考えましたね、レイさん」
2人にはあっさり看破された。
流石、僕と数ヶ月を共にしているだけのことはある。
「レイ君、会議は終わったのですか?」
ミストラル先生が近づいてきた。
先生は、あえて言うまでもなく、気づいているに違いない。
とは思いつつも、きっちりと建前を説明する。
「なるほど、それは良い案ですね」
先生の言葉に、僕は突っ込みたくなった。
それは本音と建て前のどちらに対するセリフですか、と。
「ただ、3人だけで南門へ行かせることは承認できません。城内より魔物が打って出てくる可能性もありますし、何より、この付近には別の魔物が棲息していますから。先生も同行します。皆様の荷物を預かっていますから、駄目とは言わせませんよ。分かりましたね?」
「分かりました、よろしくお願いします」
僕達7番隊は、ミストラル先生と共に、南門へ向かって歩きだす。
幸いにも死傷者は出ておらず、全員が無事だ。
そして、またしても、作戦会議が開かれることとなった。
「思ったよりきついな」
会議は、1番隊の隊長によるこの言葉から始まった。
僕にとっては賛同しかねる発言だったが、他の5人は賛同していた。
「どうするよ、待機して夜襲に切り替えるか?」
「いや、夜は魔物の領分だ。分が悪すぎる」
「なら数カ所から同時に攻めるというのは?」
「戦力が分散して余計にきつくなるぞ」
「ならどうすりゃいいんだ」
会議は難航を極めていた。
僕は何も言わずに、会議の行く末を眺めている。
ミストラル先生の言葉を思い出していた。
――レイ君が真面目に戦うと、他の方の出番がなくなってしまいます。
あの言葉は、てっきり、強さだけの話かと思っていた。
敵は弱くて数が多いから、〈ファイア〉であっさりクリア出来る、と。
だが、それだけではないということが、今になって分かった。
先生との2人PTで鍛えられた僕にとって、この程度は屁でも無い。
突破方法はいくらでも浮かぶし、なんなら正面から突破することも可能だ。
もちろん、〈シールド〉で耐えながら進むわけではない。
数千の敵に同時攻撃されれば、僕の〈シールド〉でも厳しいから。
たしかに、僕が真面目に戦ったら、他の人はすることがない。
ミストラル先生は、少し、いや、かなり、僕を鍛えすぎてしまった。
何も言わずに振り返り、ミストラル先生を見る。
ミストラル先生は、他の先生方と協力し、肉を焼いていた。僕達が作戦会議をしている間に、他のメンバーに肉を振る舞い、英気を養わせるわけだ。僕の気配に気づくと、視線を手元からこちらに向け、目が合うと、一瞬だけ両目を閉じた。先生流のウインクだ。
「だからその作戦は無理があるっつってんだろ!」
「お前の作戦こそ無茶なんだよ! ボケが!」
いつの間にやら、大隊長同士で言い合いを始めていた。
1番隊と2番隊の隊長が揉めているようだ。
他の隊長の支持はというと、物の見事に二分されている。
「これでは埒があかないな……」
僕は先輩方の間に割って入った。
「どちらの案も試せばいいじゃないですか」
怒声が飛んでくるのを覚悟で言う。
しかし、怒声は飛んでこず、静かに注目が集まった。
僕が急に口を開いたから驚いているようだ。
「さっきのすごく危険で無謀で馬鹿げた作戦でさえ、損害は出なかったのだから、作戦が上手くいくかどうかは別として、失敗しても安全であることはたしかですよね。だったら、両方の作戦を試してみて、成功したらそれでいいし、失敗したら、反省点を挙げて、次に活かせばいいじゃないですか。時間はたくさんあるわけですし」
先輩方がきょとんとする。
口々に「たしかに」と呟いた。
「1年の言う通りだ」
「試行錯誤すりゃいいんだよな」
「エルブロ先生も、トライ・アンド・エラーってよく云ってるし」
「いや、それは恋愛に関する話だぞ?」
「それに、エルブロ先生の恋愛講座は嘘ばかりだぜ?」
「そういや俺も、エルブロ先生の助言を信じて失敗したな……」
「先生の話を真に受ける奴がおるか」
「「「はっはっは」」」
話が逸れて、エルブロ先生のことで盛り上がる先輩方。
話にはついて行けないが、エルブロ先生が人気なのは分かった。
僕にとっては、ただただ鬱陶しいだけの先生だが。
「ありがとうな、1年」
「お前のおかげで冷静になれたよ、1年」
「それならよかったです」
どうにか話が落ち着いてくれた。
話が進む前に、僕はある提案をすることにした。
「僕達がいる此処って、北門ですよね?」
「そうだ」
1番隊の隊長が頷く。
「じゃあ、7番隊だけ南門に行ってもいいですか?」
「俺達の為に、囮になってくれるってことか?」
「そんなところです。効果は分かりませんが、敵の注意を引けるかと」
もちろん囮になるつもりなどない。
ただ、先輩方の作戦に参加する気がないだけだ。
試行錯誤は良いことだが、あまりにも次元が低すぎる。
だから、南門に避難して自由に過ごしたい、というのが本音だ。
「7番隊って3人しかいないし、問題ないんじゃねーの?」
2番隊の隊長が言い、他の隊長が同意する。
「分かった。じゃあ、7番隊だけ南に移動してくれ」
「ありがとうございます。それでは」
先輩方に一礼してから、エマ達のもとに戻り、2人に事情を説明する。
話したのは建前、つまり、囮にとして行動する云々、のほうだ。
「そんなわけで、僕達は別行動となった」
「師匠、絶対に面倒くさいから逃げるだけでしょー」
「上手な建前の考えましたね、レイさん」
2人にはあっさり看破された。
流石、僕と数ヶ月を共にしているだけのことはある。
「レイ君、会議は終わったのですか?」
ミストラル先生が近づいてきた。
先生は、あえて言うまでもなく、気づいているに違いない。
とは思いつつも、きっちりと建前を説明する。
「なるほど、それは良い案ですね」
先生の言葉に、僕は突っ込みたくなった。
それは本音と建て前のどちらに対するセリフですか、と。
「ただ、3人だけで南門へ行かせることは承認できません。城内より魔物が打って出てくる可能性もありますし、何より、この付近には別の魔物が棲息していますから。先生も同行します。皆様の荷物を預かっていますから、駄目とは言わせませんよ。分かりましたね?」
「分かりました、よろしくお願いします」
僕達7番隊は、ミストラル先生と共に、南門へ向かって歩きだす。
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