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一瞬
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ワシは行くけえ、元気でな。
あなたは絶対にさよならを言わない。それはまた会えるという期待を残しておきたいからなのか、バッサリと二度と会えないと言えない弱さからなのか。
何か思うことがある時、私は何も言えない。機械的なアナウンスやトランクをひく音、人が話す声。雑多な環境音ばかり気になってしまう。
私は出来るなら、あなたのそばにいたい。これから先あなたの才能に気づく人が何百万人と現れ、世界へ知らしめることになるだろう。その時、真っ先に想いを届けたいと思う人が、私であって欲しいと、心の中で願っている。でもそれも、きっと出来ないのだろう。
うん、元気でね。
来ないと思っていた時が来た時、時間の冷たさを知る。
あなたのこれからを願っています、そう言いたくて俯いた顔を上げた——
唇に当たるあなたの感触。それは私が答えとして欲しかったのかもしれない感触。そのコンマ五秒くらいの瞬間は、私にとっての永遠と思いたい時間。
春の残酷なくらい煌めく陽に照らされ、あなたは笑った。
いつかまた、どこかで会えるじゃろ。
私を見下ろす瞳は潤むが、それをしっかりと見せないうちに背を向けた。
鼻を擦る癖、また出てる。
大きくて優しい背中は、やがて点となり見えなくなった。
あなたは絶対にさよならを言わない。それはまた会えるという期待を残しておきたいからなのか、バッサリと二度と会えないと言えない弱さからなのか。
何か思うことがある時、私は何も言えない。機械的なアナウンスやトランクをひく音、人が話す声。雑多な環境音ばかり気になってしまう。
私は出来るなら、あなたのそばにいたい。これから先あなたの才能に気づく人が何百万人と現れ、世界へ知らしめることになるだろう。その時、真っ先に想いを届けたいと思う人が、私であって欲しいと、心の中で願っている。でもそれも、きっと出来ないのだろう。
うん、元気でね。
来ないと思っていた時が来た時、時間の冷たさを知る。
あなたのこれからを願っています、そう言いたくて俯いた顔を上げた——
唇に当たるあなたの感触。それは私が答えとして欲しかったのかもしれない感触。そのコンマ五秒くらいの瞬間は、私にとっての永遠と思いたい時間。
春の残酷なくらい煌めく陽に照らされ、あなたは笑った。
いつかまた、どこかで会えるじゃろ。
私を見下ろす瞳は潤むが、それをしっかりと見せないうちに背を向けた。
鼻を擦る癖、また出てる。
大きくて優しい背中は、やがて点となり見えなくなった。
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