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第1話 「目覚める鋼」
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重力が、身体を押しつぶしていた。
アキラ・セイランは、意識の奥でうなされたような感覚のまま、目を覚ました。薄暗いコックピット内、周囲には無数のホログラムインターフェースが浮かんでいる。両手両足は拘束されておらず、だが、全身の筋肉が異様なほど重い。
「生体リンク、同期率73パーセント……異常なし。心拍安定。脳波、臨戦状態」
無機質な女性の声が耳元に響く。
「ここは……」
口を開くと、のどの奥が乾いていて痛んだ。記憶が断片的に戻ってくる。ミユの死、都市の崩壊、そして──黒い巨人。
そのとき、機体が激しく揺れた。
画面に映し出されたのは、真っ赤に染まった戦場。瓦礫と炎の海の中を、複数のヴェルクスが蠢いていた。その姿はまるで昆虫と兵器を混ぜ合わせたかのような異形──脚部は鋭利なブレード、背からは触手のようなアンカーを伸ばしている。
「敵機接近。戦闘モードへ移行します」
「……戦闘?」
アキラは反射的に両手を前へ動かす。すると、コックピットに連動するかのように、巨体が応じた。目の前に表示されるのは、機体制御情報──
機体名:TITAN FRAME-03《ゼファー》
──それが自分の乗っている兵器の名だった。
「俺が……こいつを……?」
混乱する思考。しかし次の瞬間、ヴェルクスの一体が地面から跳躍し、ゼファーの胸部へ鋭い突撃を仕掛けてきた。
「警告、装甲損傷率12パーセント。防御推奨」
「やるしか……ないのか!」
アキラは右手を握る。機体が即座に反応し、右腕部のパルスブレードが展開された。まるで自分の腕が武器に変わったような感覚──だがそれは、恐怖を越えて彼の本能を研ぎ澄ませていく。
迫るヴェルクスに対し、ゼファーが前進する。ブレードが閃き、敵の頭部を断ち割った。黒い液体が宙を舞い、甲高い悲鳴が戦場を切り裂く。
「命中確認。敵機撃破」
アキラは息を飲んだ。
殺した──確かに、殺した。
その感覚が、何かを変えていく。自分が生き延びるために。ミユの仇を討つために。
次々と襲い来るヴェルクス。ゼファーは地を蹴り、滑るように間合いを取る。左腕からはビームライフルが射出され、距離を取った敵を狙撃。的確な制御が、少年の直感と呼応するように応答していた。
「適合率上昇──83パーセント……この少年……制御が速すぎる」
遠隔オペレーションルームから、年配の男の声が漏れた。
画面に映る、TITAN FRAME開発主任──Dr.ヴァレン・カイザーは、モニター越しにアキラの戦いを見つめていた。その目は、狂気と期待が入り混じった光を宿している。
「ついに見つけた……“彼岸”に到達できるパイロットを……」
地上では、ゼファーが最後の敵を切り裂き、煙の中に立ち尽くしていた。
その背には、焦土と化したかつての都市。
その胸には、冷たい復讐心。
そして、少年はまだ知らなかった──自らが乗るこの機体が、人類の運命を大きく変えていく存在になることを。
アキラ・セイランは、意識の奥でうなされたような感覚のまま、目を覚ました。薄暗いコックピット内、周囲には無数のホログラムインターフェースが浮かんでいる。両手両足は拘束されておらず、だが、全身の筋肉が異様なほど重い。
「生体リンク、同期率73パーセント……異常なし。心拍安定。脳波、臨戦状態」
無機質な女性の声が耳元に響く。
「ここは……」
口を開くと、のどの奥が乾いていて痛んだ。記憶が断片的に戻ってくる。ミユの死、都市の崩壊、そして──黒い巨人。
そのとき、機体が激しく揺れた。
画面に映し出されたのは、真っ赤に染まった戦場。瓦礫と炎の海の中を、複数のヴェルクスが蠢いていた。その姿はまるで昆虫と兵器を混ぜ合わせたかのような異形──脚部は鋭利なブレード、背からは触手のようなアンカーを伸ばしている。
「敵機接近。戦闘モードへ移行します」
「……戦闘?」
アキラは反射的に両手を前へ動かす。すると、コックピットに連動するかのように、巨体が応じた。目の前に表示されるのは、機体制御情報──
機体名:TITAN FRAME-03《ゼファー》
──それが自分の乗っている兵器の名だった。
「俺が……こいつを……?」
混乱する思考。しかし次の瞬間、ヴェルクスの一体が地面から跳躍し、ゼファーの胸部へ鋭い突撃を仕掛けてきた。
「警告、装甲損傷率12パーセント。防御推奨」
「やるしか……ないのか!」
アキラは右手を握る。機体が即座に反応し、右腕部のパルスブレードが展開された。まるで自分の腕が武器に変わったような感覚──だがそれは、恐怖を越えて彼の本能を研ぎ澄ませていく。
迫るヴェルクスに対し、ゼファーが前進する。ブレードが閃き、敵の頭部を断ち割った。黒い液体が宙を舞い、甲高い悲鳴が戦場を切り裂く。
「命中確認。敵機撃破」
アキラは息を飲んだ。
殺した──確かに、殺した。
その感覚が、何かを変えていく。自分が生き延びるために。ミユの仇を討つために。
次々と襲い来るヴェルクス。ゼファーは地を蹴り、滑るように間合いを取る。左腕からはビームライフルが射出され、距離を取った敵を狙撃。的確な制御が、少年の直感と呼応するように応答していた。
「適合率上昇──83パーセント……この少年……制御が速すぎる」
遠隔オペレーションルームから、年配の男の声が漏れた。
画面に映る、TITAN FRAME開発主任──Dr.ヴァレン・カイザーは、モニター越しにアキラの戦いを見つめていた。その目は、狂気と期待が入り混じった光を宿している。
「ついに見つけた……“彼岸”に到達できるパイロットを……」
地上では、ゼファーが最後の敵を切り裂き、煙の中に立ち尽くしていた。
その背には、焦土と化したかつての都市。
その胸には、冷たい復讐心。
そして、少年はまだ知らなかった──自らが乗るこの機体が、人類の運命を大きく変えていく存在になることを。
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