87 / 121
本編 ~ 第八章 ~
79話 乾いた大地 ~挟み撃ち~
しおりを挟む
私達はあの樹海から抜け出し、少し離れた場所へ来ていた。
そこは砂埃舞う岩だらけのゴツゴツした地面の上。
黄色や緑色のトラックが数台打ち捨てられ、いずれも泥や砂が付き断面がへこんでいるものもある。
トラックの荷台には落書きがされている物もあり、荷台だけが外れて転がっている。
所々に背の低い草が地面から顔を出し、殺風景な地に色合いを持たせている。
その周辺にはグールが数体いたが、この世界に長らくいる私に取っては、もう敵ではなかった。
二人で手分けしてグールを片付け、敵がいなくなった事を確認すると、すかさず使えそうな物がないか物色し始めた。
「ねぇねぇ、これいる?」
私がプリンに差し出したのは鉄の塊。
鉄の板がいくつも重なり合い、もはやただの鉄の塊にしか見えない。
「あぁ? んなもん必要ねぇだろ⋯⋯」
プリンはそう言って、荷台の中に雑に置かれた布団の上に寝っ転がった。
バフォッーー
私達はこの打ち捨てられた、トラックの荷台の中に散乱していた木箱や、壊れたラジオを外に放り投げ、自分達の住処を作っていた。
住処といっても簡単なものだ。
あまり長居する気はないからね。
中にあった小型テーブルは、足が折れ丸い形をしていたであろう原型は留めておらず、真っ二つに割れていた。
到底使い物になるとは思えない。
他にも、何に使うのか、使い方も定かではない古臭いカメラや、卓上ファンにトイレによくある吸い付く棒のような物まであった。
ガシャガシャーードカッバァンーーシャカッーー
使い物にならない物は全て、荷台の外に放り投げてやった。
プリンが横になっているすぐ側で、騒がしく片付けをしていると、その騒がしさに釣られたのか、何やら裏手から不気味な音が聞こえてきた。
ガタガターードンーードンーー
その物音は、明らかに私が外に放り投げたガラクタ達の音ではなかった。
「な、なに?」
その驚きから、思わず声が裏返ってしまった。
「くそっ!」
プリンはその物音に反応し、今までぐったり横になっていたのが嘘のように、瞬時に体を起こし銃を手にした。
そのプリンの動きに釣られてか、私も咄嗟にホルスターからピストルを抜き構えた。
そして私達は恐る恐る荷台の外に出た。
何者かを特定しなければならない。
まずは二人で背中合わせになり両端を確認すると共に、銃口を目の前に向けた。
私の額からは変な汗が出る。
次に荷台の裏手に回り込むように、別々の位置から挟み撃ち!
荷台に体をピッタリとくっつけながら慎重に進む。
砂埃や長年放置されているせいで薄汚れている荷台に、体を擦りつけながらゆっくりと⋯⋯。
服が汚れるとか、今はそんな事を考えている余裕はなかった。
私は息を飲み、銃口を上に向け顔の側に持ってきた。
いつでも戦える準備は出来ている。
後は顔を覗かせれば、裏手にいる何者かの姿を目視できる。
鼓動が早まる。
そして意を決して素早く体を動かし、何者かと対面した。
同時に何者かに銃口を向ける。
そして私に合わせるかのようにプリンも同じように銃口を向けた。
挟み撃ちだ。
私はその正体を見て愕然とした。
「デスアロウだ!」
そうプリンが叫んだ時には、2体いるうちの1体がこっちに向かってきていた。
「きゃっ!」
その速さと驚きから尻もちをついた。
パンパンーーパンパンーー
パニックになった私が放った銃弾は、当然当たるわけもなく、咄嗟の判断で逃げるしかなかった。
「テン! こっちだ!」
私を呼ぶプリンの声すらも聞こえないほどにパニックになっていた。
ザザッーーグァァァァァ!!
今にも食い千切りそうなほど大きく開けた口と、両手を上げ鋭く伸びた爪を見た私は、もはや恐怖しかなかった。
デスアロウに圧倒された私は、その場に尻もちをついたまま、動く事すら出来なかった。
「おい! しっかりしろ! こっちにこい!」
プリンが必死で呼んでいる。
このままここにいると私は確実に食い殺される!
しばらくの刻が止まった後、私の視界にはこっちに向かってくるデスアロウと、私に手を伸ばすプリンが見えた。
「登れ! 早く!」
プリンは上だ。荷台にの上にいる。
「⋯⋯うん!」
私は正気を取り戻し腰を上げた。
いくら凶悪なデスアロウでも、高い所に登る知能はないはずだ。
私は上から伸ばすプリンの手を掴もうと必死だ。
しかし思ったより荷台は高く苦戦する。
デスアロウはもうすぐそこまで迫っている。
運がいいのか悪いのか、デスアロウは荷台の角に体が引っかかったまま、こっちに来れないでいる。
オープンワールドではあるあるだが、今はそんな事でニヤッとしている余裕もない。
今がチャンスだ。寧ろ今しかない。
早くプリンの手を掴むんだ。
そう自分に言い聞かせ、ないジャンプ力を発揮した。
パンーーグッーー
掴んだ!
後は引き上げてもらうだけ。
ガガッーーグガァァァ!!
やばい! 抜けた。
デスアロウの力は強大だった。
荷台の角が壊れて木がパラパラと地面に落ちる。
そして物凄い勢いでこっちに向かってくる。
ガシャンーードンーーグァッーー
プリンの手にぶら下がっている私は下を見てしまった。
デスアロウがその狂気な爪を伸ばし、私の足を掴もうとしている。
早く! 引き上げて!
私はその願いを込めて、精一杯頑張っているであろうプリンの顔を見上げた。
バシューー
「きゃっ!」
デスアロウの手が私の足を掴んだ。
そこは砂埃舞う岩だらけのゴツゴツした地面の上。
黄色や緑色のトラックが数台打ち捨てられ、いずれも泥や砂が付き断面がへこんでいるものもある。
トラックの荷台には落書きがされている物もあり、荷台だけが外れて転がっている。
所々に背の低い草が地面から顔を出し、殺風景な地に色合いを持たせている。
その周辺にはグールが数体いたが、この世界に長らくいる私に取っては、もう敵ではなかった。
二人で手分けしてグールを片付け、敵がいなくなった事を確認すると、すかさず使えそうな物がないか物色し始めた。
「ねぇねぇ、これいる?」
私がプリンに差し出したのは鉄の塊。
鉄の板がいくつも重なり合い、もはやただの鉄の塊にしか見えない。
「あぁ? んなもん必要ねぇだろ⋯⋯」
プリンはそう言って、荷台の中に雑に置かれた布団の上に寝っ転がった。
バフォッーー
私達はこの打ち捨てられた、トラックの荷台の中に散乱していた木箱や、壊れたラジオを外に放り投げ、自分達の住処を作っていた。
住処といっても簡単なものだ。
あまり長居する気はないからね。
中にあった小型テーブルは、足が折れ丸い形をしていたであろう原型は留めておらず、真っ二つに割れていた。
到底使い物になるとは思えない。
他にも、何に使うのか、使い方も定かではない古臭いカメラや、卓上ファンにトイレによくある吸い付く棒のような物まであった。
ガシャガシャーードカッバァンーーシャカッーー
使い物にならない物は全て、荷台の外に放り投げてやった。
プリンが横になっているすぐ側で、騒がしく片付けをしていると、その騒がしさに釣られたのか、何やら裏手から不気味な音が聞こえてきた。
ガタガターードンーードンーー
その物音は、明らかに私が外に放り投げたガラクタ達の音ではなかった。
「な、なに?」
その驚きから、思わず声が裏返ってしまった。
「くそっ!」
プリンはその物音に反応し、今までぐったり横になっていたのが嘘のように、瞬時に体を起こし銃を手にした。
そのプリンの動きに釣られてか、私も咄嗟にホルスターからピストルを抜き構えた。
そして私達は恐る恐る荷台の外に出た。
何者かを特定しなければならない。
まずは二人で背中合わせになり両端を確認すると共に、銃口を目の前に向けた。
私の額からは変な汗が出る。
次に荷台の裏手に回り込むように、別々の位置から挟み撃ち!
荷台に体をピッタリとくっつけながら慎重に進む。
砂埃や長年放置されているせいで薄汚れている荷台に、体を擦りつけながらゆっくりと⋯⋯。
服が汚れるとか、今はそんな事を考えている余裕はなかった。
私は息を飲み、銃口を上に向け顔の側に持ってきた。
いつでも戦える準備は出来ている。
後は顔を覗かせれば、裏手にいる何者かの姿を目視できる。
鼓動が早まる。
そして意を決して素早く体を動かし、何者かと対面した。
同時に何者かに銃口を向ける。
そして私に合わせるかのようにプリンも同じように銃口を向けた。
挟み撃ちだ。
私はその正体を見て愕然とした。
「デスアロウだ!」
そうプリンが叫んだ時には、2体いるうちの1体がこっちに向かってきていた。
「きゃっ!」
その速さと驚きから尻もちをついた。
パンパンーーパンパンーー
パニックになった私が放った銃弾は、当然当たるわけもなく、咄嗟の判断で逃げるしかなかった。
「テン! こっちだ!」
私を呼ぶプリンの声すらも聞こえないほどにパニックになっていた。
ザザッーーグァァァァァ!!
今にも食い千切りそうなほど大きく開けた口と、両手を上げ鋭く伸びた爪を見た私は、もはや恐怖しかなかった。
デスアロウに圧倒された私は、その場に尻もちをついたまま、動く事すら出来なかった。
「おい! しっかりしろ! こっちにこい!」
プリンが必死で呼んでいる。
このままここにいると私は確実に食い殺される!
しばらくの刻が止まった後、私の視界にはこっちに向かってくるデスアロウと、私に手を伸ばすプリンが見えた。
「登れ! 早く!」
プリンは上だ。荷台にの上にいる。
「⋯⋯うん!」
私は正気を取り戻し腰を上げた。
いくら凶悪なデスアロウでも、高い所に登る知能はないはずだ。
私は上から伸ばすプリンの手を掴もうと必死だ。
しかし思ったより荷台は高く苦戦する。
デスアロウはもうすぐそこまで迫っている。
運がいいのか悪いのか、デスアロウは荷台の角に体が引っかかったまま、こっちに来れないでいる。
オープンワールドではあるあるだが、今はそんな事でニヤッとしている余裕もない。
今がチャンスだ。寧ろ今しかない。
早くプリンの手を掴むんだ。
そう自分に言い聞かせ、ないジャンプ力を発揮した。
パンーーグッーー
掴んだ!
後は引き上げてもらうだけ。
ガガッーーグガァァァ!!
やばい! 抜けた。
デスアロウの力は強大だった。
荷台の角が壊れて木がパラパラと地面に落ちる。
そして物凄い勢いでこっちに向かってくる。
ガシャンーードンーーグァッーー
プリンの手にぶら下がっている私は下を見てしまった。
デスアロウがその狂気な爪を伸ばし、私の足を掴もうとしている。
早く! 引き上げて!
私はその願いを込めて、精一杯頑張っているであろうプリンの顔を見上げた。
バシューー
「きゃっ!」
デスアロウの手が私の足を掴んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
55
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる