息子を救いにきました。

オプフル

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死んだはずの女

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目が覚める。
見知らぬ天井。
私は上体を起こし、目を擦りながら周囲を見渡す。
私が寝ていたベッド、床に散乱した書物、用をなさない本棚、天井の真ん中辺りに取り付けられた電球、窓ガラスから覗かせる雨。
ここは、一体どこなのであろう。
今起きている現状を理解しようと、腕を組み、胡座をかき私はここに至るまでの記憶を辿るが、ここに至るまでの記憶に現状と結びつくものは何一つなかった。
が。
死ぬ間際、否、今生きているのであるから違うのかもしれないが、その時の記憶は色濃く残っている。
ビルの屋上から飛び降り、下からの風圧に逆らいながら落下し、そして、地面に叩きつけられるまでの記憶。
ならどうして死んでいない?
私は確かに自殺を試みて、ビルの屋上から飛び降りたはずではないか?
なら、どうして生きていて尚且つ無傷でこんなところにいるんだ?
いろんなことが頭の中で混同し、困惑する。
そんな困惑を妨げるように、部屋のドアがコンコンと叩かれた。
私はドアの方に目をやり、戸惑いつつも「ど、どうぞ」とドアの向こうにいる人物へ向けて言った。
ドアが開かれる。
すると、そこにはお盆を持った一人の少女が現れた。
白髪でショートヘア、透き通るように白い肌、コンビネゾンの汚れた服、水色の瞳、愛らしい容姿、年は12歳ぐらいであろうか。
少女はこちらに歩み寄りながら「よく寝れましたか?」と心配気味に訊いてきた。
私は状況が吞み込めなかったが「は、はい、よく寝れました」と取り敢えず答える。
この少女もまた、見覚えがない。
少女は隣にあった引き出し棚の上にお盆を置き「それは良かったです」と安心したように微笑んだ。
困惑が再発する。
この女の子は誰で、ここはどこなんだ?
繰り返し頭の中で先程と同じ事がが疑問に浮かぶ。
彼女は私の顔を見て「嵐の中、倒れているところを私が見つけてここまで連れてきたんですよ」と口にした。
「え?」私は間抜けな声を出す。
それに続けて「私はビルから飛び降りて死んだはずじゃないんですか?」と言葉にした。
少女は「ビル?死んだ?何を言っているんですか?」と苦笑を浮かべる。
「まぁ、取り敢えず今はゆっくり体を休めてください」と微笑んで言い残し、部屋を出て行ってしまった。
身なりと合わず、気品のある少女だった。
私は引き出し棚に置いてあったお盆を上から覗き込むように見る。
「なんか、、、、おかしい?」
訝しげに睨め回す。
お盆の上に乗った品々を。
なんだこれはと。
乗った品々は全く知らない食べ物ばかりで、どれもこれも私に違和感を覚えさせた。
お盆の上に置いてあったスプーンを手に取り、数あるうちの一つの皿から『食べ物』を取り口に運ぶ。
美味しい。
しかし、今まで出会った事のない味。
その『食べ物』の味にも若干の違和感を覚える。
その時、ふと先程の少女の顔が脳裏に浮かぶ。
12歳ぐらいの。
12歳。
それと同時にある人物の顔も浮かぶ。
もう会いたくても会えないと思っている男の子の顔を。
でも、女は知らなかった。
実はその男の子がまだ生きていることを。

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