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「あ、ここだよ」
「お待たせ」

カフェについて、敦を見つけた。席に着いて、アイスラテを頼む。

「何かあったの?」
「晴人はさ、ハジメさんが女の子と体の関係をもっていること知ってる?」
「…うん、一応ね」

敦は俺に写真を見せてきた。その写真には肇と女の子がキスをしている写真だった。
軽いキスではなく、濃厚なキスだ。

「これって…」
「晴人には悲しい思いをしてほしくないんだ」
「で、でもホストの人は皆んなこういうことしないといけないんでしょ?」

肇はよく、こう言ってくれた。俺はそれで安心していたところもあった。

「そんなわけないでしょ。確かにホストの人はほとんどやってるかもだけど強制はされてないし、少なくとも俺はやってない」
「そんな…」

じゃあ肇はどうして女の子とそういうことをしているんだろう。
やめよう、考えたくない。別にそういうことをしていても肇は俺を愛してくれるし、俺も肇を愛している。

「ハジメさんとは別れた方がいい」
「嫌!もうほっといて、俺は別に気にしてないからさ」
「…そんな顔で言われても説得力あるわけないでしょ」

俺は今どんな顔をしているのだろうか?

「晴人、俺はそんなことしないよ」
「え?」
「俺は晴人が嫌だと思ったら絶対に晴人を優先する」

肇だって俺のことを優先してくれる。敦は肇のことを理解してないんだ。

「敦」
「っ」
「ありがとう、でも本当に大丈夫!肇のことは俺も理解しているつもりだしね!それじゃあ、もうそろそろ行くね」
「は、晴人…!」

俺は机に千円を置いて、カフェを去った。特に予定がないからこのまま帰ることにした。

「ただいま」

ガチャとドアを開ける。すると、そこにはハイヒールがあった。
そして、奥からは女の人が喘ぐ声が聞こえる。

「は、はるちゃん!」
「…肇?」
「え?誰?」
「あ、ごめん。もう帰って」
「はぁ?なんでよー」

出てきたのは裸の女の人。肇は焦ったように俺の元へ駆け寄る。

「はるちゃん、怒ってる?ごめんね」
「嫌…」

俺は目からポロポロと涙が溢れてくる。肇は汚い手で俺を触ろうとしてくる。
俺は手を跳ね除けた。

「早く服着て…」
「あ、ごめんね」

俺は玄関から動けずにうずくまった。

「ハジメ~、じゃあね」
「おい、やめろって」

チュッというリップ音が聞こえた。俺は聞きたくなくて耳を塞ぐ。

「ちょっと、邪魔」
「…」

俺は立ち上がって部屋に足を踏み入れた。

「はるちゃん…ごめんね、本当にごめん」
「肇なんて大嫌い…」
「ごめん…」
「嫌い、大嫌い…」

俺は涙が止まらない。ぎゅっと抱きしめられてさらに涙が出てくる。
肇は俺の顎をクイっとあげて、キスをしてきた。

「嫌…」
「はるちゃん」
「んぅ」

俺はどうすることもできなくて、そのままキスを受け入れてしまった。

敦にあんなこと言ったけど、やっぱり受け入れられないかもしれない。
こうして、実際に目にすると嫌だという気持ちで頭が埋まってしまう。

「はるちゃん、ごめんね。愛してるからね」
「…ん」

早くホストなんてやめてくれないかな。






それから俺は1週間、肇に素っ気ない態度を取り続けた。


「はるちゃん、おはよう」
「触んないで」
「本当にごめんね、ほら機嫌直して」
「…」

ぎゅっと抱きしめられても、キスをされても、優しく甘い言葉を囁かれても…俺は心を鬼にして冷たい態度を取り続けた。

そうしたら、ついに肇が怒った。

「はるちゃん…俺だって、そんなに冷たくされたら悲しいよ」
「冷たくさせたのは肇でしょ…」
「そうかもね、でもしょうがないんだよ?ホストで稼ぐにはこうするしかないんだよ」
「…じゃあホストやめて」
「え?」

俺は肇に問いかけた。きっと、面倒臭いと思われている。これじゃあ、ホストのお客さんと一緒だ。

「やめてくれないの?」
「…いくらはるちゃんのお願いでも、無理かな」

やっぱり、そうだよね。俺なんか優先してくれない。
敦みたいな言葉を少しだけ期待していた。

「俺もごめんね…もういいよ」

肇の唇にチュッとキスをする。もう一緒にいられるだけでいいのかもしれない。
受け入れられないのは最初だけなんだ。

「はるちゃん、ありがとう」
「ううん、全然」

肇は俺の頬を撫でた。それが少しくすぐったいけど、俺は嬉しかった。

「肇、大好き」
「俺もだよ」

敦だったらきっと、すぐにやめてくれたのかな?
そんな思いがよぎってしまう。

「はるちゃん、仲直りの記念にプリン食べよう!」
「うん」

それでも、俺は肇が大好きなのだった。






「あー!可愛い」
「おい、飲み過ぎだぞ」
「いやさ、もう俺の恋人が可愛すぎるんだよ!」
「はいはい」

浅見肇は同僚のホストと飲みに来ていた。

「最初、すごい泣いちゃってさぁ…1週間くらい口を聞いてくれなかったんだよね」
「そりゃそうだろうな」
「そんで、俺にホストやめてほしいって言ってさ!もう、それが可愛すぎるんだよ!」
「でもお前、客にそういうこと言われたら萎えるって言ってたじゃん」

同僚は彼の恋人に同情をした。彼の話を聞いている限り、恋人はホストであることを知っていて仕方ないと我慢しているのだろう。

「客に言われたら萎えるけど、俺の恋人は違うから!好きな人にそんなこと言われたら悶絶するに決まってんだろ!」
「で?やめてねぇじゃん」
「断ったらすごい可愛い顔してくれるかなって思って断った」

最悪な男だ、本当に。

「頑張れよ…」

同僚はそっと、彼の恋人にエールを送ったのだった。



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