15 / 18
15 真相
しおりを挟む
ヴェルディーンとクレシュへの襲撃は、現王派閥の犯行だった。
厳密に言えば、宰相とその懐刀と言われるハントス公爵が中心で、ほか多数が関わっていることが後に明らかになった。
屋敷の護衛を引き上げさせた指示、クレシュを出張へ引きずり出した指示、襲撃者の身元や証言、使われた武器や毒の出所--それらは偽装工作されていたが、丁寧に辿っていけば犯人を指し示した。
あの夜、ヴェルディーンが護衛再配備要請を託した使者は、王宮執務棟の小さな控え室に通され、重要性を理解していないかのようにだらだらと何時間も待たされた。
それも犯人側の手回しだったのだろう。使者は平民でなく下級貴族の出だったが、相手の権力が大きすぎた。
早朝、たまたま早出だったルーゼル団長の元にディアが現れ、屋敷襲撃とその鎮圧の報を伝えた。
配下を連れ自ら出陣しようとしたところで憔悴した半泣きの使者と出会い、彼も連れて屋敷へ急行した。
そして色々と凄い惨状の屋敷で、勇者と元王子の無事を確認して息を吐いた。
役に立てなかったと泣く使者をヴェルディーンは、いや君は危険な仕事を立派に遂行した、不安に過ごす皆にとって君は希望であり心の支えだったと労った。
ルーゼル団長が部下達にすぐ現場検証させたのがよかった。その日の昼頃、検証を中止しすぐ帰るようにと、上--現王派の制武大臣から指示が来たが、団長はのらくら言って続行した。
彼らは、早朝からいなかったルーゼル団長の所在を掴みそこねて後手に回った。
ルーゼル団長は現王派閥ではない。彼らは自分の手の者以外に現場の証拠を集められることを阻止しようとしたが失敗した。そして彼らに不都合な証拠が集められていった。
無論、出張先でクレシュが捕らえた刺客や副村長、関与した領主、いくつもの証拠も派遣隊が既に押さえていた。
しかし、いかに明確な証拠が大量にあっても、権力を独占するブラックボックスが「俺達はこれを嘘と決めた」と言い情報操作すれば全て握りつぶされるのが現実だ。
それを阻止し、迅速に情報を世に晒し世論を味方につけたのがネルフィア殿下だ。
布告騒動以来、ネルフィア殿下が支持を伸ばし、一方で現王派閥が分裂して権力構造に皹を入れていたのが幸いだった。
ネルフィア殿下は集められた証拠と自身の力を持って楔のようにブラックボックスを割り、公正の守護者となった。
必要なのは実力や事実だが、それを権力に不当に潰されない盾として権力は重要だな、と、それを知る故に白の騎士団を務めるルーゼル団長はしみじみ思い、そしてネルフィア殿下のおわす王宮王族棟に向かって敬礼した。
◇◆◇◆◇◆
執務室で、クレシュはルーゼル団長から渡された現王派からの陳情書を読んだ。
--事件は全てネルフィア殿下の謀略であり、宰相及び現王派閥を冤罪に陥れるものである。以下こそが事件の真相であり、正義が示されることを願う。
ネルフィア殿下は王位への醜い野心に固執していた。
勇者への降嫁の布告は、王女の歪んだ野心を封じ安らかに女の幸せを求めて貰おうとした周囲の心ある配慮であったが、勇者がたまたま女性であったという悲劇的アクシデントで無に帰してしまった。
しかも腹黒い裏工作だけは得意な彼女は、ヴェルディーン殿下を陥れ臣籍に落とし王家から排除した。更に実の父を厳しく責め、壮健な大の男を心痛で寝込ませる程に人間性に欠陥のある烈女だった。
最早ネルフィア殿下の天下となるかと思われたが、そんな醜く愚かな者に国を委ねてはならない、と心ある者達は決して従わなかった。
中でもヴェルディーン殿下を次期王にと推す声は、彼の臣籍降下後も未だ根強く、優秀な兄に長年劣等感を拗らせていたネルフィア殿下は憎悪を募らせた。
そして今回、ヴェルディーン殿下とその妻の殺害を企て、その罪を目の上の瘤である我々になすりつけた--
「気持ち悪いな」
「全くだ。男の妄想力は怖いねぇ」
クレシュとルーゼルは一蹴した。
妄想界の住人を相手にしていると病みそうだ。まぁ、男社会歴が長い二人はこの手の妄想癖は山程見てきたので免疫があるが。
無論、捜査部局の悲しさで、こんな馬鹿馬鹿しい言い分に沿った調査もしなければならなかったが、彼らの主張の根拠は妄想しかなく、現実の証拠は悉く彼らの有罪とネルフィア殿下の無実を指し示した。
夜会の前にルーゼル団長から聞いた双子殿下の不仲説の噂、あれも現王派閥が出所だった。
恐らくそれでも、従来のように現王派閥で権力を独占した箱庭で裁定されたなら、容易に黒を白に白を黒にと塗り替え断罪されただろう。彼らは今までずっとそうした手口を繰り返してきたのだから。
事実関係でなく自分の欲望と権力で全てを押し通せるという甘えで自分達をスポイルしてきた結果、これ程お粗末な有り様になりはてたのだろう。
クレシュと屋敷の襲撃がどちらも失敗に終わり、証拠や証人が大量にできたのも彼らの誤算だろう。
ヴェルディーン襲撃は、「犯人」が彼を一旦誘拐して監禁し、後に現王派が「救出」するが、心身が傷ついていたため「保護下で療養」して頂くという筋書きだったそうだ。無論、犯人も救出者も仲間である。
現王派は救出者兼保護者として「病床のヴェルディーンの意志」を王宮に伝え采配を握る。実際に語られる意思は彼でなく現王派の意志だ。
ヴェルディーンを一生閉じ込めておけるものではないことは彼らも分かっている。
「保護」下にいる間に、「妹の非道」に気付き改心して救出してくれた現王派に感謝するようになれば--その過程で洗脳や薬物投与があるにせよ--表に出し傀儡として次期王の座に就けられる。
上手く洗脳できなければ「病死」し、その頃にはネルフィア殿下も「断罪」され消えている以上、王族外戚の男子を次期王に据えられる。
この胸が悪くなるような筋書きは、襲撃者達に吐かせたヴェルディーン「監禁」「保護」予定場所で襲撃成功の連絡を待っていた者達から聞き出した。
仲間の振りをした騎士団諜報員に、彼らは色々話してくれた。
クレシュへの襲撃は、ヴェルディーン誘拐の副産物だった。誘拐にしろ傀儡にしろ、ヴェルディーンが危機となれば鬼神もかくやと暴れて脅威となるからだ。物理的に。
また、王位継承者に復帰させるとしたら彼を臣籍に縛る妻は邪魔だったそうだ。
クレシュはため息を吐く。
「諜報員は大変だな。私は剣を振り回して解決する方が楽だ」
ヴェルディーンのいる屋敷を襲撃され、鬼神もかくやと暴れた勇者の言葉に、ルーゼル団長は苦笑する。
「適材適所。諜報員達は、魔物の巣穴に飛び込むよりはましな仕事だと思っているさ」
クレシュは顔をしかめて、分かったような分からないような意を表した。
厳密に言えば、宰相とその懐刀と言われるハントス公爵が中心で、ほか多数が関わっていることが後に明らかになった。
屋敷の護衛を引き上げさせた指示、クレシュを出張へ引きずり出した指示、襲撃者の身元や証言、使われた武器や毒の出所--それらは偽装工作されていたが、丁寧に辿っていけば犯人を指し示した。
あの夜、ヴェルディーンが護衛再配備要請を託した使者は、王宮執務棟の小さな控え室に通され、重要性を理解していないかのようにだらだらと何時間も待たされた。
それも犯人側の手回しだったのだろう。使者は平民でなく下級貴族の出だったが、相手の権力が大きすぎた。
早朝、たまたま早出だったルーゼル団長の元にディアが現れ、屋敷襲撃とその鎮圧の報を伝えた。
配下を連れ自ら出陣しようとしたところで憔悴した半泣きの使者と出会い、彼も連れて屋敷へ急行した。
そして色々と凄い惨状の屋敷で、勇者と元王子の無事を確認して息を吐いた。
役に立てなかったと泣く使者をヴェルディーンは、いや君は危険な仕事を立派に遂行した、不安に過ごす皆にとって君は希望であり心の支えだったと労った。
ルーゼル団長が部下達にすぐ現場検証させたのがよかった。その日の昼頃、検証を中止しすぐ帰るようにと、上--現王派の制武大臣から指示が来たが、団長はのらくら言って続行した。
彼らは、早朝からいなかったルーゼル団長の所在を掴みそこねて後手に回った。
ルーゼル団長は現王派閥ではない。彼らは自分の手の者以外に現場の証拠を集められることを阻止しようとしたが失敗した。そして彼らに不都合な証拠が集められていった。
無論、出張先でクレシュが捕らえた刺客や副村長、関与した領主、いくつもの証拠も派遣隊が既に押さえていた。
しかし、いかに明確な証拠が大量にあっても、権力を独占するブラックボックスが「俺達はこれを嘘と決めた」と言い情報操作すれば全て握りつぶされるのが現実だ。
それを阻止し、迅速に情報を世に晒し世論を味方につけたのがネルフィア殿下だ。
布告騒動以来、ネルフィア殿下が支持を伸ばし、一方で現王派閥が分裂して権力構造に皹を入れていたのが幸いだった。
ネルフィア殿下は集められた証拠と自身の力を持って楔のようにブラックボックスを割り、公正の守護者となった。
必要なのは実力や事実だが、それを権力に不当に潰されない盾として権力は重要だな、と、それを知る故に白の騎士団を務めるルーゼル団長はしみじみ思い、そしてネルフィア殿下のおわす王宮王族棟に向かって敬礼した。
◇◆◇◆◇◆
執務室で、クレシュはルーゼル団長から渡された現王派からの陳情書を読んだ。
--事件は全てネルフィア殿下の謀略であり、宰相及び現王派閥を冤罪に陥れるものである。以下こそが事件の真相であり、正義が示されることを願う。
ネルフィア殿下は王位への醜い野心に固執していた。
勇者への降嫁の布告は、王女の歪んだ野心を封じ安らかに女の幸せを求めて貰おうとした周囲の心ある配慮であったが、勇者がたまたま女性であったという悲劇的アクシデントで無に帰してしまった。
しかも腹黒い裏工作だけは得意な彼女は、ヴェルディーン殿下を陥れ臣籍に落とし王家から排除した。更に実の父を厳しく責め、壮健な大の男を心痛で寝込ませる程に人間性に欠陥のある烈女だった。
最早ネルフィア殿下の天下となるかと思われたが、そんな醜く愚かな者に国を委ねてはならない、と心ある者達は決して従わなかった。
中でもヴェルディーン殿下を次期王にと推す声は、彼の臣籍降下後も未だ根強く、優秀な兄に長年劣等感を拗らせていたネルフィア殿下は憎悪を募らせた。
そして今回、ヴェルディーン殿下とその妻の殺害を企て、その罪を目の上の瘤である我々になすりつけた--
「気持ち悪いな」
「全くだ。男の妄想力は怖いねぇ」
クレシュとルーゼルは一蹴した。
妄想界の住人を相手にしていると病みそうだ。まぁ、男社会歴が長い二人はこの手の妄想癖は山程見てきたので免疫があるが。
無論、捜査部局の悲しさで、こんな馬鹿馬鹿しい言い分に沿った調査もしなければならなかったが、彼らの主張の根拠は妄想しかなく、現実の証拠は悉く彼らの有罪とネルフィア殿下の無実を指し示した。
夜会の前にルーゼル団長から聞いた双子殿下の不仲説の噂、あれも現王派閥が出所だった。
恐らくそれでも、従来のように現王派閥で権力を独占した箱庭で裁定されたなら、容易に黒を白に白を黒にと塗り替え断罪されただろう。彼らは今までずっとそうした手口を繰り返してきたのだから。
事実関係でなく自分の欲望と権力で全てを押し通せるという甘えで自分達をスポイルしてきた結果、これ程お粗末な有り様になりはてたのだろう。
クレシュと屋敷の襲撃がどちらも失敗に終わり、証拠や証人が大量にできたのも彼らの誤算だろう。
ヴェルディーン襲撃は、「犯人」が彼を一旦誘拐して監禁し、後に現王派が「救出」するが、心身が傷ついていたため「保護下で療養」して頂くという筋書きだったそうだ。無論、犯人も救出者も仲間である。
現王派は救出者兼保護者として「病床のヴェルディーンの意志」を王宮に伝え采配を握る。実際に語られる意思は彼でなく現王派の意志だ。
ヴェルディーンを一生閉じ込めておけるものではないことは彼らも分かっている。
「保護」下にいる間に、「妹の非道」に気付き改心して救出してくれた現王派に感謝するようになれば--その過程で洗脳や薬物投与があるにせよ--表に出し傀儡として次期王の座に就けられる。
上手く洗脳できなければ「病死」し、その頃にはネルフィア殿下も「断罪」され消えている以上、王族外戚の男子を次期王に据えられる。
この胸が悪くなるような筋書きは、襲撃者達に吐かせたヴェルディーン「監禁」「保護」予定場所で襲撃成功の連絡を待っていた者達から聞き出した。
仲間の振りをした騎士団諜報員に、彼らは色々話してくれた。
クレシュへの襲撃は、ヴェルディーン誘拐の副産物だった。誘拐にしろ傀儡にしろ、ヴェルディーンが危機となれば鬼神もかくやと暴れて脅威となるからだ。物理的に。
また、王位継承者に復帰させるとしたら彼を臣籍に縛る妻は邪魔だったそうだ。
クレシュはため息を吐く。
「諜報員は大変だな。私は剣を振り回して解決する方が楽だ」
ヴェルディーンのいる屋敷を襲撃され、鬼神もかくやと暴れた勇者の言葉に、ルーゼル団長は苦笑する。
「適材適所。諜報員達は、魔物の巣穴に飛び込むよりはましな仕事だと思っているさ」
クレシュは顔をしかめて、分かったような分からないような意を表した。
0
あなたにおすすめの小説
自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで
嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。
誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。
でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。
このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。
そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語
執筆済みで完結確約です。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~
水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。
彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。
失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった!
しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!?
絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。
一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。
悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました
ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。
壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。
報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?
小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。
しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。
突然の失恋に、落ち込むペルラ。
そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。
「俺は、放っておけないから来たのです」
初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて――
ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。
婚約破棄された令嬢は氷の公爵に拾われ、気づけば溺愛されていました~見下してきたあなた、後悔してももう遅いわ~
exdonuts
恋愛
婚約者である王太子に理不尽な罪をなすりつけられ、婚約破棄された公爵令嬢レティシア。
家族にも見放され、絶望の淵にいた彼女の手を取ったのは「氷の公爵」と呼ばれる冷徹な青年・アランだった。
愛を知らずに生きてきた彼の優しさが、傷ついたレティシアの心を少しずつ溶かしていく。
一方、過去の悪行が暴かれ始めた王太子とその取り巻きたち。
ざまぁが爽快、愛が深く、運命が巡る。
涙と笑顔の“溺愛ざまぁ”ロマンス。
【完結】無能と追放された魔導鍛冶師、最強の騎士に拾われ溺愛される
ムラサメ
恋愛
「君の打つ剣は輝きが足りない。もっと華やかに光る、騎士団の象徴となる剣を打てないのか」
実家の鍛冶屋からも、婚約者である騎士団長カイルからも「無能」と切り捨てられた鍛冶師・メル。不純物を削ぎ落とし、使い手の命を守るためだけに特化した彼女の「究極の業」は、美しさを求める凡夫たちには理解されなかった。
冷たい雨の中、行き場を失い魔物に襲われた彼女を救ったのは、隣国の至宝であり、その強すぎる魔力ゆえに触れる武器すべてを粉砕してしまう最強の騎士――アルベールだった。
圧倒的な武力で魔物を屠り、砕けた愛剣を悲しげに見つめるアルベール。周囲がその「化け物じみた力」を恐れて遠巻きにする中で、メルだけは違った。彼女は泥にまみれた鉄の破片を拾い上げ、おっとりと微笑む。
「……騎士様。この子は、あなたの力に応えようとして、精一杯頑張ったみたいですよ」
その場で振るわれたメルのハンマーが、世界で唯一、アルベールの全力を受け止める「不壊の剣」を産み落とした瞬間――最強ゆえに孤独だった英雄の運命が、狂おしく回り始める。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる