ジャンヌ・ダルクがいなくなった後

碧流

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絶望③

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しばらく呆然としていたが、はっと正気に戻った。
シャルルは、まだ混乱して正気でないのだろう。
直接本人と話をせねば。と、窓を開け侍従に門を開けるよう命じようとした時、慌て侍従が駆けよってきた。

「お妃様、今日はいったん引きましょう。門に兵が弓をつがえて控えております。門に近づけば躊躇なく撃てとの命令だそうです。」

侍従は顔を真っ青にして告げてきた。

「…兵…?撃つ…?」

まるで敵に対する扱いではないか。
それでも門を開けよと命じようとした時、それがわかってたかのように、弓が飛んできた。

「ひいっ」
情けない声を出して侍従が腰を抜かした。
侍女たちもガタガタ震えている。

「…シノンに帰る…」

私は命じ、ふと見舞いに摘んだ薔薇を見た。
さっきまできれいに咲いていたはずの薔薇は、真っ黒になって枯れていた。

「………」
無言で目を見張る。
その視線に気づいた侍女も薔薇を見、そして私を見た。

「ひぃぃぃぃーお許しを…」
侍女は白目をむいて気絶した。

突然のことに驚き、いつも私の側に侍るマーガレット夫人を見やる。

マーガレット夫人はガタガタと震え、十字架を握り締めている。

私は扇を握る手の力が弱まった気がして、手に視線を移した。

「…っ」

慌てて、窓のカーテンを開けて窓に映る自分の姿を見る。

「きゃああああああああ」

叫び声が出た。

そこには薔薇のように黒く朽ち果て、枯れ木のような手をかざす1人の老婆が映っていた。
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