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Echo71:沈黙の王車
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ルネと共に、白い馬車へと乗り込む。
車内は向かい合わせの四人掛けで、対面には母ミーシャともう一人の婦人が座った。
見覚えのある顔に、あの日の言葉が自然と脳裏を過った。
以前、会食の席で会った客人……ルネとの婚約を「考えさせて欲しい」と訴えたとき、親を悲しませるなんて、あなたらしくないと咎めてきた相手だった。
「ああ……お二人とも、本当に素敵ですわね」
婦人は胸に手を当て、目元を潤ませながら言った。
「一時はどうなることかと思っておりましたのよ。でも、こうして無事に婚約まで進まれて……本当に嬉しいことですわ」
「ええ。おかげさまで、もう正式に契りも交わしましたの」
ミーシャは婦人の言葉に満足げに微笑み、柔らかな声で応じた。
婦人は息を呑み、さらに目を細めた。
「まあ……それは、それは。なんてお幸せそうなこと」
朗らかな笑い声が馬車の中に広がる。
だがその途端、隣に座るルネの肩がわずかに震えるのを感じた。
アリセルの喉の奥にも、言葉にできない痛みがひっかかる。
契りという響きが、傷の縁をなぞるように胸に触れた。ルネもまた、硬い表情で唇を引き結んでいる。
そんな二人の様子に気づかぬまま、婦人は嬉しそうに声を弾ませた。
「こんなにお似合いのお二人ですもの。きっとすぐに、可愛らしいお子が生まれますわ。王家の血が再び受け継がれるなんて、なんて喜ばしいことでしょう」
婦人の悪意のない言葉一つ一つがあの日を想起させる。
自分が望んでいない子を、愛せないのではないかとの思いが胸の底で暴れ、抑えきれないほどの拒絶となって全身を駆けめぐった事を。衝動的に身体の内を掻き出してしまった事を。
蹄の音が遠くで鳴り、車輪が静かに動き出す。
それに合わせるように、頭の奥で何かが遠のくような感覚が走った。
血が引いていく。視界の端が暗く染まり、音が霞んでいく。
息を吸おうとしても空気が肺に届かず、手の感覚さえ薄れていった。額に冷たい汗が伝い、アリセルは思わず膝に顔を伏せた。
「アリセル?」
ルネの声が近くで響く。
ミーシャと婦人も異変に気づいたらしく、二人の視線がこちらへ向くのが分かった。
「まぁ、顔色が悪いわね。疲れが出たのかしら……」
「無理をしないで。……少し横になって」
母と婦人の声が遠くで聞こえる。
馬車の揺れが途切れなく続く中、ルネはアリセルの身体を片腕で支え、静かに自分の方へ引き寄せた。彼女の頭が滑るように傾いたのを見て、そのまま受け止めるように膝の上へと寝かせる。
「ルネ様……。なんとお優しいことでしょう。アリセルは本当に幸せね」
思わず言葉を漏らしたミーシャに、婦人もまた、慈しむような微笑みで頷いた。
馬車の中に、しばらく静寂が落ちた。
車輪の音と、外から吹き込む風のざわめきだけが耳に残る。
ミーシャは身を乗り出して手を伸ばし、娘の額を撫でた。
「アリセル……」
その呼びかけに、アリセルの瞼がかすかに動く。
目を開けても、光が滲んでよく見えなかった。ただ、母の声だけがはっきりと耳に届く。
「もう、何も心配しなくていいのよ、とっておきの素晴らしいお話を聞かせてあげる……。エリック・ジルベールが死んだ今、ルネ様はこれからこの国の王となられ、あなたはその傍らに立つ王妃となるの。民があなたを仰ぎ見て祝福し、黄金の冠と絹の衣に包まれながら、誰よりも美しく、誰よりも気高く、すべての人の上に立つのよ」
母の声を聞きながら、アリセルは、まるで突然どこか別の場所に放り出されたような感覚にとらわれた。
幕の上がる音も知らぬまま、いきなり舞台に立たされたようだ。
列をなして並ぶ護衛隊、衣を翻す女、馬の嘶き。
優しい風を受け、小鳥の鳴き交わす草原を駆け回っていた日々から、ほんの一瞬で切り離されたようだった。
かつて野花を摘んでいた指先が、今は見知らぬ絹の裳裾を握っている。
……これは私のための舞台なのだろうか。
母の声がまだ響いている。
それは祝福の言葉に似ていたが、どこか逃れられない脚本のようでもあった。
アリセルが白くなった唇を戦慄かせると、ルネやミーシャ、婦人が一斉に息を詰め、見守るように背を屈めた。
「……私は、王妃になどならないわ」
その言葉に場の空気がわずかに揺れた。
「私はそんなこと、望んだ事なんて一度もない……。今までみたいに朝になると、鳥の声がして、霧が丘を包んで……それを見ながらパンを食べたり……。風が庭を通り抜けて……。そんな日々の中で……花を摘んだり、誰かにおはようって言われたり、それが何より幸せなの……」
「アリセル、そんな事は王妃になってもできるわ。お城の庭で、みんなで素晴らしいお茶会を開きましょう」
「そこに、ユーグはいる……?」
無意識にその名が唇から零れていた。
考えるよりも先に声になっていて、自分でもどうして言ったのか分からなかった。
彼の名を出してしまったことを少しだけ後悔しながらも、それでももう、以前のように言葉を飲み込むことはできなかった。
ミーシャはそっと視線を落とす。
「ユーグ君のことは気の毒だったと思うわ。けれどいくら嘆いてもどうしようもないのよ、あなたはこれから生きる人のために未来を見なければならない。罪のないルネ様があの塔でどれほど苦しんでこられたか、あなたも見てきたでしょう、それをこのままにしておくのが正しいことだと思う?」
その時、沈黙を貫いていたルネが口を開いた。
アリセルの頭にそっと片手を置いたまま、ミーシャと婦人を真っすぐにみつめる。
「一つ、教えてください。……僕は、王宮に戻ることを許されているのですか?」
思いがけない問いに、ミーシャと婦人は顔を見合わせた。そして、どちらともなく微笑をつくる。
「許されるもなにも……ルネ様、あなたは王でいらっしゃいます。誰の許しも必要などございません。王が戻るのに、誰がそれを咎めるというのです?」
ミーシャの声は柔らかく、それでいて確信に満ちていた。
「あなたは生まれながらにこの国の頂に立つお方。……あの塔に閉じ込められたのは、あなたの過ちではなく、時代の誤りにすぎませんわ」
ルネは目を伏せ、わずかに息を吐いた。
膝の上のアリセルの髪を撫でながら、静かに問いを重ねる。
「では……統領のエリックは、僕の処遇について何と言っていたのですか?」
ミーシャの眉がわずかに動いた。婦人が慌てて言葉を継ぐ。
「そのお方はもう亡くなられました。エリック・ジルベールはもう、この世にいないのです」
「……そうですか」
ルネは目を細めた。短い沈黙ののち、彼は低く言葉を継いだ。
「それなら、次に頂に立つ者を決めるのは……人民の選挙なのではありませんか?」
ミーシャは苦笑に似た息を漏らす。
「ルネ様、それは違います。選挙で選ばれる者は一時の統領にすぎません。けれど王は生まれながらにして王なのです。血と名が、その証なのです」
婦人も頷きながら言葉を添える。
「民が望むのは一瞬の平穏ではなく、永く続く安らぎです。選ばれた者ではなく、生まれ持った者こそが人々の拠り所となるのです。ルネ様、あなたの存在はその象徴なのです」
「選挙は風に流されます。民は今日の飢えを癒す者を称え、明日の失策で石を投げる。けれど、王は違うのです。血が続く限り、その名が国をつなぎ、人々の心を結ぶ。……あなたが戻られることで、この国はようやく息を吹き返すのです」
ミーシャと婦人が交互に言い募る。
その様子を見つめていたルネだが、やがて顔を伏せた。
「では、なぜ僕はあの塔の中で、あんなふうに扱われてきたのですか。前の看守は言いました。王のせいで国は干上がり、畑は枯れ、子どもたちは母の腕の中で次々と息を引き取ったと。道には倒れた人が並び、誰も埋める力さえ残っていなかったと。だから僕は、生まれながらに背負った罪を、償わなければならないのだと……」
馬車の車輪がぬかるみを越えるたび、ぎし、と鈍い音が響いた。
薄暗い車内には、湿った土の匂いと、沈黙が満ちる。
静寂の中で、ルネはゆっくりと視線を上げた。
カーテンの隙間から差し込む光が、頬をかすめる。
「……僕の罪は一体、いつ、誰によって許されたのですか?」
その声は馬車の狭い空間に静かに滲み、木の壁を伝って消えていった。返るのは、遠くで続く蹄の響きと、風が帷を揺らす音だけだった。
車内は向かい合わせの四人掛けで、対面には母ミーシャともう一人の婦人が座った。
見覚えのある顔に、あの日の言葉が自然と脳裏を過った。
以前、会食の席で会った客人……ルネとの婚約を「考えさせて欲しい」と訴えたとき、親を悲しませるなんて、あなたらしくないと咎めてきた相手だった。
「ああ……お二人とも、本当に素敵ですわね」
婦人は胸に手を当て、目元を潤ませながら言った。
「一時はどうなることかと思っておりましたのよ。でも、こうして無事に婚約まで進まれて……本当に嬉しいことですわ」
「ええ。おかげさまで、もう正式に契りも交わしましたの」
ミーシャは婦人の言葉に満足げに微笑み、柔らかな声で応じた。
婦人は息を呑み、さらに目を細めた。
「まあ……それは、それは。なんてお幸せそうなこと」
朗らかな笑い声が馬車の中に広がる。
だがその途端、隣に座るルネの肩がわずかに震えるのを感じた。
アリセルの喉の奥にも、言葉にできない痛みがひっかかる。
契りという響きが、傷の縁をなぞるように胸に触れた。ルネもまた、硬い表情で唇を引き結んでいる。
そんな二人の様子に気づかぬまま、婦人は嬉しそうに声を弾ませた。
「こんなにお似合いのお二人ですもの。きっとすぐに、可愛らしいお子が生まれますわ。王家の血が再び受け継がれるなんて、なんて喜ばしいことでしょう」
婦人の悪意のない言葉一つ一つがあの日を想起させる。
自分が望んでいない子を、愛せないのではないかとの思いが胸の底で暴れ、抑えきれないほどの拒絶となって全身を駆けめぐった事を。衝動的に身体の内を掻き出してしまった事を。
蹄の音が遠くで鳴り、車輪が静かに動き出す。
それに合わせるように、頭の奥で何かが遠のくような感覚が走った。
血が引いていく。視界の端が暗く染まり、音が霞んでいく。
息を吸おうとしても空気が肺に届かず、手の感覚さえ薄れていった。額に冷たい汗が伝い、アリセルは思わず膝に顔を伏せた。
「アリセル?」
ルネの声が近くで響く。
ミーシャと婦人も異変に気づいたらしく、二人の視線がこちらへ向くのが分かった。
「まぁ、顔色が悪いわね。疲れが出たのかしら……」
「無理をしないで。……少し横になって」
母と婦人の声が遠くで聞こえる。
馬車の揺れが途切れなく続く中、ルネはアリセルの身体を片腕で支え、静かに自分の方へ引き寄せた。彼女の頭が滑るように傾いたのを見て、そのまま受け止めるように膝の上へと寝かせる。
「ルネ様……。なんとお優しいことでしょう。アリセルは本当に幸せね」
思わず言葉を漏らしたミーシャに、婦人もまた、慈しむような微笑みで頷いた。
馬車の中に、しばらく静寂が落ちた。
車輪の音と、外から吹き込む風のざわめきだけが耳に残る。
ミーシャは身を乗り出して手を伸ばし、娘の額を撫でた。
「アリセル……」
その呼びかけに、アリセルの瞼がかすかに動く。
目を開けても、光が滲んでよく見えなかった。ただ、母の声だけがはっきりと耳に届く。
「もう、何も心配しなくていいのよ、とっておきの素晴らしいお話を聞かせてあげる……。エリック・ジルベールが死んだ今、ルネ様はこれからこの国の王となられ、あなたはその傍らに立つ王妃となるの。民があなたを仰ぎ見て祝福し、黄金の冠と絹の衣に包まれながら、誰よりも美しく、誰よりも気高く、すべての人の上に立つのよ」
母の声を聞きながら、アリセルは、まるで突然どこか別の場所に放り出されたような感覚にとらわれた。
幕の上がる音も知らぬまま、いきなり舞台に立たされたようだ。
列をなして並ぶ護衛隊、衣を翻す女、馬の嘶き。
優しい風を受け、小鳥の鳴き交わす草原を駆け回っていた日々から、ほんの一瞬で切り離されたようだった。
かつて野花を摘んでいた指先が、今は見知らぬ絹の裳裾を握っている。
……これは私のための舞台なのだろうか。
母の声がまだ響いている。
それは祝福の言葉に似ていたが、どこか逃れられない脚本のようでもあった。
アリセルが白くなった唇を戦慄かせると、ルネやミーシャ、婦人が一斉に息を詰め、見守るように背を屈めた。
「……私は、王妃になどならないわ」
その言葉に場の空気がわずかに揺れた。
「私はそんなこと、望んだ事なんて一度もない……。今までみたいに朝になると、鳥の声がして、霧が丘を包んで……それを見ながらパンを食べたり……。風が庭を通り抜けて……。そんな日々の中で……花を摘んだり、誰かにおはようって言われたり、それが何より幸せなの……」
「アリセル、そんな事は王妃になってもできるわ。お城の庭で、みんなで素晴らしいお茶会を開きましょう」
「そこに、ユーグはいる……?」
無意識にその名が唇から零れていた。
考えるよりも先に声になっていて、自分でもどうして言ったのか分からなかった。
彼の名を出してしまったことを少しだけ後悔しながらも、それでももう、以前のように言葉を飲み込むことはできなかった。
ミーシャはそっと視線を落とす。
「ユーグ君のことは気の毒だったと思うわ。けれどいくら嘆いてもどうしようもないのよ、あなたはこれから生きる人のために未来を見なければならない。罪のないルネ様があの塔でどれほど苦しんでこられたか、あなたも見てきたでしょう、それをこのままにしておくのが正しいことだと思う?」
その時、沈黙を貫いていたルネが口を開いた。
アリセルの頭にそっと片手を置いたまま、ミーシャと婦人を真っすぐにみつめる。
「一つ、教えてください。……僕は、王宮に戻ることを許されているのですか?」
思いがけない問いに、ミーシャと婦人は顔を見合わせた。そして、どちらともなく微笑をつくる。
「許されるもなにも……ルネ様、あなたは王でいらっしゃいます。誰の許しも必要などございません。王が戻るのに、誰がそれを咎めるというのです?」
ミーシャの声は柔らかく、それでいて確信に満ちていた。
「あなたは生まれながらにこの国の頂に立つお方。……あの塔に閉じ込められたのは、あなたの過ちではなく、時代の誤りにすぎませんわ」
ルネは目を伏せ、わずかに息を吐いた。
膝の上のアリセルの髪を撫でながら、静かに問いを重ねる。
「では……統領のエリックは、僕の処遇について何と言っていたのですか?」
ミーシャの眉がわずかに動いた。婦人が慌てて言葉を継ぐ。
「そのお方はもう亡くなられました。エリック・ジルベールはもう、この世にいないのです」
「……そうですか」
ルネは目を細めた。短い沈黙ののち、彼は低く言葉を継いだ。
「それなら、次に頂に立つ者を決めるのは……人民の選挙なのではありませんか?」
ミーシャは苦笑に似た息を漏らす。
「ルネ様、それは違います。選挙で選ばれる者は一時の統領にすぎません。けれど王は生まれながらにして王なのです。血と名が、その証なのです」
婦人も頷きながら言葉を添える。
「民が望むのは一瞬の平穏ではなく、永く続く安らぎです。選ばれた者ではなく、生まれ持った者こそが人々の拠り所となるのです。ルネ様、あなたの存在はその象徴なのです」
「選挙は風に流されます。民は今日の飢えを癒す者を称え、明日の失策で石を投げる。けれど、王は違うのです。血が続く限り、その名が国をつなぎ、人々の心を結ぶ。……あなたが戻られることで、この国はようやく息を吹き返すのです」
ミーシャと婦人が交互に言い募る。
その様子を見つめていたルネだが、やがて顔を伏せた。
「では、なぜ僕はあの塔の中で、あんなふうに扱われてきたのですか。前の看守は言いました。王のせいで国は干上がり、畑は枯れ、子どもたちは母の腕の中で次々と息を引き取ったと。道には倒れた人が並び、誰も埋める力さえ残っていなかったと。だから僕は、生まれながらに背負った罪を、償わなければならないのだと……」
馬車の車輪がぬかるみを越えるたび、ぎし、と鈍い音が響いた。
薄暗い車内には、湿った土の匂いと、沈黙が満ちる。
静寂の中で、ルネはゆっくりと視線を上げた。
カーテンの隙間から差し込む光が、頬をかすめる。
「……僕の罪は一体、いつ、誰によって許されたのですか?」
その声は馬車の狭い空間に静かに滲み、木の壁を伝って消えていった。返るのは、遠くで続く蹄の響きと、風が帷を揺らす音だけだった。
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