『ゼファー・コード』

kkk

文字の大きさ
2 / 13

第1話 「目覚める鋼」

しおりを挟む
 重力が、身体を押しつぶしていた。

 アキラ・セイランは、意識の奥でうなされたような感覚のまま、目を覚ました。薄暗いコックピット内、周囲には無数のホログラムインターフェースが浮かんでいる。両手両足は拘束されておらず、だが、全身の筋肉が異様なほど重い。

「生体リンク、同期率73パーセント……異常なし。心拍安定。脳波、臨戦状態」

 無機質な女性の声が耳元に響く。

「ここは……」

 口を開くと、のどの奥が乾いていて痛んだ。記憶が断片的に戻ってくる。ミユの死、都市の崩壊、そして──黒い巨人。

 そのとき、機体が激しく揺れた。

 画面に映し出されたのは、真っ赤に染まった戦場。瓦礫と炎の海の中を、複数のヴェルクスが蠢いていた。その姿はまるで昆虫と兵器を混ぜ合わせたかのような異形──脚部は鋭利なブレード、背からは触手のようなアンカーを伸ばしている。

「敵機接近。戦闘モードへ移行します」

「……戦闘?」

 アキラは反射的に両手を前へ動かす。すると、コックピットに連動するかのように、巨体が応じた。目の前に表示されるのは、機体制御情報──

 機体名:TITAN FRAME-03《ゼファー》

 ──それが自分の乗っている兵器の名だった。

「俺が……こいつを……?」

 混乱する思考。しかし次の瞬間、ヴェルクスの一体が地面から跳躍し、ゼファーの胸部へ鋭い突撃を仕掛けてきた。

「警告、装甲損傷率12パーセント。防御推奨」

「やるしか……ないのか!」

 アキラは右手を握る。機体が即座に反応し、右腕部のパルスブレードが展開された。まるで自分の腕が武器に変わったような感覚──だがそれは、恐怖を越えて彼の本能を研ぎ澄ませていく。

 迫るヴェルクスに対し、ゼファーが前進する。ブレードが閃き、敵の頭部を断ち割った。黒い液体が宙を舞い、甲高い悲鳴が戦場を切り裂く。

「命中確認。敵機撃破」

 アキラは息を飲んだ。

 殺した──確かに、殺した。

 その感覚が、何かを変えていく。自分が生き延びるために。ミユの仇を討つために。

 次々と襲い来るヴェルクス。ゼファーは地を蹴り、滑るように間合いを取る。左腕からはビームライフルが射出され、距離を取った敵を狙撃。的確な制御が、少年の直感と呼応するように応答していた。

「適合率上昇──83パーセント……この少年……制御が速すぎる」

 遠隔オペレーションルームから、年配の男の声が漏れた。

 画面に映る、TITAN FRAME開発主任──Dr.ヴァレン・カイザーは、モニター越しにアキラの戦いを見つめていた。その目は、狂気と期待が入り混じった光を宿している。

「ついに見つけた……“彼岸”に到達できるパイロットを……」

 地上では、ゼファーが最後の敵を切り裂き、煙の中に立ち尽くしていた。

 その背には、焦土と化したかつての都市。
 その胸には、冷たい復讐心。
 そして、少年はまだ知らなかった──自らが乗るこの機体が、人類の運命を大きく変えていく存在になることを。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

【新作】1分で読める! SFショートショート

Grisly
ファンタジー
❤️⭐️感想お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐️忘れずに!コメントお待ちしております。

処理中です...