ジャンヌ・ダルクがいなくなった後

碧流

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絶望②

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(またここに来ることになるなんて…)

私は馬車の中から城を見上げた。

ロシュ城

ロシュの町並みやアンドル河畔が一望できるこの城は、かつては王家の監獄と言われていた。

シャルルも戦火を逃れてこの城に滞在しており、あのジャンヌが、オルレアンの戦いの後、ランスで戴冠するよう説得するためにシャルルを訪れた場所もここだった。

だから、あの女アニェスにこの城を贈ったと聞いて、首を傾げたものだ。

(もっと豪奢な城を贈ると思ったけど…)

この城は『麗しの貴婦人』と呼ばれたあの女には、武骨な感じがした。

しかし、シャルルはこの城であの女を愛し、亡くした今はこの城奥深くに引きこもっているという。
信頼できるもの2~3名としか会わず、食もとらないとか。

…それほどあの女に心を奪われておいでか…

扇を握りしめる手に力が入る。

その時、馬車の歩みが遅くなった。
しばらくして、馬車は完全に止まり、外が何やら騒がしい。

「無礼な!この馬車は、王妃様がおいでになる馬車ぞ。」
「例え王妃様であっても、ここを誰も通すなとのお達しです。お通しするわけにはまいりません!」

門番と御者が揉めているようだ。
私は窓を少し開け、
「セバス」
と従者を呼びつけた。

「どうした?」
「はっ。門番が門を開けませぬ。先触れはしていたのですが…」
「そう。なら何か行き違いがあったのかもしれぬ。王に急ぎ取り次ぎを。」

そう指示を出して、座席に身体を沈めた。

(シャルルも私に会いたくて待っているでしょうに。)

私は侍女に鏡を取り出させ、化粧を整えた。

中々使いは帰ってこない。
待つこと3時間。
いい加減限界がきた時に、やっと使いがシャルルの書簡を持ってきた。

「…書簡?」
「はっ、必ず読むように。と」

私は怪訝に思いながら、紐解いてその書簡を開く。
「なっ…」
目に飛び込んできた文字を何度も確かめる。

はらり…

手から書簡が落ちる。

そこには
『マリー・ダンジューの立ち入りを禁じる。永遠に。』

見間違うはずもないシャルルの文字で書かれていた…
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